第32話 裏切り

「サヤ…無事でいてくれ…!」


「姫様なら大丈夫ネ。魔王様が負けるわけないノ。」


少し心配しながら、魔王城への転送魔法の中に入った。

男は呆然としていて、暴れることもなくずっと何かを呟いている。


「こんなはずじゃなかった…魔王様…申し訳ございませ…」


「懺悔するなら、魔王様の前でするんダネ!」


「お前がしたことは、許されない…!俺の妻に…魔王の番に手を出したんだからな…」


城へたどり着き、ファーミラとサヤを探す。

しばらく、男を引きずりながら歩いていると…


「レド!私は大丈夫です!で…その魔族の男性が犯人なんですか?」


サヤが走って来た。


「ああ、そうだ。ファーミラに突きだして、罪を与えてもらうつもりだ。」


「魔王様に、キツく言っておくからナ!お前の処罰を重くするよう二!」


「うぅ…魔王様…」


男は廃人のようにうなだれている。精神状態がよくないようだ。


「ジュディス!無事であったか!」


そこへ魔王も駆けつけ、いよいよ男の処罰が決まることになった。

男を玉座の間へ連れて行き、拘束する。

魔王は玉座に座り、ジュディスが男を取り押さえる。


「…そなたには世話になったものだ。我が幼き頃からそばで仕え…そんなお前がなぜ、こんなことを犯したのだ?」


「魔王様…私はただ…国を豊かにしたかっただけで…」


バァンッ


魔王は拳を椅子に叩きつけ、宣言した。


「我が望む国は…民が豊かに暮らし、幸せであることはもちろん。我に仕えている全員もまた、幸せであることだ!貴公のやり方は、民を裏切ることと同義である…!頭を冷やし、もう一度…我が望む国を考えてくれ。」


「………………」


「よって、貴公の処罰はしばらくの間城内の部屋で頭を冷やすことだ。そなたも国を思う一人。もう一度、良い道を探してほしい。」


男は涙を流し、口を開いた。


「魔王様…あなたは…」


キィンッ


「本当に…ぬるいお方だ!」


短剣を片手に魔王に斬りかかった。

魔王はなんとか防いだが…


「炎魔法…極滅波イノセント!!」


「なっ…!?」


「ファーミラ!避けろ!!」


レドの言葉は届かず…放たれた炎魔法は魔王に激突した。


「フ…ハハハハハ!!幼い頃からいい人を植え付けるのは大変だったなぁ。こんなぬるい奴が魔王だなんて…吐き気がするよ!」


「魔王様の寛大な許しヲ…!お前だけは許さナイ!!」


「今度は頭に花が咲いたポンコツ四天王。僕の敵じゃないね。」


男から次々と魔法が放たれる。

レドたちもジュディスに加勢し、共に闘う。


「私とレドは接近します!レド、スキルで防御を!」


「了解!」


サヤたちは接近し、ジュディスが魔法を放つ陣形を取った。


「いくら魔法がうまかろうが、接近すれば弱い…なんて思わないでくれよ!」


男は魔法を唱えながら、短剣で反撃した。

それをレドのスキルで防ぎながら、サヤのスキルを使う。


「抜刀…居合い斬り…!!」


「剣聖のスキル…厄介だね。剣聖から殺そうかな?」


男は余裕の表情。魔王は倒れたまま。

サヤのスキルが発動する寸前に、レドはスキルを解除した。


ズバッ


男の体を斜めに斬りつけた。男は血を吐く。


しかし…すぐさま男の傷が癒えていく。


「!?」


「遅延性のヒール、かけといてよかったな~。もらったぞ、剣聖!」


男はサヤに反撃した。

心臓部に狙いを定め、短剣を突き刺そうとした…


だが、短剣は別の者に刺さった。


「ぐっ…!」


サヤを庇い、レドが刺されたのだ。


「レド!!」


「揃いも揃って、甘ちゃんばっ…」


男がレドに止めを刺そうとしたとき…


「準備は整ったネ!即死魔法…死神の吐息デスイーター、喰らうネ!」


ジュディスの即死魔法が男にヒットした。

男は倒れ、床に血が溢れる。


「ジュディスさん!ファーミラさんの容態を確認してください!」


「わかったネ…魔王様、今回復するノネ…!」


「うっ…サヤ…?」


「…傷が深い…」


レドの傷は、心臓の直前まで達していて…出血が酷かった。

もう助からないかもしれない…そう思った時…


「サヤ…城の外に…連れていってくれ…」


「駄目ですよ!こんな状態で動いたら…」


「見せたいものがあるんだ…脳内に…浮かんできたものが…」


「…どこですか?連れて行くので、教えてください…」


レドは城の後ろを指さした。

肩を貸して、一緒に歩いて向かう。


「ジュディスさん、私はレドを連れて外に行きます。」


「わかったノネ…姫様、スミマセン…私が回復魔法をもっと勉強してイレバ…」


「いいえ…お気遣いありがとうございます…ファーミラさんをお願い致します…」


二人は暗い道を歩き続ける…

レドが通ったあとは、血の痕跡が。


「サヤ…ありがとう…」


「…別れみたいに言わないでください…」


「…すまんな……もうそろそろのはずだ…脳に響く声が正しければだが…」


「直感を信じましょう…今は…」


そして、二人がたどり着いた場所とは…

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