第20話 人間も魔族も

「ニンゲン共…貴様らの処罰は警備隊長が決める。それまで檻に入ってろ!」


ガシャアンッ…


三人は雑に牢獄へと押し込まれた。

レドの足には矢が刺さったまま。サヤがそれを抜こうと試みる。


「レド…さんにーいちで抜きますので、覚悟してください…!」


「わかった…ありがとう…」


「さん…にー…いち!!」


ブシュッ


足から血が吹き出した。


「痛っっ…!…ぐっ…サヤ、ありがとな…ジュディス、回復系の魔法使えないか?」


「私の魔法は姫様のためだけにあるネ。それを違えれば、私は魔王様の部下じゃなくなるネ。」


「ジュディス!お願いします…レドの痛みを取ってくれませんか…?」


サヤの涙を見て、ジュディスは考え込む。


「私は魔王様のタメニ…でも姫様もダイジ…姫様が心変わりしてはコマル…よし、治しマス!」


相変わらずの調子だが、今回ばかりは助かった。

レドの足の近くに手を掲げ、魔法を使う。


「これぐらいの傷なら、ヒールで十分ネ…!」


暖かい光が、レドの足を包み込む。

サヤはジュディスに頭を下げる。


「ジュディスさん…本当にありがとうございます…!」


「姫サマ!頭を上げてくださいネ!姫様にそんなことをされる身分デハ…」


「いいえ、身分など関係無しにあなたは私の大切な人の傷を癒してくれた…もうなんと言ったらいいか…」


頭を下げるサヤを止めるジュディスだが、内心支えている主人の妻に感謝されて嬉しく思っていた。

レドもジュディスに感謝を述べる。


「ジュディス、ありがとう…でも、何で助けてくれたんだ?」


「だって、姫様が心変わりしたら困りマス。いずれ魔王様の所へ向かうのでしょう?」


二人は黙る。行くと言っても、魔王を倒しにということをジュディスはよく理解できていない。

助けてくれたジュディスの上司にあたる魔王を殺すのは、少し躊躇うものがあった。


「魔王を説得できないのでしょうか…?私を諦めて、人間の国にも関与しないと約束してくれれば丸く収まるのですが…」


「魔王様は姫様にベタ惚れネ。モニターで姫様を見たときは凄かったンダヨ。ファーミラ家もこれで安泰だ!とか叫んでマシタ。」


聞いてもいない情報を勝手に話してくれるので、サヤたちとしては楽だが…

なんだか魔王が気の毒である。

おそらく、今頃くしゃみをしているであろう…


「ジュディスさん、魔王はどんな方ですか?」


「魔王様は孤高でアラレルネ。そしてお優しいンデス。魔族たちは皆、魔王様を支持してイマス。一部、人間を庇護するような連中もイマスガ…」


「私たちの国と同じなんですね。魔族を支持する人々もいて…しかし、人間の国の王太子の一人は最低です。私たちをパーティから追放したんですよ。」


ジュディスは驚きを隠せないという表情だ。


「剣聖である姫様を追放するなんて、よっぽど馬鹿ナンデスネ…そいつを見つけ出して、暗殺しまショウカ?」


ジュディスにまで馬鹿と言われるのも頷ける野郎だが、少し気の毒。

暗殺まで持ちかけられて…(笑)


「暗殺する価値もない野郎ですのでいいですよ。それより…私たちの処罰を決めるのが遅いですね…何が起こっているのでしょうか?」


すると…


「おい、ニンゲン共!貴様らの処罰が決まった。出てこい。」


三人は村の広場に連れていかれた。

たくさんのエルフたちがいたが、なぜか緊張しているような表情だった。


「ニンゲン共は森の外に逃がすことになった。我々の寛大な処罰に感謝するがいい。」


「待ってください!そもそも、なぜ私たちを捕まえたんですか?世界樹に近づくことは違法ではないはずです!」


「我々にも事情があるのだ。…世界樹に危機が迫っている。それを阻止するため、どんな者だろうと通さないと村で決めたのだ。」


世界樹に危機が…?一体何が起こっているのだろうか…

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