第7話 追放

「ありがとう…」


「いいえ…話してくれてありがとうございました…私も、私を知るきっかけになりましたので…」


話は終えたが、二人は朝になるまで抱きしめ合うのをやめなかった…





「ん…朝…?」


サヤが目を覚ますと、レドはすでに仕度を済ませていた。


「よく眠れたか?」


「はい!その…ぎゅってしてもらってたので…」


お互い、顔を赤くする。


「うん…深夜テンションってやつかな…」


「そ、そうですね…」


「俺は仕度終わってるから先に出るぞ。着替えとかもあるから…」


そう言い、レドは部屋を出た。


「………もう…恥ずかしいよぅ…!」


顔を押さえ、ベッドで悶える。


「あんな…カップルみたいな…!きゃぁぁぁぁ!」


生まれてから、恋愛など一ミリも触れてこなかったサヤは、いきなりの進展にかなり動揺している。


「とりあえず仕度しなくっちゃ。」


着替えを済ませ、刀を紐で固定し準備OK。


「よし、行こう!」


階段を降りて、受付にお礼をしてから外に出た。


「おい剣聖!お前のせいでとんでもない目に…!」


「あ…マリケス様…ってどうしたんですか!?」


マリケスの顔はアザとたんこぶだらけで、過ぎ行く人全員に見られている。


「お前のせいで殴られたんだよ!ギルドでたむろしてる奴らにな!」


どこをどうと取ればサヤのせいになるのかはわからないが…


「あれはマリケス様が悪いですよ?」


「お前…口答えすんのか?」


右手で殴りかかるマリケスをいなし、背負い投げした。


「もうあなたに縛られる気はないので、抗っていきますよ。」


「痛っ…おいヒルダ!魔法でこいつ吹き飛ばせよ!」


「え…でも…街での魔法は禁止されてます…」


ヒルダさえも、マリケスに味方しなかった。


「いいからやれよ!」


この騒動を見に、多くの人が集まってきている。


「誰?あれ。」


「シーッ!マリケス王太子よ…ぷっ…ひどい顔ね。」


ここまできて、マリケスの怒りは頂点に達した。


「剣聖!荷物持ち!お前たちはパーティから出ていけ。王太子命令だ!」


どや顔でそう言い捨てたマリケス。

サヤとレドを失うことの重大さを考えていないのだろうか…


サヤたちは即答。


「こちらからお願いします。」


「あとからすがって来ても遅いからな?お前たちは追放だ!」


「マリケス様…もう少し考えた方が…」


「うるさいぞヒルダ!俺の命令は絶対だ。」


一方、サヤたちは笑いを堪えるのに必死だった。

二人…特にサヤがいなくなれば、このパーティは崩壊するだろう。

そんなこと知るよしもなく、マリケスは追放を言い渡した。


その事がおかしくてたまらない。


「サヤ、行くぞ。笑ったら面倒になる。」


「ふふ…そうですね!」


二人はそそくさとその場を去った。

街道沿いを歩きながら、二人で今後のことを話す。


「二人でパーティ組むのが一番いいと思うんですが…どうでしょうか?」


「俺も同意見だ。逆に…俺でいいのか?他のメンバーとか…」


「それは後で決めていきましょう!まずはパーティの申請をしに、ギルドへ行かないといけませんからね。」


ということで、二人はギルドへ向かった。

ギルドへ入ると、何故か皆に白い目で見られた。


「昨日の件か?なんだかおかしいぞ。」


「そう…ですね…こんなに静かなギルドは初めてです。」


受付に行き、サヤから話す。


「新しいパーティの申請をしたいのですが…」


すると、態度の悪い職員が出てきた。


「あんたら落ちこぼれ剣聖と、その荷物持ち?昨日は何のイカサマしたのかしらねぇが…帰った帰った。」


「あれはサヤの実力だ。それと、パーティの申請だけでいい。早くしてくれ。」


「だーかーらー…おたくらは評判が地の底なの。そんな連中がこの街でパーティ組むなんて恥ずかしいわけよ。だから無理だね!早く帰れ!」


なんと、パーティを組むこと自体を拒否されてしまった。


「おい、おかしいだろ。なぜそこまで俺たちの評判が悪い?マリケスが嘘を吐いてたのは事実だろ。」


「そのマリケスさんがねぇ…君らが使えないから追放するって言ったわけ。マリケスさんの信頼はデカイ。それ故だよ。俺たちに何言っても無駄無駄。」


「その信頼できるマリケスさんが、嘘を吐き続けてたのは知らないんですか?魔物は全て、私かヒルダさんが倒していましたよ?」


サヤがそう言うと、ギルドの全員が嘲笑った。


「あんな一夜のイカサマで全部変わると思ってんのか?笑えるぜ。」


どうやら昨日の件はイカサマで通されているらしい。

アルバートも居たというのに、誰も信じていない。


「はぁ…わかりました…別の街へ行け。そういうことでしょう?レド、行きましょう。」


ギルドを出ようとすると…


「じゃあな~へっぽこ剣聖~!」


「お前が何を…!」


「レド、抑えてください。こんな人達相手にする価値も無いです。」


二人は笑われながら、ギルドを出た。


「くそ…あいつら何も知らないくせに…!」


「レド、ごめんなさい…私が啖呵切ったせいで、この街に居場所が…」


「俺たちをわかってくれない奴らだらけの街に用はない。…アルバートたちだけだったな…わかってくれたのは…」


「あ、アルバートさんにお礼言いに行きましょうよ!お別れってこともありますし…」


サヤはアルバートが商会長であることを知らない。

自分たちが行けば商会の印象が悪くなると思い、レドはこう言った。


「いや、アルバートには昨日礼を言った。気にするなとも言ってたし、いいんじゃないか?あと…アルバートは商会長だぞ。」


「え!?そうなんですか!?それはちょっと行きづらいですね…でも商会を運営しているのであれば、また会えるかもしれませんしね!」


二人は話しながら次の街への道に着いた…

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