第3話 スキル

恐る恐る顔を上げたマリケスは、シールドに気づいた。


「何だよこれ…?とにかく逃げるぞ、ヒルダ!」


「マリケス様~!お待ちくださいぃ!」


二人はスライムを恐れ、街に逃げて行ってしまった。


「どこまでも薄情な連中だな…サヤ、大丈夫か?怪我とか…」


「わ…私は大丈夫です!レド…これは一体何なのですか?」


バリアのことを追及されたので焦る。


「その…森のなかで修行していたら身に付いたんだ。嘘だと思うだろうけど、本当なんだ。きっと、神からの授け物だな。」


少しだけ真実を織り交ぜ、嘘をついた。

するとサヤは目を輝かせて…


「レド、すごいです!スキルをお持ちだとは知りませんでした!」


「す…すきる…?何だそれ?」


「後で説明します!今はスライムを…スキルを解除できますか?」


レドが手をかざすのをやめ、バリアを消すと…


ズバババッ…


スライムが細切れになっていく。


「サヤの剣技は美しいな…」


ボソッと呟くと、サヤは恥ずかしそうに…


「生まれてから剣術しか教わっていないもので…褒められると嬉しいです。レドのスキルこそ、素晴らしいものですよ!」


「…ありがとう。俺も…嬉しいよ。」


前世のサヤと姿が重なる。


………………………

「レド様!あの桜の木…とても美しいです!」


「そうだな…でも、サヤの方がもっと美しいよ…」


するとサヤは目を反らし、恥ずかしそうに言った。


「レド様だって、誰よりもかっこいいです…」


心臓が高鳴る。誰の手にも渡すまいとサヤを抱きしめて…


「はは…君には敵わないね…俺の愛しいサヤ…」

………………………


前世を思いだし、つい涙を流す。


「レド、どうしたのですか!?やっぱりどこか痛いとか…」


「いや、大丈夫だ…目に虫が入っただけ…それで…すきる?とは何なのだ?」


「えっと…スキルとは与えられた職業を極めた者だけが習得できる技術です。それは様々なものがあって…歩きながら話しますね。」


二人は再度、街に向かって歩き始める。


「いわば境地に達した者のみが会得できる技術…ということか。」


「それで大丈夫です!例えばで言うと…格闘家の方は岩をも砕く強い拳を。これは肉体にかかるスキルですね…それとレドのスキルは…」


レドの頭は爆発寸前。

魔法は知っていたものの、それはこの世の理から外れるものだと考えていたので、かなり戸惑った。


そんなこんなで歩くこと10分。街に到着した。


「案内ありがとう。助かったよ。」


「いえいえ…こちらこそ助かりました!」


サヤは少しもじもじした様子なので、尋ねる。


「何かあるのか?」


「その…もし良ければなんですが、私たちのパーティに入ってくれませんか…?」


「あの軟弱王太子とか?サヤとならいいが…あいつと一緒なのは、少し耐えがたい。」


サヤは苦笑いして、愚痴を言う。


「私も、あんな人とはパーティを組みたくないんですけど…剣聖に選ばれてしまった以上、使命ですから…」


「まず、剣聖ってどういうものなんだ?生まれつきのもの?」


サヤは少し驚いた顔をしたが、すぐに説明し始める。


「はい…この世界の人間は生まれつき、職業を持っています。職業は選べず、神によって定められて、その職業を全うすることが人生なんです。」


「じゃあ…サヤはやりたくもない使命を…背負わされてるってことか?」


「簡単に言うとそうですね…でも、私はこの職業のおかげで助かったこともいっぱいあります!」


頭の中を整理する。


この世界には生まれた時から職業があり、その職業を全うすることが一般的であるということ。

スキルは、その職業を頑張ると身に付くもの。


サヤは、生まれた時から勇者と旅することを義務付けられていること。


ざっくりしているが、大体は合っている。


「それで…パーティの件は…?」


「あ…とりあえず入るとかってできるか?体験みたいな感じで…」


レドがそう言うと、サヤは大喜びして…


「もちろんです!マリケス様が了承したらですが…」


二人でパーティのことを話していると…


「おい剣聖!遅いぞ。俺たちで次の依頼を受けたから、さっさと来い。」


「マリケス様…レドをパーティに入れるのはどうでしょうか?」


「なんで俺を殴った奴なんかを入れたがるんだよ?確かにスキル持ちだが…荷物にしかならないだろうがよ!」


「さっきのことは詫びる。すまなかった。だからパーティに見学でもいいから入れてくれないか?」


そう言って頭を下げると、マリケスは調子にのった様子で…


「そんなに入りたいんだったら許してやるよ!こき使ってやるから覚悟しとけ?お前がいかに雑魚かってこと、思い知らせてやる。」


「……感謝する。依頼?を受けたんだよな。どこに行くんだ?」


「お前らが逃がしたスライムだよ!慌てて逃げ出してきたってギルドに言っといたぜ?」


サヤとレドはフリーズする。


(こいつ何言ってんだ?)


「スライムならサヤが倒したぞ?かなりの数だったが…」


「はっ!嘘を吐くのもいい加減にしろよな。証拠は?」


「魔石を取ってきました…証拠です…」


恐る恐る魔石を見せると…

マリケスとヒルダの目が点になった。


「………………ギルドに出しに行くぞ。」


「は…はい!」

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