第31話 誘惑

「それで、その魔法使いはどこにいるネ?」


「水晶によれば、ラグナロク近くの森を歩いているらしい。街で待っていればいずれ来るだろう。」


「了解ネ!姫様…魔王様…大丈夫カナ?」



その頃…サヤたちはというと…


「う…ファーミラ様…?」


「サヤ殿…起きたか。頼むから聞いてくれ!そなたは魅力魔法にかかっていて…」


「ファーミラ様、私…あなた様との子どもが欲しいのです…」


(まずい…また流される前に逃げなければ…!)


魔王は猛ダッシュで城内を逃げ回る。

しかし、サヤは剣聖…身体能力はとんでもなく高い。


「ファーミラ様!待ってください~!」


「誘惑に負けるな!我は魔王なり…!」


魔王ファーミラが耐えている間、レドたちは急いで魔法使いを探していた。


「まだ街にはいないのか?騒がしい雰囲気は無いな…」


レドは街の中を走り回り、騒ぎが起こっている場所がないか模索している。

ジュディスは街に入れないため、森を。


「どこにもいないノネ~!本当にここにいるノカ…?」


ジュディスは水晶を見ていないため、場所の検討がついていない。


「この際、森を焼き払うカ…?でも、姫様はそんなこと駄目だとおっしゃるダロウシ…」


物騒なことを考えながら、高所で辺りを見回していると…

街に向かう魔族らしき男の姿が見えた。


「居たのネ!」


急いで男がいる場所に走る。

目の前に走り込み、叫んだ。


「この先は人間の街ネ!魔族が入ったら、双方が危険に晒されるヨ!」


「フフフ…そんなことわかっているさ。なんたって、僕はこの街を滅ぼすために来たんだから!全ては魔王様のために…!」


「魔王様はそんなこと望んでないヨ!今すぐやめるノネ!」


男はまったく聞いていない様子。


「魂の番を惚れさせてやったのも、僕なのにねぇ?魔王様に懐かなそうだったから、魅了魔法をかけてやったんだけど…うまくいったかな?」


「それのことで話しにキタ…あの魔法を解くノネ!魔王様からの命令ダ!」


そこへ…


「ジュディス、そいつが例の魔法使いか?」


レドが駆けつけた。


「そうだネ…基本的に、魔法は一つ使っていたらもう一つ唱えることはできなイ。こいつに魔法を使わせれば、姫様の魔法は解けるヨ!」


「了解した。接近戦は任せてくれ…!」


「僕に闘う気はないって…街を滅ぼす時に、魔法を使うんだよ?それまでは死んでも使わないね。」


こうしている間にも、時間はどんどん過ぎていく…

ついに、ファーミラはサヤに捕まってしまった。


「ファーミラ様…捕まえましたよ?もう逃げられませんね…」


「サヤ殿、我はそなたの手料理が食べたくなってきたな!?作ってくれないか!?」


「後にしてください…」


喰われる一歩手前というところ…

相当まずい状況だ。


「早くサヤの魔法を解け!そもそも、なぜこんなことを…」


「魔王様に従順なだけだよぉ?魂の番と夫婦になれば、民からの支持率も上がる。後世に残す者が生まれれば、民も安心するだろう。間違ってるかな?」


「レド!そいつから離れるネ!」


ジュディスが叫んだ。レドは慌てて男から離れる。


「操術魔法…!くらうノネ!」


レドに気を取られているうちに、ジュディスが操術魔法を準備していたのだ。

男は避けようとしたが、間に合わなかった。


「ぐっ…動けない…!」


「暴れるんじゃないヨ。腕をへし折ることだってできるネ…」


ジュディスは神経を研ぎ澄ませ、魔法に集中する。

男から魔力を引き出し、魔法を唱えさせた。


「駄目だ!魔王様ぁぁぁ!!」


男は叫びながら、空に火魔法を放った。

このことで、サヤの魅了魔法は解かれ…


「サヤ殿…!目を覚ましてくれ!!」


「ファーミラ…さん!?私何で…上にまたがって…?」


服がはだけている自分を見て、叫び声をあげる。


「きゃぁぁぁぁぁああ!?」


「サヤ殿!落ち着くのだ…そなたは魅了魔法をかけられていて、それで我に迫って…」


「ご…ごめんなさい…叫び声あげちゃって…」


「い…いいのだ。それより、退いてくれないか…?」


サヤは慌ててファーミラから離れ、服を直した。


なんとか、ファーミラが襲われるのを阻止できた。

今後のことを考えながら、レドは男を取り押さえ、転送魔法で城に戻った…

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