第3話 アルフレッド

 気が付くと森の中で木にもたれかかって座っていた。先ほどまでの記憶が蘇ってくる。それと同時にこの世界の一般常識だろうか、いろいろな事柄が頭の中に入ってきた。


 前を向いてみると木と木の間から草原と街道が見える。ここは森に入ってすぐの場所らしい、比較的安全と言っていたから魔物もあまり出ないのであろう。だが用心することに越したことはないので、傍に置いてあるリュックを背負い草原の方に歩いて行った。


 森を出ると眩しい光が降り注いでくる。見渡す限りの草原だ。こんな綺麗な景色を見るのは何時以来だろうか……


 まだ日が昇ったばかりの時間なのか正面に朝日が見える。朝日の方角が東だとすると左が北で右が南か……北の方角に人工物が確認できた。たぶん城壁と城門だろう。


 すぐに移動しても良かったのだが、持ち物の確認などがしたかったので周りの様子を伺う。特に何かがいる気配もなく、ただ静かに風が吹いているだけだ。時折森の中から鳥の鳴き声のようなものが聞こえる。


『スキル【気配察知】を取得しました。』


 おい、嘘だろ?いくら何でも早すぎねぇか?こんなに簡単にスキルが取得できるとなると早晩スキルだらけになるんじゃないか?人にバレたらかなりヤバい気もするけど……


 そこで気がついた。先ほど頭の中に入ってきた一般常識から、この世界ではスキルが存在するがそれを把握している人は少ない。【人物鑑定】で見てもらうしかないからだ。そしてその【人物鑑定】を使える人はかなり少数である。さらにレベル、ステータスに至っては把握する手段がない。


 それに魔法については、使えるようになると何となくその感覚を自覚して使用するため、正式な呪文なども存在しない。みんな適当に使ってるようだ。


 あれ?もしかして俺ってかなり異端児じゃね?下手するとすぐに貴族とかに捕まって詰むんじゃね?これは早くに何とかしとかないとヤバい案件だな……えっとステータスを隠す、隠す、隠す……白い部屋で見たステータスが見えなくなるように想像した。


『スキル【隠蔽】を取得しました。』


 よし!来た!これは【スキルの種】に感謝だな。そこで自分を【解析】してみる。


名前:アルフレッド(15)

種族:ヒューマン(男)

ジョブ:剣士

所属:なし

称号:渡り人

レベル:10

ステータス

 STR:180

 VIT:160

 INT:320

 DEX:190

 AGI:150

 LUK:100

魔法:

 なし

スキル:

 【共通言語】【並列思考】【算術】【解析】【隠蔽】【気配察知】【魔力操作】【剣術】【体術】

固有スキル:

 【アイテムボックス】【経験値3倍】【スキルの種】

装備:

 ショートソード・小盾・革鎧・革のガントレット・革のブーツ


 名前は〔アルフレッド〕にしたゲームでよく使用していた名前だ。慣れているので呼ばれても違和感なく返事が出来る。〔アル〕が愛称だ。


 えっと、【解析】は【鑑定】の上位互換ってことだから、【人物鑑定】は人物専用の下位互換スキルになるはずだな。そうすると【解析】を人物鑑定として使えばどんな風に見えるか試せるか?【解析(人物鑑定)】


名前:アルフレッド(15)

種族:ヒューマン(男)

ジョブ:剣士

所属:なし

魔法:

 なし

スキル:

 【共通言語】【並列思考】【算術】【解析】【隠蔽】【気配察知】【魔力操作】【剣術】【体術】

固有スキル:

 【アイテムボックス】【経験値3倍】【スキルの種】


 おし、出来た。それならこれでスキル部分を【隠蔽】すればよいか?固有スキルも隠蔽しないとダメだな……スキルと固有スキルを【隠蔽】する。よし!【解析(人物鑑定)】


名前:アルフレッド(15)

種族:ヒューマン(男)

ジョブ:剣士

所属:なし

魔法:

 なし

スキル:

 【共通言語】【気配察知】【剣術】【体術】


 いい感じになったぞ、これくらいならそこまで不自然ではないだろう。一般常識からすると、スキルはだいたい2~5つくらいらしいからな…


「ふう、これでステータス関連は問題ないだろう。」


 次は持ち物だな、リュックを開けて中を確認してみる。水筒に携帯食料、外套と毛布それとナイフだな、麻袋が数枚とあとはカンテラ、破れた小袋?なんだこれ?それにこれは手紙か?


 折りたたまれた手紙を開けて読んでみた。


『アルフレッド君へ


 これを読んでるってことは無事に〔ローグアース〕へ着いたのだろう。まず〔ローグアース〕へ転生してくれたことを感謝する。


 リュックの中身は大したものは入っていないが活用してくれると嬉しい。破れた小袋は財布だ上手く使ってくれ。


 アルフレッド君なら冒険者になるのが一番手っ取り早い稼ぎ方だろう。スキルや魔法を駆使すれば簡単に魔物を討伐できるはずだ。


 もう干渉することは出来ないが、こちらからアルフレッド君の活動を観察させてもらうよ。この手紙は読み終わったら消滅する。


 管理者より』


 読み終わったと同時に手紙が消えた。なんだかなぁ~どっかのスパイ映画かよ……破れた小袋なんて小細工するくらいなら銀貨数枚くらい入れてくれよ………


 まぁしゃーないわな、魔法の確認をして後は【剣術】と【体術】スキルのだな。魔法はなんかすぐに覚えそうな気がする。

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