第9話 従者と主
「おへよぅごぜいやすぅ…」
昨日の件で眠れなかったサヤは、かなりヤバイ状態である。
「大丈夫か…?今日は進まずに訓練って話だったが…」
「そうだね…れほのけん練…」
パタッ…
サヤはあまりの眠気に倒れてしまった。
「寝てる…相当だったんだな…今日はここで過ごすか。自分で訓練しよう。腕立てとか、基礎からやるか。」
体力作りから始めることにして、サヤは寝かすことに。
早速トレーニングを始めたが…何かおかしい。
「あれ…俺と身体って癌だったよな…?」
服を脱いで自分の肉体を見ると…
癌だったはずの肉体が、かなり細マッチョというか…仕上がっている。
「嘘だろ…?さすがにここまでの肉体の時代はなかった…はず。女神が哀れんで与えてくれたのか?」
試しに、近くの木でバク宙してみることに。
トンッ
「マジかよ…簡単にできる…!」
この世界の基準はわからないが、前世でいうアスリート並みの体力があるようだ。
「これならサヤを守れるはずだ!」
喜んでいるのも束の間、ゴブリン三体がこちらに向かってきていた。
サヤはまだ眠っているため、服を着てゴブリンに備える。
「スキルも使いながら闘うか…」
ゴブリンが間合いに入った瞬間、蹴りを入れた。
それは、ゴブリンが二メートル先の木に直撃するほど、強い蹴りだった。
「OK…あとは二匹!」
蹴りを入れた反動の際は、スキルを使い攻撃を防ぐ。
攻撃を跳ね返した瞬間にストレートをかまし、二匹目を倒す。
すると、ゴブリンは狙いを眠っているサヤに変えた。
「妻に近づくな…!」
ゴブリンを持ち上げ、木に投げつけた。
首の骨が折れ、ゴブリンは死んだ。
魔石の取り方がわからないため、サヤを起こす。
「サヤ…起きて…ゴブリンの…」
「え!?ゴブリン!?私が殺るので…」
「いや、危険は無いんだ。俺が倒したから。」
サヤは嘘だろうという顔をする。
「レド、見栄はっちゃダメですよ?」
「本当だよ!これ見てくれ…」
レドは後ろを見せる。
木に激突したのと、ストレートで倒れた奴、木に投げつけた奴。
三匹を見せた。
「え…?こんなのって…あり得ない…戦いの基礎は!?」
「ゆっくりだったから、色々考えられた。そのおかげだよ。そうじゃなかったら、スキルに頼るしかなかった。使ったが…」
すると、サヤが抱きついて…
「レドのバカ…死ぬかもしれなかったんですよ!?」
「サヤ、寝てたからさ。疲れてたんだろ?」
「でも…私はあなたの妻なんです!共に闘わせてください!」
予想外の言葉にレドも困惑する。
「え?」
「あ…」
顔を赤くする二人。
急いでレドから離れて、自分が言ったことを考えるサヤ。
いきなり妻と言われ、かなり混乱しているレド。
「…記憶戻ったとか…あるか?」
「違います…反射で出たというか…変な意味は無…」
「俺を…そう思ってくれたのか…?」
こくりと頷く。
「レドは…優しくて、なよなよしている私を守ってくれる…前世の記憶がなくても、そうしてくれて…そういうとこが好きなんです…」
「好きって…男としてか?それとも人間として…」
「一人の男性として…好きです…変ですよね?会ったばかりなのに、こんなこと思うなんて…」
顔を隠すサヤを見て、レドはあることを思い出した。
まだ子供の頃、二人は従者と主の関係だった。
レドはいい家の生まれで、五歳の時にサヤが従者となった。
二人は従者と主というより、ずっと恋人のような間柄だった
…………………………………
これは出会った時のお話…
「レド、この子があなたの従者よ…大切にしておやり…」
「え…えと…レド様、これからよろしくお願いします…サヤです…」
「ほら、レドも挨拶…て…レド…?」
この瞬間から、レドはサヤに恋をしていた。
「あっ…お願いします…サヤさん…」
挨拶が終わってすぐに、レドはサヤに話がしたいと言って、呼んだ。
「レ…レド様…何のお申し付けでしょうか?」
「その…一生俺以外の者に支えないと誓ってくれませんか…?」
「へ…?私はレド様を一生そばで支える者として選ばれたのです。」
「ち…違います!俺以外の男性を見ないでください。ということです…」
いまいちピンと来ていないサヤに、レドは言った。
「俺はサヤさんに一目惚れしました…結婚してください!」
「わ…私は従者です!そんなことできな…」
「嫌ですか…?」
「そういうことじゃ…私もレド様のこと好きです…でも、本当はこんなすぐに思うことではありませんし…変なんです…」
サヤに嫌われていないということを知り、心の底から喜んだ。
サヤの手を取り、こう言った。
「では…俺と共に過ごして、それから決めてください!俺はサヤさんのことずっと愛してるので!」
「愛…!?そんな…早い…」
顔を赤くするサヤを、レドはとても愛おしく思った。
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