第38話 朝食で卵を発見した

 翌朝、起きてみるとリリーが隣で寝ている………なんてことはなかった。普通に窓から入ってくる陽の光で目が覚めた。昨日は冒険者活動も休んだし、またダンジョンに行ってみたいな……


コン、コン、コン、コン


「はい、なんでしょう?」


「アルフレッド様、おはようございます。朝食の準備が整っておりますので食堂の方までお越しください。」


「わかりました。すぐに行きます」


 もう朝食が出来ているようだ。料理人の人たちは何時から起きて準備しているのだろう?俺にはまねできないな……冒険者用の装備に換装する。相変わらず自動変身機能は便利だ。身だしなみも整えたので食堂に向かった。食堂に入るとリリーがおり彼女も冒険者装備になっていた。


「リリー、おはよう」


「アル、おはよう。ちゃんと冒険者装備ね」


「そりゃね?昨日がお休みだっただけで、これが本業だからね」


 しばらくリリーと話していると、クリストフさん、イレーヌさん、カタリーナさんも食堂に入ってきた。


「みんなおはよう。今日の予定を聞いておこう。私はいつも通り行政府に出向き仕事だ。イレーヌは?」


「今日はジュリアーノ子爵夫人主催のお茶会があるわ。夏季の王都での動き方を相談する予定よ、新たに何家か辺境伯の配下に入りたいらしいわ」


 なんか結構重要な情報を聞いてしまってるんですが……一応まだ部外者ですよ?リリーの恋人ではあるけど……


「わかった。できるだけ情報を集めといてくれ、カタリーナは?」


「機能と同じで特に急ぎはないわね。明後日から3日間、教会と辺境伯家共同の炊き出しが行われるからそれの準備があるけど、手配は全て終わってるので問題ないわ」


「そうか、カタリーナは忙しいときは俺より忙しいからな、休めるときに休んでおいてくれ。アルフレド君とリリーは……冒険者活動だな、気を付けて行ってくるように。それでは朝食を食べよう」


「「「日々の食事に感謝を」」」

「「いただきます」」


 俺とリリーが聞きなれぬ挨拶をしたのでクリストフさんはちょっと驚いて理由を聞いてきた。リリーに説明した時のように教えると感心していた。


「良い挨拶だ。今後辺境伯家でも取り入れていこう。食事の挨拶はどの家も自由だからな」


「急に変えても大丈夫なんですか?」


「強制はしないさ、一般的な挨拶しかしていないし、変わってもだれも文句は言わんよ、短くなってるからな」


 確かに「日々の食事に感謝を」よりは短くなるな、特に問題もないので頷いておいた。朝食のメニューは宿と同じようにパンとスープ、ハム、野菜だったがゆで卵が付いている。卵だ!これは後でリリーに買える場所を聞いておこう。


「リリー、卵はやっぱり高いの?宿の朝食にも出てないくらいだし……」


「そうね、決して安くはないわ。庶民でも食べれる値段ではあるけど……栄養が豊富なのはわかっているのだけど、同じ値段を出せば1食分にはなるから……貴族か一部の裕福な商人くらいしか食べていないと思うわよ」


 やはり高いのか、1食分というと最低でも500~600Gってことだよな、庶民にとっては高い買い物だろう。確かに地球で卵が500円もしたら弁当買って食うわな。


「なるほど、俺の故郷ではそれなりに安く手に入ってたから、卵料理は多かったんだ。だからついね……」


「そうなの?今度、卵料理を教えてね?私は茹でるくらいしか知らないから」


 あまり出回っていないから、卵料理が発達しないのだろう。教えるのは全然かまわない、むしろ覚えて俺に美味しい卵料理を食べさせてほしい


「ああ、かまわないよ」


「アルフレド君、それはうちの料理長にも教えてくれんか?料理長も茹でるか溶いて焼くくらいしか知らないんだ。」


「今日は出かけるので無理ですが、次の冒険者活動を休む時でもいいですか?」


「それで問題ない、よろしく頼む」


 朝食を食べ終わってそれぞれが自分の活動を始めた。俺たちも冒険者ギルドに行ってからダンジョンに行くことにする。お世話になった人たちに挨拶をして辺境伯家を後にした。


「馬車じゃなくて良いの?」


「この格好なら怪しまれることはほとんどないわ、貴族関連の依頼を受けた冒険者だと思われるから」


「なるほどね、確かに冒険者なら歩きだね」


 30分ほど歩いて冒険者ギルドに到着した。中に入ると俺に向けて鋭い視線が飛んでくるが無視する。なんだか昨日のデートで視線に慣れてしまった。殺気でも飛ばしてこない限り気にしないことにした。


「おはようございます。ダンジョン関連の依頼はありますか?5階層までは行けます。」


「おはようございます。5階層のミノタウロスの肉を納品する依頼があります。ですが新鮮な物に限りますし、20個と数が多くなっています。それでも良ければどうでしょうか?報酬は800,000Gになります。」


「リリーどうする?」


「良いんじゃない?普通に売るより報酬は高いし、二人なら十分になんとかできる量よ?」


 たしかに【アイテムボックス】があるので鮮度も個数も問題はない。どうせ5階層まで降りるつもりだし受けようか……


「わかりました。その依頼を受けたいと思います。処理をお願いします。」


 俺とリリーはギルド証を受付の職員に渡した。

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