第33話 別れ

「これは…何ですか…?見たことのない植物です…でも…綺麗…」


「…桜だよ…前世で、俺が君にプロポーズした場所…だ…」


ドサッ…


レドは地面に倒れ込んだ。


「レド…!死なないでください!私一人じゃ…もう生きられません…!」


泣いて乞うサヤに、レドは頼みごとをした。


「最後に一つ…頼みがあるんだ…」


「何でも聞きますよ…あなたの願いならば…!」


「変態だと思うかもしれないが…膝枕してくれないか…?そうしたら、落ち着いて逝けそうなんだ…」


サヤは涙を拭って、レドの頭を膝に乗せた。

レドは微笑んでいる。


「ありがとう…もうそろそろだ…」


「レド…私からもお願いがあります…キスをさせてください。最初で最後のキスを…」


「ああ…もちろんだよ…」


徐々に冷たくなってきているレドの手を握り…

二人はキスをした。

その時間は、永遠にも、そして短くも感じられる一時だった。


「愛してるよ…」


「私も…ずっとずっと…愛しています…」


サヤの頬を撫で…レドは安らかな顔で、息を引き取った…


「レド…私は永遠に、あなたと共にいます…」


冷たくなったレドを抱きしめて、そう呟いた。

サヤは泣き叫んだ。大事な人を失う痛みは、こうも重いものかと。

長い時間泣き続け、涙が枯れた頃…サヤはふと思った。


「せめて、思い出のつまった桜の木の麓で…安らかに眠ってほしい…」


レドを桜の木の麓まで連れて行き、一緒に寝転んだ。


「生きている時に…こうしていられたらよかったのにな…」


「まだ遅くはありませんよ。」


「…誰ですか…?」

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