第45話 顔パス
門へと歩いている途中…
「ジュディスがバレないようにしないとな。魔族だと気づかれれば、大変なことに…マリケス、顔パス行けるか?」
「俺は王太子だからな!もちろん行けるだろう…ていうか、こんな時だけ頼るなよ。」
「変装だと疑われたら困るので、いつも通りにお願いします!」
「ふんっ…そんなことわかっているさ。お前たちに従うのは癪だが、仕方ない。」
無事、門にたどり着き暗殺者を引き渡した。ここまではよかったのだが…
「いくらマリケス様と言えど、顔パスは無理っすよ~!もっと信頼ある人じゃないと駄目駄目!」
マリケスでは威厳が足りなかった様だ。
ここで、アルバートの出番。
「じゃあ俺ならどうだ?この街を拠点にする、アルバート商会の会長…アルバートとは俺のことよ!」
「いやいや…あのアルバート商会の会長が居るわけ…」
「ほい、身分証。」
アルバート商会で、高い位についているものしか持てないカードを見せた。
門番たちは目を丸くする。
大きな商会だと、こういったカードが発行されていることも多いのだ。
「ほ…本物だった!?どうぞ、お通りください…商会の推薦ということで、お連れの方もご自由に。」
ペコリと門番にお辞儀をして、門をくぐっていく。
「ん…?俺、あんたの顔知ってるよ!確か剣聖…だったか?」
「ご存知ですか?ありがとうございます!」
「いや~…すげぇ人たちが多いな。今日は何なんだ…ところで、この小さい子は?」
「誰が小さいって…!?」
慌ててジュディスの口をふさぎ、説明する。
「この子は…捨てられてたんだよ!さっきの男が誘拐したらしくて…」
「何!?この男、余罪がありそうだな…情報提供、感謝する。」
「ほら、行くぞ。」
文句言いたげなジュディスだったが、ほぼ引きずられる形で門をくぐった。
門をくぐり抜け、皆一安心。
「危なかったな…俺に感謝しろよ~?マリケス!ういうい。」
肘でマリケスをつつく。
「うるさいうるさい!俺だって信頼されてやる…!」
「キーッ!私は幼児体型じゃないノネ!」
二人が騒ぐため、一先ず落ち着かせる。
「ほら、落ち着けって。宿を探すぞ。アルバート、どこかいい宿はあるか?」
「俺のところなら安心安全だぜ!ガンツのおっさんの所に行こう。」
前にレドとサヤが泊まった宿に行くことにした。
もちろんあの部屋ではないが…
「マレニア、スラムはここから近いのか?」
「そんな遠くはないかな~。いつでも視察に来られるよ?国王様。」
「俺はこの国の王太子だ。スラムの場所くらい知ってる。政治なら、幼い頃に嫌というほどやらされたからな。」
その勉強が、今役立つことになったが。
こればっかりは、現国王に感謝しなければならない。
「よし、着いたぞ!おーい、ガンツのおっさん。頼みがあんだけど!」
アルバートが声をかけると、店の奥から人が出て来る。
すると、宿は一気に歓迎モード。
「またまたアルバートか!今度はどうしたんだ。ところで…この前の奴ら、くっついたか?」
「おかげさまでな~。ここに居るぞ!」
「ど…どうも…」
二人を見ると、ガンツはとても喜び…
「くーっ!前々から、誰かのキューピッドになってみたかったんだよ!一番デカイ部屋使ってくれ。ほら、鍵。」
「サンキュー。じゃあ失礼するぞっと…お前ら、入れ!」
まさかの夢を披露した後、鍵をくれた。
皆で部屋の中へ移動し、ベッドに座り込む。
「はぁ…今日は疲れたな~…こういう日はさっさと寝るに限るね!」
そう言うと、マレニアはベッドで眠ってしまった。
「俺も寝るぞ。王太子なるもの、早寝がつきものだからな。ふわぁ…」
そういうのを眠いだけと言うのだが…マリケスも眠りについた…その次にアルバートも。
ついには二人を覗く、全員が眠りについた。
「皆寝ちゃいましたね…私、目が冴えちゃって……レド?」
「………………………」
気づいたら、レドも横で眠っていた。
「ふふ…レドさん、かわいい…私も仮眠くらいは取らないと。」
レドの隣で、サヤも目を閉じた…
来世でも、君といられたら。 月島ノン @tukisimanon
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