第33話 親子で買い物2

 リリーとカタリーナさんと一緒に革製品の店にやってきた。最初に出てきた店員は少し接客態度がなっていなかったが売っている製品は良い物のようなので気にしないことにした。


「恋人ねぇ、お前さんにもやっと春が来たのか、喜ばしいこった。で?そちらの美人さんは?お姉さんかい?お姉さんが居るなんて聞いたことないけど……」


 ふむ、普通の人が見ても姉に見えるのか。確かに若く見える。とても30代?には見えないな。ちらっとカタリーナさんを見ると鋭い視線で俺を見ていた。なぜだ?年齢の事を考えたからか?こういう女性の勘も未だによくわからん……


「余計なおせわよ、姉に見えるかもしれないけど母よ」


「マジか……てことは、先代〔灼熱の魔女〕……確か冒険者は引退したと聞いていたが……」


「そんなことないわよ、活動してないうちにリリーちゃんが〔灼熱の魔女〕って呼ばれるようになっただけよ?」


 おっふ、親子そろって〔灼熱の魔女〕なのか……怒らせたら燃やし尽くされそうだな二人に……


「そ、そうか……靴だがそこのフォレストウルフの革で作ったやつはどうだ?紐も短いし脱着は簡単だぞ」


 指さされた靴を見てみると確かにカジュアルな革靴のような感じだ。サイズがあればこれで問題ないだろう。


「履いてみて良いですか?」


「いいぞ、そこの椅子を使ってくれ。サイズはたぶんその靴で大丈夫だと思う。きつかったり大きかったりしたら行ってくれ、ほかのサイズもあったはずだ。」


 ブーツを脱いで革靴を履いてみた。いい感じだ。適度にやわらかくて動きやすい。地球の比べるとクッション性は劣るが、底は丈夫に作られている。【解析】


〔革靴:革製の靴。相場:12,000G〕


「問題ないですね、いくらになります?」


「それは、10,000Gだったかな?すまん忘れた確認してくるわ」


 そう言ってレノーさんはカウンターに戻っていった。相場は12,000Gと出ているけど……実際はどのくらいで売っているのだろう?


「お待たせしました。こちらが現在店で取り扱ってるマジックポーチになります。大きいものですと馬車1台分は入ります。」


「そう、部屋サイズの物はないようね、なら結構ですわ」


 おっと、ざっくりと切り捨てた。部屋サイズなら買ってたのか?まぁ気にしなくて良いか……店員はすごすごと引っ込んでいった。


「あはは、あまり虐めてやらんでくれ。まだまだなところのある奴だが、結構良い接客をするんだぞ?」


「接客が悪かったらレノーさんに文句を言ってたわよ?ね、アル」


「そうだな、さすがに客の様子を見て態度を変えるのは如何なものかとは思うが、今回は仕方がないかもしれないな、カタリーナさんも居たからね」


 レノーさんは頷いている。そりゃカタリーナさんを見たら接客態度も変わるわな、美人だし、庶民っぽい服を着ててもそこはかとなく高貴な感じが漂っている。すわ、御忍びの貴族か?ってなるのも仕方がない


「革靴は11,000Gだったわ。支払いはどうする?」


「ギルド証でお願いします。」


 ギルド証を出すと手に持っている小さな箱をかざした。ピコン!電子音的な音がするとギルド証の金額が変化した。おおまさに電子決済!地球より進んでるんじゃないか?


「まいどあり。他に必要なものはあるかい?」


「特にないですね、また寄らせてもらいます。」


 受け取った革靴をリュックに入れるふりをして【アイテムボックス】にしまった。おれもマジックポーチを持った方が良いのかな?そうすれば荷物を持ってなくても【収納】持ちだとは疑われない……


「アル君、マジックポーチなら私の古いやつ上げるわよ、馬車サイズのやつだけど言わなければわかないわ」


 なんでわかるんだ?やっぱり【無表情ポーカーフェイス】が仕事をしてない気がする。前にもリリーに考えてることがバレた気がするし……


「いえ、そんなの悪いです。自分で見つけて買いますよ」


「遠慮しなくてもいいわ。どうせ使ってないし、屋敷で眠ってるより使った方が有意義よ?」


 うーん、貰って良いものだろうか?それなりのお値段がするはずなのだが……


「大丈夫じゃない?お母様は大量のマジックポーチを持ってるから。わたしのやつもお母様にもらったものよ?」


「そんなに持ってるんですか?売ってしまっても良い気がするんですが……」


「迷宮なんかでちょくちょく手に入るからね、溜まっちゃうのよ。それに中に何が入ってるか整理するのも面倒で……必要な物は取り出してるけど、それ以外は入れっぱなしにしちゃうのよねぇ。だから売るのも面倒なのよ」


 貴族だし高ランク冒険者だっただろうから、お金はあるのか……それに、ただのめんどくさがり屋でしたか……まぁ重要な物は入ってないだろうし、何か入ってればリリーを通じて返せば良いだけだから気にしなくていいか


「そうよ、私なんて貰ったマジックポーチの中にフライパンとか入ってたわよ?テントもあったし……」


「わかりました。それでは1つ頂きたいと思います。」


「帰ったら渡すわ。リリーちゃん服を見に行かない?普段着る可愛いやつを買いましょう」


 やはり女性の買い物時間に突入するのか……ニコニコしてついて行くしかないな……昔経験したあの苦痛がをまた経験することになるのか……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る