第10話 ウサギ亭
マリーズさんの案内で解体場にやってきた。だだっ広い倉庫の端でスキンヘッドのおっさんが刃物を研いでいた。聞こえてきた音は刃物を研いでる音だった……マジで怖えぇよ。
「リベルトさん仕事ですよ」
「おう、マリーズとお嬢…リーゼロッテじゃねぇか、大物か?」
「私じゃないわよ、こっちのアルフレッド、アルが仕留めた獲物を持ってきたのよ」
「おう、初めて見る顔だな。俺はリベルトでこの解体場の責任者だ。ほかにも何人かいるが今は俺だけだ。さて、獲物をそこの台の上に出しな」
完全に【収納】持ち相手の話になってるな、気にしなくても良さそうなので作業台の上にホーンラビット四匹とグラスウルフ二匹を出した。
「よし、確認した。特に問題のある倒し方じゃないな、十分綺麗に倒せてる。毛皮も取れそうだしな。全部満額で問題ないぜ」
「わかりました。そのように処理します。」
なんだかサクッと査定が終わった。カウンターに戻りるとマリーズさんが報酬を用意してくれた。全部で大銀貨2枚と銀貨3枚の13,000Gだ。
「それでは、こちらが報酬になります。ご苦労様でした。」
「ありがとうございます。また明日も来ますのでよろしくお願いします。」
報酬を受け取ってギルドを後にするとリリーも一緒に付いてくる。
「どうした?まだ何かあるのか?」
「はぁ?アルあんた、私が泊ってる宿の場所わかるの?」
おう、そうだった。リリーに宿を取ってもらうのを頼んだったんだ。ヤバいリリーさんがお怒りだ。
「そうだった。すまんすまん。討伐ですっかり忘れてたよ」
「まったく、何なのよ!わざわざ私が宿を取ってあげたって言うのに!」
「だからごめんって言ってるだろ。今日の晩飯くらいなら奢るからさ」
「仕方がないわね、それで許してあげるわ」
めっちゃチョロいやんけ、でも宿代抜くと6,000Gで足りるのか?
「アルの懐事情ぐらい把握してるわよ、宿の食堂で食べたら一人1,000Gでお釣りが来るわよ」
「へいへい、ありがとうございます。もうちょっと稼いだらちゃんと奢らせてもらうよ」
なんだか掌の上で転がされてる気分だな……金も無いししゃーないか
「それじゃ行くわよ、宿はギルドの裏手だからすぐそこよ」
リリーに案内されて宿に向かった。確かにギルドの裏手だ、大通りに面しているわけではないが治安は問題なさそうだ。それに見た目も綺麗で女性受けは良さそうだ。看板に[ウサギ亭]と書かれている。
「ウサギ亭は良い宿よ、ご飯も美味しいし、部屋も綺麗で過ごしやすいわ」
「へぇ~、確かに宿の見た目も悪くないし、ギルドに行きやすいのも利点だな」
リリーは宿の扉を開けて中に入って行き、カウンターで奥に向かって声をかけた。
「カリナおばちゃんただいま~」
「おや、リリーちゃん早かったわね。その人が噂の彼氏かい?」
「彼氏じゃないわよ!ただの知り合いよ!」
「ふふふ、そうなのね顔が真っ赤よ」
からかわれたリリーは口を尖らせてブツブツ言っている。
「いらっしゃい、ウサギ亭へようこそ。女将のカリナです。一泊の料金は7,000Gで朝食付きよ。晩御飯は800Gになるわ。何泊するの?」
「こんばんは、アルフレッドです。今はあまりお金がないので1泊でお願いします。あと、明日以降も稼いで泊まる予定なので部屋の確保をお願いします。」
「わかったわ。リリーちゃんの彼氏さんだし特別に確保しておくわ。無理そうなら早めに言ってね」
「(彼氏じゃないわよ……)」
まだブツブツ言ってるし、からかわれてるだけなんだから気にしけりゃいいのに……
「あと、今日の晩御飯をお願いします。リリーと二人分で」
そういって大銀貨2枚をカリナさんに渡した。
「あらあら、さっそくお食事デートね、サービスで飲み物をつけるわね」
お釣りの銀貨1枚と銅貨4枚それと部屋の鍵を受け取った。
「食事はすぐにできますか?」
「用意は出来るわよ、でも先に部屋に行って荷物を置いてこなくちゃね、鎧のままデートするの無粋でしょ?部屋は三階よリリーちゃんの隣だから案内してもらって」
「そうですね。リリー部屋まで案内してくれるかい?」
「もう、仕方がないわね、ついてきなさい!」
ツンデレ大爆発中である。ここまで見事なツンデレは見たことない。てかどんだけ俺の事気に入ってるんだ?あれ?自意識過剰か?うーん、わからん。嫌われていないのは分かるが、どこまで好意があるのかが計れん。
「何してるの!行くわよ!」
リリーについて三階まで上がり部屋に案内してもらった。
「ここがアルの部屋よ、隣が私だから何かあったら声をかけて。緊急なら壁を叩けばわかると思うから、少ししたら食事にしましょう。私が声をかけるわ」
緊急なんてあってたまるか!部屋ではのんびり過ごしたいんだよ。
「わかった。旅装を解いて待ってるよ」
リリーと別れ部屋の鍵を開ける……って開かねぇ……どうやって開けるんだこれ?ドアに鍵を挿す場所はある。そこに鍵を挿しても回せない、まぁ四角いから回すタイプではないんだろう。う~ん、わからん。挿したままドアノブを回すが回らない……これはリリーに聞くしかないか…と思いリリーの部屋の方を見ると。目の前に立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます