第2話 変わらない君
眩しい光が、レドの目に映る。
「太陽…森…転生できたのか…?」
無事、サヤが居る世界に転移することができたようだ。
「力を試してみるとするか…」
左手を空にかざしてみると…
ブォンッ
音と共に薄い水色の円が見えるようになった。
「大きさも変えられるのか?実践してみよう。」
頭の中で念じると、その円を小さくすることができた。
「問題はなさそうだな。早くサヤを探さないと…」
辺りを散策していると…
「…あれは…狼か?危険だ、迂回しよう…」
狼の群れを発見したので、迂回を試みたが…
運悪く、目視されてしまった。
「まずい…この力を使うしかないか!」
少し大きめにバリアを出し、様子を見ると…
「ガルルルル…」
あっという間に囲まれてしまった。
「耐えることしかできないな…誰かが来るのを待とう…」
すると…
「今助けます!少々お待ちください!」
聞き覚えのある声がした。
声がしたかと思うと、目の前の狼たちが一瞬で肉になっていく…
「!?…見事な剣技…」
「お怪我はないですか…?」
「あ…あ…」
レドの顔から涙が溢れる。
最愛の妻に会えた安堵で、つい
「どこか痛いんですか!?見ますので安心し…」
「サヤ、愛してる…!」
「はい!?いいいいきなり何ですか!?」
顔を真っ赤にして、動揺を隠しきれない様子だ。
そこへ…
「また勝手な行動しやがって…おいへっぽこ!俺の言うことは聞けと言ったはずだ!」
後ろから男女二人組が出てきた。
「あ…ごめんなさい…マリケス様…でも、助けを求める方がいらっしゃって…」
パァンッ…
マリケスと呼ばれる男が、サヤの頬を叩いた。
「俺は王太子であり勇者だ。逆らったらどうなるか、わかってんだよなぁ?」
「……はい…申し訳ございませんでした…」
この光景を見たレドは思わず…
「俺の妻に…手を出すな!!」
マリケスにグーパンしてしまった。
その衝撃で、マリケスは倒れる。
「きっ…貴様!俺を誰だと思って…」
マリケスの胸ぐらを掴み持ち上げる。
「次、俺の妻に手を出し…」
「ストーップ!!あの…旅人さん、マリケス様は王太子でありこの世界を救う勇者なのです!どうか矛を納めてくださいませんか…?」
サヤの言うことを聞き、マリケスから手を放した。
「こいつ…王太子なのか?それは知らなかった。悪かったね、王太子様!」
「くそがっ…!俺が王族だって知らなかったのが救いだな!知ってたら即刻死刑にしてやったのに…!」
かなりピリピリした空気の中、サヤが口を開く。
「あの…旅人さん、お名前は?」
「レドだ。そっちは…もう知ってるから大丈夫。」
「レドさんですね!レドとお呼びしてもよろしいですか…?」
「…もちろんだ。その…ここら辺の土地勘が無くてな…街までついていってもいいか?」
レドがそう言うと、サヤはとても嬉しそうに頷いた。
「ではマリケス様…レドを街まで送り届けましょう…?」
びくびくした様子で、マリケスに尋ねる。
「次、俺を怒らせたら即刻死刑だからな!ついてこい…」
「大丈夫だそうです!レド、行きましょう?」
笑顔で手を差し伸べるサヤに、レドは安心する。
サヤは変わっていないと。
あの笑顔も、優しさも、全てがあの時のままだった。
四人で街へ歩き始める。
「サヤは侍なのか?」
「さむらい?私は剣聖ですよ!」
「剣聖…単語も知らないな。」
話しながら歩いていると…
「三メートル先、スライム居ます。注意してください!」
まだ目視できないが、サヤにはわかるようだ。
この先に、モンスターが居る。
「この先だな?感謝するよ。」
レドがお礼を言うと、少し照れた様子で、刀を構えた。
「スライムなんてゴミモンスター気にする価値もない。さっさと行くぞ。」
「あ!マリケス様、そっちは…!」
マリケスの頭上に、3匹のスライムがいた。
スライムは触ると皮膚が焼けただれ、痛みが生じる。
命の危険は無い…が…顔や頭をやられると後遺症が残るだろう…
「うわぁぁぁぁぁあ剣聖!早くしろ!」
慌ててサヤがマリケスを押して身代わりになろうとする。
「サヤ!!」
レドも一緒に飛び出し、バリアを貼ってサヤを守った。
スライムはバリアの上でもぞもぞしている。
頭を守るように腕をあげていたサヤだったが、バリアに気づき…
「レド…これは…!?」
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