第20話 防諜について考える

 戦利品は全て売ればそれなりの稼ぎになることが分かった。いくつか買いたいものもあるし、明日は換金して買い物デートだな。


 そういえば、破れた革袋や一部の下着はもういらないな…女将さんに頼めば捨ててくれるかな?


『【アイテムボックス】の削除機能が発動します。』

『〔破れた革袋〕を削除してもよろしいですか?「YES/NO/それ捨てるなんてとんでもない」』


 えーと、反応に困るな……ちょいちょいネタを仕込んでくるのはあの管理者の趣味か?ここでの削除は消滅を意味しそうだな……あぁ、怖い事考えちゃったよ……呼吸が必要な生きてるもの以外なら何でも入るんだろ?てことは死体も入るってことだ。で、削除(消滅)することが出来る訳で……はい、アウトーーーー、完全犯罪が達成できましたとさ……でも今は「YES」で


『〔破れた革袋〕を削除しました。』


 スキルについて細かく考えると、犯罪者(クズ)一直線だわ。便利に使う分には問題ない。全て俺次第ってことだわな……これについて考えるのはよそう。あとは下着だな。現地物の下着は着ることないだろ、特殊なやつは予備もあるし。


『〔パンツ(現地)〕を削除してもよろしいですか?「YES/NO」』

『〔靴下(現地)〕を削除してもよろしいですか?「YES/NO」』


 両方「YES」で、さて少し荷物が減ったのか?【アイテムボックス】の整理はこんなもんで良いだろう。


 明日はデートのついでにリリーとどこかで話したいと思うが、俺の秘密をリリー以外に知られるのはすごく困る。貴族のお嬢様ってことは確実に監視か護衛がいるだろうし、俺の情報もある程度把握されているだろう。さすがにダンジョン内の会話は聞かれてないと思いたいが……


 そうすると防諜を考えないといけないな、一番防ぎたいのは会話の内容を聞かれることだ。とはいえ転生してきました。なんて誰も信じないだろうけど、スキルや魔法のことはまずいよなぁ…この場合、魔法を使って何とかするのが異世界ぽいな…となると結界か?戦闘での防御に使うイメージが多いが、結界内の音を聞こえなくしたり、中を見えなくする事とかもできそうだな……


 最初はイメージしやすい防御系の物理結界からやってみるか……外からの物理的な攻撃が出来なくする…透明の壁に囲まれるイメージがわかりやすいかな?ちょっとやってみよう。ベッドから立ち上がり自分の周りに四角い透明の箱があるようなイメージをする。


『【結界魔法】を取得しました。』


 お、良いようだ。手を前に出すと何かに阻まれた。ゆっくり動かして良かった、勢いよくやったらぶつけて痛い思いをするところだったわ。これだと動けないのか……固定された結界だな、他人を拘束するのに便利そうだ。動かせる結界はどうもイメージ出来ない…動ける結界は後にして、指定の方向だけに結界を出すことは出来るか?試行錯誤してみるとある程度自由に結界が出せた。解除も自由だ。


 次は魔法防御か?でも物理結界でも魔法は防御できそうな気がするが……魔法で出した火や水は通してしまうのだろうか?魔法の実験は難しいな、どうやれば良い?そうだ、コップに水を注いでみよう。昨日使ったコップがいいかな?サイドチェストに入っている木のコップを机の上に置いた。まずは物理結界を蓋の上に出して……魔法で水を注いでみた。


 注げた…指を入れようとしても入らないのに魔法は通過した。見ているととても不思議な感覚になる。そしたらここに魔法を防ぐイメージを追加して……できたようなのでもう一度水を注いでみた。水は弾かれて机の上に零れた。


 ここからが本題だ、部屋の中で話している内容が外に聞こえなければ良いわけだから……音を遮断する……


『【性活魔法】《ルーム》を取得しました。』


 ………えっと?なんで性活魔法?ルーム?部屋の中の声が外に聞こえない………そうっすね、あんな声やこんな声が聞こえたら迷惑ですよね、リリーも恥ずかしいだろうし……思考がリリーを抱く前提になってるよ……とりあえず使ってみるか《ルーム》


 特に変わった様子はない。発動しているのだろうけど、これは協力者がいないと確認が出来ないな……自由に出入りできるかくらいは試してみるか……それから《ルーム》の効果を出来る範囲で確認してみた。部屋のサイズまでであれば大きさは自由にできる。出入りについてはとりあえず俺は自由だった。効果の時間は分からないが、意識して解除するまでは発動しているようだ。


 目標の音を漏らさないことについては、達成できたようなのでこれで良しとするか。【結界魔法】の検証はどうしようかな?結界内の物を見えなくするには……土魔法で壁作れば良いんじゃね?そこに物理・魔法結界をかけたら視認もできないし、壊されることもない。音についても《ルーム》があるから問題ないし、とりあえず保留にしておこう。


 できたら明日はリリーに俺の秘密を話したいな、リスクはあるが彼女となら何とか出来るだろう。今日はこのへんにしておくか………


「おやすみなさい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る