第24話 それぞれの真実

「ねぇレド様…恋人はいらっしゃるのかしら~?」


「ちょっと、抜け駆けは駄目よ!私が話すんだから…」


レドは、村の若い女性エルフたちにモテモテである。

フレイザードを倒したことによって、またもや英雄扱いされているのだ。

そうなれば、肉食系の方々が黙っていないだろう…


「悪いが、俺には妻がいるんだ…彼女以外は愛さないよ。」


「え~、じゃあ愛人は?」


「お断りするよ。サヤのところに行くから、道をあけてくれないか?」


仕方なく、女性エルフたちは道をあける。

サヤも男性エルフたちに囲まれていた。


「サヤ!隊長が呼んでるから行くぞ。」


もちろん、サヤから男をひっぺがすための嘘である。


「あ、今行きます!皆さんすみません、呼ばれたので…」


「隊長待たせると面倒くさいから、早く行って戻ってきてね~!」


「姫様、なんで私はモテないネ?」


誰にも押し掛けられないため、目が点になっているジュディス。


「それは…本当にわかんないです…」


苦笑いしながらレドの元へ向かった。


「レド、行きましょう!」


「あー…その…隊長が呼んでるっていうのは嘘だ。君が男に絡まれてるのを見ていたくなくて…すまない。」


「え?…そうなら直接言ってくださいよぅ!レドったら!うぃうぃ~。」


肘でレドのことをつんつんする。

二人揃ってニヤけていて、幸せそうだ。


「そうだ。サヤ、改めて言いたいことがあって…」


「何ですか~?愛の告白だったりして?ふふ…」


「え…何でわかったんだ?愛してるって言うつもりだったんだが…」


サヤは顔を赤くする。

まさか的中するだなんて、思っていなかった。


「ちょっ…冗談はやめてくださいよ!笑えな…」


「俺は本気だよ!」


サヤの手を握り、真っ直ぐ瞳を見つめ、そう言った。


「レド…私もあなたを愛しています…でも、私には呪いがかかっているのでしょう?できないんじゃないですか…?」


「えっと…何がだ…?」


「えっちなことです…」


レドも顔を赤くする。

改めて愛を告白して、いきなりこの話題が出るとは誰も思わないだろう。

少しの沈黙の後、レドが口を開いた。


「…確かにできないかもな…けどその前に、愛の告白はOKでいいのか…?」


「もちろんですよ!断るわけないじゃないですか!」


二人は抱き合う。想いが実った瞬間だ。

レドは嬉しさのあまり涙腺が壊れたようで…


「よかった…断られると思ってて…」


「レド!泣かないでくださいよ…私もらい泣きしちゃいますー!」


二人がイチャイチャしてるのを、隊長とジュディスが並んで見ていた。


「姫様、本当に魔王様と結婚する気あるノ…?」


「邪魔をするでない!二人は永遠にあのままさ!ハッハッハ!」


豪快に笑う隊長の横で、ジュディスは疑問に思っていた。


(魔王様と結婚するから連れていくんダヨネ?でもあれじゃ、普通にカップルネ。本当に魔王様と結婚する気があるノカ…?)


ジュディスは、本気でサヤが魔王と結婚しに行くと信じている。

だから今の状態を黙認していたのだ。


しかし、二人が愛し合っているとなれば話は別になる…

レドは正真正銘の敵。というわけだ。


ジュディスは二人の元へ駆け寄り、尋ねた。


「姫様、本当に魔王様と結婚する気があるノカ?」


「…ジュディスさん、本当のことを話します。ごめんなさい…私たちは、魔王を倒しに行くんです。」


「ナ…ナンデ!?話が違うヨ!」


二人は真実を話すことにした。


「ジュディス…俺たちは転生者なんだ。この世界の住人じゃない。」


「転生シャ…!?なおさら訳がわからないネ!」


「本当なんだ。俺たちは夫婦で…つまり、サヤと魔王を結婚させる気はない。騙していて悪かった…」


「ごめんなさい…でも、私たちは魔王を討伐する以外に道があると思っているんです!もっと平和的で…」


ジュディスは頭が真っ白。

自分の敬愛する主君を倒すなど、許すことはできない。


「ナゼ…魔王様を討伐しに行くのデスカ…?」


「人間の国は…強い職業の者を集め、魔王を討伐するパーティを組みました。魔王を倒しに行くのは、私も不本意です。しかし国に命令された以上…」


「逆らえないってコトネ……だから人間は嫌いナノダ!王であろうと、一人の民であろうと、命の価値は同じネ…!魔王様はそう言ってくださったノダ…」


魔王は人間の王なんかより、よっぽど民を思う良き王であることを、二人は知った。


お互いが真実を知ったことで変わった関係。三人の関係はどうなってしまうのか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る