第44話 依頼主
「その方々を捕まえるのは決定なんですが…どこにいるとかわかりますか?待ち合わせ場所とか…」
「それなら決まってる。王都近くの森…眠いだろうけど、辛抱しろよ。」
「俺、寝起きだから本気出せないな。剣聖に任せてやってもいいんだぞ?」
どや顔でサヤに仕事を押し付けようとするマリケス。
こいつにプライドというものはないのだろうか…
「倒せないの間違いだろ?」
「あぁ!?」
「そ…それじゃ、依頼主の所へ出発ってことネ!全員撲滅するヨ!」
「っと…その前に、あたしの子どもたちを迎えに行かないと!睡眠薬が塗ってあるクナイとかも用意してあるから、役に立つ。すぐそばにあるから。」
とりあえず、マレニアの魔道具たちを取りに行くことに。
クナイまで用意しているとは、さすが暗殺を依頼されただけはある様だ。
ひょっとしたら、マレニアは戦闘面でもかなりの実力者なのかもしれない。
小屋から出て、少し歩いたところにマレニアのリュックサックが置いてあった。
「ふぅ…これがないと、生きた心地がしないや。ほれ、あたしのかわいい子どもたち!無事だったか~?よ~しよしよし…」
そう言って、魔道具を撫でまくる。すると、マリケスがレドに耳打ちした。
「こいつ、大丈夫なのか…?」
「少しばかり、魔道具への愛が強いだけだ。と思いたい…作戦には乗り気だし、大丈夫だろう。」
気を取り直して、依頼主の所へ出発。
「マレニア!水が出るバケツのこと、教えてくれよ!仲がいい宿屋に卸してやりたいんだ。高く買い取るぜ?」
「それは作戦が終わってからにしてくれよ…あたしは逃げないからさ。国王様に処刑されちまうし。」
少し嬉しそうに、マレニアは答えた。
憧れの師匠に商売の話を持ちかけられ、ご満悦の様子。
「あれが世界中の宿屋に広がったら、とっても便利ですね~!」
「その分、宿代高くなるだろうけどな…王都の宿屋とか、とんでもないことになるんじゃないか?」
「ゲッ…それもそうですね…何でも便利になればいいという訳ではないと。」
サヤがげんなりしていると…
「安心しな。法外な値段はふっかけないよ。全国にこの技術を広めるために、あたしは作戦に乗ったんだ。」
強い意志を持った瞳で、そう言った。
「そもそも、法外な値段での取引は俺が許さんがな。」
「そうだったね、国王様。一生、あんたのお膝元で働く約束だよ。そろそろ約束の場所だ。静かにして…あたしが行く。」
サヤにクナイを手渡して、近くの茂みに誘導する。
全員が隠れ終わると、マレニアは開けた場所に移動した。
ランタンを取り出し、口笛を吹く。すると…
ガサガサッ
「依頼、終わったのか?」
離れた木の上から、何者かが話しかける。
「ここに来たってことは…そういうことだよ。報酬金は?」
「まだ確認してないから渡せない。小屋まで案内しろ。それで依頼完了だ。」
事実を確認するまでは達成じゃない。そう言いたげだ。
「わかった…ところで、あんたも好きだねえ。金が。」
「貴様こそ、言えた口じゃないだろう。この世は金さえあれば、何でも解決できる。お互い承知のはずだ。だから依頼を引き受けた。違うか?」
「あいにく、別の取引先が見つかったんでね!新しい国王陛下に仕えることになった。」
「何を言って…」
ピシュッ
男の首にクナイが突き刺さる。
「くそっ!? 謀りやがった…な…」
男は、そのまま木の上から落ちてしまった。
「さすが、最高級の即効睡眠薬だな。結構な値段したから、当然か。」
「こんな代物が世に出回ってるのか?恐ろしいな…」
「俺が国王になったら違法にするから安心しとけ。にしても…強すぎじゃねーか?」
恐る恐る、男の様子を伺うマリケス。
「スラムの奴らが作り、富裕層が安価で買い、高く売る。そういうサイクルができてるんだよ。」
話し合った後、男を拘束して門番に報告することにした。
六人は門に向かって、再び歩き出した…
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