第38話 内通者

「おお、良い作戦ではないか!我は乗ったぞ!ジュディスはどうだ?」


「あんな勇者が認めたこと、信じられないケド…姫様が言うなら本当ナノネ。私も乗ったヨ。それと…もう一回言ってくれるカ?」


「わかった。作戦は…………………だ。」


誰かスパイが居てもおかしくないため、レドはジュディスの耳元で作戦を伝えた。ジュディスは二回目で理解したようで、頷いている。


「わかったノネ!私は姫様たちについていけばイイ…よ~く理解したネ。」


「…まあ、追々説明するから大丈夫だ。ファーミラはここで待機していてくれ。怪我もあるしな。」


「うむ。了解したぞ!それと…ジュディスのこと、よろしく頼んだからな!」


レドはファーミラとグータッチした。

友というのは、あながち間違っていなかったのかもしれない。


「おっと…その前に、あの男の部屋を見せてくれないか?何か証拠がある可能性が…」


「もちろんだ!ジュディス、案内してやってくれ。」


「了解ネ。姫様、レド、こっちダヨ。」


ジュディスが案内してくれるようだ。

道中、三人が話しながら歩いている。


「ジュディスさん、もう姫様じゃなくてサヤでいいんですよ?あなたは王妃なんですし…」


「私にとっては永遠に姫様ネ。だからずっと姫様と呼ぶヨ!」


「ふふ…ありがとうございます…!」


しばらく話していると、部屋についたようだ。

ジュディスは振り向き、二人に忠告する。


「ここがあの男の部屋ネ。でも気を付けた方がいいヨ。あいつ、しょっちゅう実験とかしてたカラ。」


「べたべた触るのはやめておきます…」


三人は恐る恐る部屋に入る…


「わ…すごい散らかってますね…証拠は残っているのでしょうか…」


部屋は散乱していて、あちこちに紙切れやタオルが落ちている。


「男が隠した何かがあるはずだ。慌てて隠したのなら、散らかっているのも筋が通る。」


「探すノネ!」


不用意に触らないよう、注意しながら部屋を探索する…

紙切れには何度も書き直した様な痕のせいで、肝心の字はぐちゃぐちゃ。

この世界の文字、言葉は全て同じ。なので二人も読めるはずだが…


「読めないな…サヤ、そっちはどうだ?」


「こっちも読めません…ジュディスさんはどうですか?」


「唯一、読めそうなのを見つけたところダヨ。」


読めそうなものを発見したようだ。二人はジュディスの元へ移動する。


「どれどれ…『遠征で出向いた場所に人間が居た。なぜ魔族の国に?自殺行為だろう?そう尋ねてみると、魔王が国を捨てるつもりだと言った。それを伝えるために私はここへ来た。と…』うん、簡単な日記だな。続きは?」


「裏に続いてるネ…」


「私が読みますね!『すぐに牢に入れてやった。魔王様が国を捨てることはない。絶対に…しかし、男は言った。俺は魔王の秘密を知っている。あいつが人間と魔族の子供だと。…なぜ知っている?魔族しか知り得ることができない情報を…』内通者の存在、ですかね…」


ここで、日記は途切れていた。三人は考察する。

おそらく、内通者にそそのかされた様な主旨のことが書かれているのだろう。

そして男の心は揺らいでいき…最終的に、人間に取り込まれたと…


「この内通者が誰なのか。これが大事だよな…俺たちの暗殺とかを企てている可能性もある。」


「そうですね…私が魂の番として妻になろうと、そうでなかろうと、大丈夫な作戦を立てていたんでしょう。」


「例えば…妻になったら、サヤを連れ去ったとして戦争を起こす。そうならなかったとしたら、魔族の民からは信用がなくなり、国が衰退していく…って作戦とか。他にも色々あるな…」


「頭が壊れたネ!もう話さないでほしいノ!」


ジュディスの頭が限界を迎えたようだ。

三人はこのことをファーミラに報告するため、一度救護室に向かった。

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