第8話 断片
勇者パーティを追放された二人は次の街への旅路についた。
「えーと…次の街は…」
「ここが現在地だから…右手の方にあるか?」
地図を見ながら、ルートを模索する。
「そうですね!あっちに行きましょう。」
二人が進んでいると…
「待ってください…この先、ゴブリンが居ます…!」
サヤがモンスターを検知した。
「あ…サヤ、俺も闘うよ。」
「え!?駄目ですよ…レドが怪我したら…それに丸腰じゃないですか。」
「サヤの短剣を借りてってのも駄目か?」
サヤは刀とは別に短剣を常備している。何かがあったときのためだ。
「…私が指南しますから、今は!待ってください。」
「ありがとう。悪いけど、今回はお願いするよ…」
警戒しながら、ゴブリンに近づく…
茂みから飛び出して不意を突き、首を跳ねる。
「よし、魔石を取って…完了ですね!」
「…本当に見事な剣技だな。どうやって習得したんだ?」
「日々鍛練ですね。それに尽きます。」
すると、レドはサヤに帰り血がついているのを見つけた。
「サヤ、顔に帰り血が…拭くから動かないでくれ。」
頬についた帰り血を拭うと…
サヤの頭の中に何かが流れる。
………………………
「俺の前で泣かないでくれ…君の痛みは、俺の痛みでもあるんだよ。」
「だって…レド様…あと一年しか生きられないと、お医者様に宣告なされて…!」
「俺は大丈夫だよ。君がいてくれるなら…ほら、愛してるから…」
優しく、レドからキスをする。
「うぅ…レド様ぁ…私考えたくありません…あなたがいない未来など…」
「それ以上言わないでくれ。抱きしめたくなるだろ?そら!」
「きゃっ…レド様!お身体に障ります!降ろしてくださいませ!」
…………………………
「きゃぁあああ!レド!何し…え…?」
「サヤ、どうした…?」
「頭の中に何か…流れ込んできて…!」
混乱するサヤをなだめる。
「もしかして、記憶が戻ったんじゃないか?今回はその一部を思い出したってことで…」
「私…レドとあんなにイチャ…もういいです!大丈夫です!」
なんとか頭から振り払おうとするが、離れない。
レドは嬉しかった。昔のことを少しでも思い出してくれたなら。と…
「なぁ、どんな思い出だった?」
「もう!言いたくないですよ!」
その後も話しながら歩いていたら、暗くなってきてしまった。
「今日はここで野宿ですね。道先は長いです。しっかり休んでおきましょう!」
「見張りは俺がやるよ。スキルもあるしな。」
「えっ、駄目ですよ。私の方が慣れてますし…じゃあ交代ならどうでしょうか?」
サヤの意見で合致した。
「私が先に見張りますから、眠ってていいですよ!」
「ありがとう。しばらくしたら起きるから…」
そう言って、レドは少しの眠りについた…
一方、サヤは悶々としていた。
(何でレドが私にキキキ…キスを?夫婦だからってのはあるでしょうけど、ラブラブすぎませんか!?)
頭を抱えて、もぞもぞしている。
(レド…一年しか生きられないって言われたのに、なぜ悲しまなかったのでしょう…?)
レドの方を見る。
近づいて、様子を伺ってみる。
(レドと…キスしたんですよね…?実感が湧きません…)
レドの顔にもっと近づく…
(…改めて見ると、レドっていい顔してますね…イケメンさんで…って何を考えているのですか!?駄目です駄目です!煩悩退散!)
しばらくレドの顔を眺めていると…
「…うーん…起きた…って何でそんなに近くにいるんだ?」
「え、ええと…観察です!(?)私寝ますから、退いてください!」
「そんなに眠かったのか?言ってくれればよかったのに…」
超絶鈍感男である。
「盗賊とかもいるからな…気を付けないと…」
と言いながらも、ついサヤが気になる。
寝ているサヤに近づき、顔を見つめる。
「本当に…君は何も変わってないね…」
少し寂しげにそう言った後…
「何があろうと、守ってみせる…愛してるよ、サヤ…」
頭を撫でて、見張りに戻った。
(今のなんですか!?愛してるって…ほわぁぁぁぁあ!前世の私に言ったんですよね?ね?)
サヤは起きていた。
その日、サヤは一睡もできなかった。
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