第6話 冒険者ギルド1

 冒険者ギルドにやってきた俺は、リーゼロッテからの口撃を躱して冒険者登録している。異世界テンプレのおっさんに絡まれるよりはよっぽどマシではあるが……登録用紙に必要項目を記入した俺は職員にその用紙を渡した。


「これで良いですか?」


「はい、結構ですよ。アルフレッドさんですね、それでは訓練所の方で簡単な試験をするのでついてきて下さい。」


「え?試験て何するんですか?」


「簡単な模擬戦ですね、その結果でランクが決まります。ランク等の説明は試験後にしますので…」


 え?いきなり戦うの?身体は動くと思うけど自信はないなぁ……今更嫌だとも言いづらいので素直について行った。


 訓練所に入ると中で素振りをしている人や、的に向かって矢を放っている人達が居た。離れた場所では連携の訓練をしているパーティーもいる。


「ベルトランさーん。新規登録者です。試験をお願いします。」


「おう、ちょっと待っててくれ」


 受付の職員が声をかけると厳つい顔をしたオッサンが答えた。身体は筋肉でムキムキだし顔に傷があってめっちゃ怖い、あれはヤ〇ザもビビッて逃げ出す怖さだ。


「あの人と戦うんですか?」


「そうですよ(ニッコリ)」


 マジか絶対殺される。初日が命日なるのか……最悪殺されなくても確実にボコられる。手加減なんて言葉を知らなさそうだ……


「すごく怖いんですけど……」


「大丈夫です。手加減してくれますから(ニッコリ)」


 いやいやいやいやいや、あれは無理です。手加減されても死ねます。


「ちなみにベルトランさんは、リーゼロッテさんの叔父様です。リーゼロッテさんに絡んだ人はすべからく半殺しにされてます。」


「えっと、逃げて良いですか?俺がさっきリーゼロッテさんとに話してたの見てましたよね?」


「ダメです。と見てましたよ(ニッコリ)」


 そのニッコリするの止めてくれ…可愛いんだが寿命が縮む。


「待たせたな、リーゼロッテに絡んだって聞こえたが?」


「えっと、絡んではいません。どちらかと言うと絡まれた方なんですが…」


「ほう?絡まれたって事は、ろくな事してねぇって事だな?」


 いやいやいやいやいや、待ってくれ、俺は何もしちゃいな………待て、微妙に口説いた事になるのか?


「アルフレッドさんは、リーゼロッテさんを口説いてましたよ」


「いや、待って!話を聞いて!に話してただけです。」


「ほう」


 ベルトランさんの顔が鬼の形相になってますよ…俺の人生オワタ


「じゃぁ試験半殺しを始めようか、ちゃんと手加減してやるから本気でかかって来いよ」


 もうヤダー、試験の文字が半殺しになってるじゃないですかー


 渡された木剣を持つと訓練所の真ん中に立たされた。5メートルくらい離れた場所にベルトランさんが立ち木剣を構えた。めっちゃ怖い!


「最初はこちらから攻撃しない、全力で打ち込んで来い!始め!」


 【解析】している暇もなかった。こうなってしまってはやるしかない訳だが……殺される事は無さそうなので(本当か?)剣を構えて打ち込んでみた。


 木剣を上段から振り下ろしたが簡単に躱された。続けて手首を返して左逆袈裟に薙ぎ払ったが……、躱されている。


「なかなか鋭いな、悪くない」


 攻撃が来ないので、さらに続けて袈裟斬りを仕掛ける。そこから横に薙ぐが……当たらない。また躱されている。


「良い攻撃だ。俺じゃなきゃ当たってるな!こちらからも行くぞ!」


 一瞬で間合いを詰められた!あのムキムキ筋肉でなんてスピードなんだよ!首筋にチリチリと何かを感じた。慌ててバックステップすると横向に木剣が通り過ぎていった。


「今のを躱すか!良い動きだ!」


『スキル【危険察知】を取得しました。』


 今の感覚はスキルの影響か!何とか躱す事が出来たが、すぐに右上腕の辺りがチリチリしだした。まずいと思い身体を捻り盾を構えようとしたが遅かった……ボキッ


「いってぇぇぇぇ」


 腕の骨が折れて叫んだ瞬間、頭に衝撃を受けて意識が無くなった。





 死んだ。俺絶対死んだ。頭かち割られてまたあの白い部屋に居るんだ。恐る恐る目を開けると、リーゼロッテの顔が飛び込んできた。あれ?今どういう状況よ?


「気が付いたわね、叔父さんが無茶して悪かったわね」


 なんで?しかも膝枕されとる。どうなってんだ?てかここ何処?


「お、気が付いたか!すまんな、避けられたからついつい力が入って当てちまったわ」


 当てちまったって……気絶した俺はここまで運ばれソファに寝かされて、さらにリーゼロッテに膝枕をされてるらしい…


「もう、叔父さんやりすぎよ」


「いやな、そいつの筋が良かったってのもあるが、お前を口説いたって聞いたからついな」


「口説かれてないわよ…(可愛いって言われたけど…)」


 膝枕されてるから小さな呟きも聞こえてるよ?リーゼロッテは顔を赤くしながら反論している。だが少し嬉しそうだ。


「くっくっくっ、お前が膝枕なんてしてるのを見れるとは、そいつの事が気に入ったか?」


「そんなんじゃないわよ!私のせいでこんな事になっから面倒を見てるだけよ!」


 このまま膝枕をされているのはとても気持ちがよい。柔らかいし、何かとって良い匂いがする。あまり露骨にクンクンするとばれそうなので、鼻でゆっくり息をして香りを楽しんでいる………って完全に変態の行動だな、でも美少女に膝枕されるのがこんなに心地よいものだったとは……

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