第32話 親子で買い物1

 リリーと二人で買い物に行くつもりだったが、カタリーナさんも同行することになった。買い物デートではなく荷物持ち兼感想係に任命されてしまったようだ。リリーと出かけるのは嬉しいのだがどうなる事やら………


「アル?なにさっきのセリフは、お母様を口説いてるの?それはダメだと言ったはずよ?」


「お世辞だよ、お世辞。けっして口説いてるわけじゃないよ」


「なら良いんだけど、お母様はああ見えて抜け目がないから気を付けてね。油断すると一気に食われるわよ……」


 どっちの意味での食われるなのだろうか?精神的にそれとも物理的に?考えるのはよそう……しばらくするとカタリーナさんは水色のワンピースにケープを羽織って降りてきた。庶民に見えなくはないがどことなく高貴な感じが隠せてない。それと母親には見えないんだが??


「二人が並ぶと姉妹みたいですね、二人ともとっても似合ってますよ」


「ふふふ、アル君に褒められてうれしいわ」


 カタリーナさんは嬉しそうに頬を染めている。が、リリーからは鋭い視線が刺さっている。うっごめんよ、でも女性の服は褒めておかないと……


「貴族街の入り口までは馬車で移動するわ。歩いているとかえって目立ってしまうから、そこから先は歩きね?お母様もそれで良い?」


「いいわよ、こんな格好で外を歩くのなんて何年ぶりかしら」


 でしょうね、貴族は馬車移動が普通だ。外を歩くことなんか緊急時以外はほぼない。でも冒険者をやってたみたいだからある程度慣れてはいるだろう。乗ってきた馬車にのり貴族街の入り口まで移動した。もちろん二人ともちゃんとエスコートしたよ?


 馬車を降りて歩き始めたが、いろいろな視線が飛んでくる。そりゃそうだ、美人と美少女を侍らせたモブが歩いているのだから……というより二人に視線が集まってるのか、俺は荷物運びの下男だな……


「視線がうっとおしいわね、殴り飛ばしてやろうかしら」


「あらリリーちゃん、私が殴り飛ばしに行くわよ?」


「あのー、二人して物騒な話するのやめません?実害がなければ放っておけば良いんですよ、確かに視線はうっとおしいですけど」


 そういうと、二人は同時に俺の左右にきて腕をとった。そして胸部装甲おっぱいを腕に押し付けてくる。両腕が大変に幸せな状況になっております。ポヨンポヨンしております。とっても柔らかいです。ありがとうございます!


 だが、すべての視線が俺に集中しだした。なっ、この二人これが目的か!確かに美人と美少女を侍らせたやつがいたら、俺もそいつのことを見てしまう。でもここは我慢だな、この幸せな状況を考えたらその視線も甘んじて受けようではないか!


「アル、顔がニヤけ過ぎてよろしくないことになってるわよ」


「はっ!両腕が幸せなのでつい……」


「お母様?なぜ腕を組んでいるのです?恋人なのは私でだけですよ?」


「腕くらいいいじゃない、二人が腕を組んでるのに一人で歩くのは寂しいわ」


 そういう問題なのか?リリーはため息をついているが、カタリーナさんはニッコニコだ。ここは口出ししても碌なことになりそうにないので黙っておく。リリーのお説教は後で受けよう……


「ここよ、この店ならアルが欲しい靴もあると思うわ」


 [革製品の店レザー]とある。その名前はわざとなのか?英語で書くと「leather shop leather」だぞ……中に入ると革独特の臭いがする。この臭いは好きだ。


「いらっしゃいませ。今日はどのような品をお探しですか?」


 本来なら店員は声なんてかけないはずだ。カタリーナさんがいるからか?だろうな完全にカタリーナさんに向かって話しかけている感じだ。


「えっと、普段に履けるような脱着しやすい靴が欲しいんですが…」


 俺が話しかけると吃驚した表情してそれから残念な顔で俺を見ている。なんだ?俺が買っちゃダメなんか?


「はい、お客様の普段履きでしたらこちらにありますのでどうぞご覧ください。」


 ちゃんと接客はするんだな、なら表情のことは見なかったことにするか……するとカタリーナさんが


「あと、容量が大きめのマジックポーチはあるかしら?」


「ございます。すぐにいくつかお持ちしますね」


 店員さんはニコニコ顔で対応し店の奥に入っていった。揉み手をしている幻影が見えそうだった。


「対応はいまいちね、でも製品は悪くなさそうよ。あの店員じゃなければ良い店ね」


「そうね、完全にお母様を見て態度を変えていたわ。表情もね。製品がダメだったら店主に文句を言うところね。見たことない店員だから最近雇ったのかしら?」


「まぁ、さすがにあの態度はな……俺に対しても接客は出来てるから及第点といったところか?」


 革製品を見るより店員の品評会が始まってしまった。しばらくすると店員と別の人が出てきた。


「おう、リーゼロッテ、久しぶりだな。今日はどうした?アルベルトのやつが慌てて倉庫に駆け込んでいったが……」


「レノーさん、久しぶりね。今日は私の恋人のアルの買い物に付き合って来たのよ。普段履けるような脱着しやすい靴はある?」


 この人がリリーの知り合いだろう。ちゃんと恋人宣言してくれるのが嬉しかったりした。

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