第6話 告白

「どうしてなんだ…!」


妻の記憶が戻ったと思いきや魔王の番として選ばれていた。これほどまでに残酷な運命はないだろう…


「レ…レド、どうしたのですか!?やっぱり迫ったのが嫌で…」


「違うよ…君が…思い出してくれたのに…魔王が言ったんだ…」


「魔王って、私たちの目標じゃないですか!それ以外に何か…?」


「君は魂の…ぐっ…」


サヤに伝えようとすると、首に鎖がかけられたように喋れなくなった。


「書いて伝えるよ…!」


紙に書こうとしても、腕が動かない。


「動け!頼むから!」


「レド、もういいです!」


レドを後ろから抱きしめる。


「伝えようとしているあなたは…すごく辛そうなんです…そんな姿、私は見たくありません。いつか言える時が来たら話す、じゃ駄目ですか…?」


レドを絆すように語りかける姿に負け…


「今すぐ伝えたいけど…そうするよ…ごめん…」


伝えたい気持ちを抑え、サヤの言葉に耳を貸した。


「おそらくこれは呪いとか、そういった類いのものだと思われます。今でいう、伝えることを封じられるとかです。」


「君の身に危険が及ぶかもしれないことなんだ…そうなったら…恐い…」


抱きしめてくれているサヤの手に触れる。


「…レドって、時々私のことをずっと前から知っている様なこと言いますよね。不思議です…」


前世の記憶はなくても、サヤはレドと居ることを心地よく思っていた。


「あ…俺は床で寝るから、サヤはベッドで寝てくれ。」


「え、そんなの悪いです!一緒に寝ましょうよ!」


言葉の意味をわかっているのだろうか…


「いや…付き合ってもいない男女が同じベッドで寝るのは…」


「あっ…」


サヤも言葉の意味に気づいた様だ。

これでは寝取ってくださいと言わんばかりである。


「ご厚意に感謝するよ…その…二人ともそっぽ向いてたら大丈夫じゃないか?」


「ソ…ソウデスネ…」


苦肉の策を提案し、一応二人とも同じベッドで寝ることにした。

しかも部屋が完全にそういう部屋なので尚更気まずい…

二人で、少し広めのベッドに横になる。


緊張感で眠れない中…サヤが口を開いた。


「レ…レド…?最初会ったとき、私のことを妻…と言っていましたよね。あれは…なぜですか?」


「あ…あれは…」


返答に困る。真実を伝えても信じてもらえないだろう…とも思うし、嘘だと思われても愛を伝えたい。という思いもあった。


「…前世って信じるか?」


「急ですね…私は輪廻転生、あると思いますよ。」


「俺には前世の記憶がある。と言ったら信じてくれるか?」


急いでレドの方を向き、尋ねる。


「あるんですか!?どんな人生で…」


「君と結婚した人生だったよ。」


「え……?」


後ろを向いたまま、レドは話し続ける。


「君と幸せに…愛し合って暮らしていたとき、俺は病気になった。死を宣告されたよ。」


「そこから…どうやってこの世界に来たんですか?」


「君と心中した。俺はこの世界の女神に呼ばれてやって来た転移者?だよ。君とまた結ばれるために…俺は生きている…」


驚愕の告白に、サヤは言葉を失う。


「…本当なんですか…?」


「信じても、信じなくてもいい。それでも、君を愛していることは絶対に変わらない…いつまでも、な…」


「辛い…人生でしたか…?」


「辛かったさ…でも、君がそばに居てくれる幸せの方が上だった。これだけは言える…幸せな人生だったよ。」


レドがどれだけ自分を想ってくれていたか。

記憶が無いことにどれだけ絶望したか。

計り知れない愛情に、涙が溢れた。


レドの寂しそうな背中にいてもたってもいられず、抱きついた。


「!? 信じなくてもいいって…」


「信じます…!でも、私には記憶が無い…あなたがどれだけ絶望したか、私にはわかりません。」


「………………」


「でも…これだけはわかるんです。私の魂が…あなたを覚えている。あなたの不器用な愛し方、ずっと向けてくれていた温かい好意、全てを覚えているんです…!」


レドもサヤを抱きしめる。


「ありがとうサヤ…もしも…もしもの話だが、君が記憶を取り戻したら、俺と一緒に居てくれると誓ってくれるか…?」


「私は魂の導くがままに、あなたと共に居ることを…誓います。」

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