第25話 ファーミラ

「…ジュディスさん、もう少し魔王のことを教えていただけませんか?」


「魔王様は、人間と魔族のハーフなノ。それのせいで、最初は誰しもが王座に着くことを拒んでいたネ。でも魔王様がどんなお方かを知ると、皆大好きにナッタ…」



……………………………

まだ、ファーミラが魔王になる前のお話…


「ジュディス!頼みがあるのだが…」


「ファーミラ様…私は四天王ナノ!魔王様以外には従わないネ!」


「違う違う、聞いてくれ!そなたの父上の病を治す薬草、取ってきたんだ!」


ジュディスの父は重い病を患っている。それのせいで四天王を退いたのだ。

そして、薬草は人間の国周辺にしか生えない。その意味は…


「人間の国はとっても危険ネ!魔族が近づこうものなら、殺されル…!」


「ハハハ!確かに、死にかけたな!でも手にいれたのだ。これをそなたに…」


そう言って、ジュディスに薬草を手渡した。


(なんで、ファーミラ様はここまでしてくれるノ…?私は、ファーミラ様には従わないンダヨ?)


その場を去ろうとするファーミラを止める。


「ファーミラ様、なんでこんな代物を私に渡すノネ!?」


「そなたの笑顔が見たかったからさ!そなたも、国を思う民の一人。幸福にするのは当然だろう?」


ポタッ…


ジュディスは涙を流していた。

ファーミラの深い優しさ…いや、愛情に感銘を受けたのだ。

薬草を片手に、ジュディスは膝をつく。


「次代の王ファーミラ様、よく聞くネ!私は、あなた様に永遠に仕えることを誓うヨ!これは絶対ナノネ!」


「…ありがとう、ジュディス。そなたの思い、しかと受け止めた!我はいい王になる。必ずな!その暁には、右腕として我の隣にいてくれ…!」

……………………………


「王になる前から、民を思う聡明なお方だったのですね…ジュディスさん、しばし時間をくれませんか?」


「ナンデ…?」


「私たちは、なおさら魔王を倒したいと思わなくなってきました。でも、人間の国には魔王を倒す使命を持った勇者がいる…奴らを止めねばなりません。」


「だが、勇者は話が通じるタイプじゃない。そいつを止めることが第一だ。魔王を倒されたらすべてが終わる。それは俺たちも、魔族も同じだ。」


マリケスを止めることを最優先に考えた二人。

それは話を聞いたジュディスも同じだった。


「ユウシャ…姫様を追い出したくそ野郎に、魔王様を倒せるとは思いませんが、危険は早めに取り除きマショウ!」


「しかし、勇者が今どこにいるかはわからん。周辺の街に聞き込みにいかないとだが…ジュディスは魔族だ。堂々と入ることは…」


「できないネ…でも、それなら私は魔族の国に戻って、魔王様にとりあってみることができるネ。」


作戦は一致した。

レドとサヤが勇者を止め、ジュディスが魔王に交渉する。

交渉の内容は…


「ではジュディス、魔王にこう伝えてくれ。『俺たちは、平和的解決を求めている。貴公の命を狙う勇者を止める代わりに、話を聞いてくれ。』と…」


「了解ネ!!では、私は魔族の国に戻るから勇者を頼んダヨ!」


そう言うと、ジュディスは魔族の国へ向かって行った…が、レドがあることに気づく。


「あいつ転送魔法とか使えないのか…?魔法のエキスパートなんだろ?」


「あ…多分使えますね…まぁ、知らぬが仏と言うぐらいですし、黙っておきましょう!」


「そうだな。俺たちは俺たちで、マリケスを探さないといけない…隊長に似たものがいなかったか聞いてみよう。」


二人は隊長の元へと向かった…

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