第28話 魂の番

「わかった…俺はこのタイミングで父上に…」


三人は作戦会議中。

しかし、現状のままだとわからないことが多すぎるので、一旦会議は終了することに。


「あとは追々説明していくから…マリケス、今は解散しよう。例の魔族と連絡が取れたらまた合流する。でいいな?」


「お前たちの言うことを聞くのは不本意だが…いいだろう。俺は一度、王都に戻る。何かしら理由をつけるから、心配はしなくていい。」


三人が準備完了できたとき、ジュディスはというと…


「待ってヨ!皆よく聞くネ!私は姫様と話して、もっといい考えが浮かんだノ…!」


「話にならんな。四天王ジュディス…いや、元と言った方がいいかな?お前はクビだよ。人間と仲良く手でも繋いでろ。」


「あんた…ポンコツなだけじゃなく、そんな甘ったるい思考回路まで持ってたなんて、信じられないわ!」


「…ジュディス、すまないが同感じゃ。出ていく準備をしてくれ。」


他の四天王に話したところまではよかったが…

まともに聞いてすらもらえなかった。

部屋を追い出され、もう駄目かと思われた時…


「ジュディス!やっと帰ってきたのか!?」


聞き覚えのある声が…


「魔王サマ!よかった…城を追い出されたノネ…」


「何故…ずっとそなたを探していたのだが…」


ジュディスは安心感からか、涙が溢れて止まらなかった。

その時も、魔王はずっと寄り添っていてくれた。

話す決心をし、魔王に話し始める。


「魔王様、よく聞いてほしいネ…」


「ああ、いいが…大丈夫なのか?」


「魔王様、魂の番ヲ…姫様を諦めてくれませんカ…?」


「!? 本当になぜなのだ!?我にとって姫は嫁で…国にとっても大事な存在だ!諦めることは…」


国を捨てることと同義…である。

魔王という座につく者には、風習…よりももっと強固な習わしがある。

幼い頃から言われて育つのが魔王の普通。


それは…


魂の番とは、己の分身とも言える存在である。

代々、魔王は魂の番と夫婦めおととなり、子孫を残し育ててきた。

いつの世も、それは守られてきた…

魂の番との子だけが、後継者として選ばれる。


現在、それは破られたままである。

ファーミラは、汚らわしい人間と恋に落ちその者を花嫁にした先代魔王の子。

国が…民が…それを許す訳もなく…先代魔王と花嫁は反逆により殺された。


ファーミラが、齢二歳の時であった…

そして半人半魔のファーミラの魂の番は、人間であった。



「魂の番が魔族の国でどれだけ大事なのか、そなたはわかっているだろう?」


「姫様は聡明で、人間の国も魔族の国も、平等に考えてくれているネ!そして魔王様とも、平和的解決をしたいと申してイテ…私は共感したノネ…」


「…我にとって、魂の番は幼い頃から絶対的な存在だ。諦めることはできない。しかし、平和的解決というものは聞きたいな!争いなど、血を流すことになるだけだ。話してくれ…」


「姫様と共にいる男も言ってたけど、人間の国の政治は廃れているノネ。意味はわからないけど、政治の裏には賄賂、奴隷制度、裏ガネ?とか色々あるらしいネ。」


裏金は言っていない。


「…続けてくれ。」


「そこで、姫様たちは人間の国を変えたいと言っていたノ。それには魔王様の協力も得たいと申してイタ…そして、人間の国が寄越した勇者は姫様たちが止めてくれたネ。魔王様の命を救ッタ。」


「そんなことがあったのか?姫には感謝しなければ…」


「勇者をうまく説得できていれば、今頃…」


作戦会議でもしてるネ。



「マリケス、話を聞いてくれてありがとう。俺たちは…」


「わかってる。魔族と合流な?俺は王都の近くにいるから、何かあったらすぐに来てくれ。これ、住所だ。」


住所が書かれた紙を手渡して、マリケスは王都の方向へ消えていった。

二人が魔族の国に向けて歩いていると…


「何だこれ…?」


「これは…転送魔法の魔方陣でしょうか…?なぜこんなところに?」


二人がしばらく見ていると…


ニョキッ


魔方陣から腕が伸びてきた。それと同時に…


「姫様、こっちに来るノネ!!」


ジュディスの声が。


「え、ジュディスさん、本気ですか!?怖いです、私転送魔法とか使ったことないんです!」


「サヤ、行くぞ!」


レドはサヤの手を引き、一緒に魔方陣の中に入った…

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