第21話 世界樹の危機

「世界樹に…危機…?詳しく教えてくれないか?」


「汚らわしいニンゲン共に教えるものか!どうせ魔獣に怯えて、逃げることしかできぬのだからな!」


気づかぬうちに話しているが…魔獣とは一体何なのだろうか?


「こんなときにすまないが…サヤ、魔獣って何だ?」


「魔獣は…この世界の裏側に存在すると言われている'邪神'に支えるもの。簡単に言えば、世界を滅ぼそうとする奴ら。です…」


「それが現れたと?世界の危機じゃないか…なぜ、この村のエルフは助けを求めないんだ?」


エルフは手に持つ剣をレドの横に振り下ろす。


「ニンゲンの力など…借りるものか!!どうせこの事態が終われば、また我らを奴隷として売りさばく気だろう!?」


「前にも…あったんですか?そんな酷いことが…」


「我らはニンゲンの何倍も長く生きる…それを狙ったニンゲン共は、我らを奴隷として売るために捕らえ…傷つけ…虐げ…やがて我らは逃げ出したが、今でも…奴隷の刻印は残っている。」


二人は言葉が出ない。

そんなにも、酷いことを人間たちが行ったこと…

それを発見していないずさんな国の態勢…

全てに、やりきれなさを覚えた。


「それは…本当にごめんなさい…でも、私たちはその人間たちではないのです。どうか、世界を救うために力添えできませんか…?」


「………貴様らを信用した訳ではない。しかし、我々だけでは少々心配ということも否定できん。…共に闘ってはくれまいか?」


「もちろん。交渉成立だな。まず、どのようにして魔獣を倒すかという作戦…とかって立ててたりするか?」


レドが尋ねると、隊長らしきエルフがある小屋に案内してくれた。

そこには、武器や避難経路、何かが記された紙が置かれていた。


「この紙には、大昔に魔獣が現れた時に撃退した方法が描かれている。見てくれ。」


三人は、その紙に描かれた絵を見た。

右側には魔獣らしき怪物の絵が、左側にはエルフと勇者?と思われる者が。

それぞれ描かれたていた。


「すごく古いものですね…何かの伝承にも見えます。後世に魔獣の撃退するために残したもの…ですよね?」


「ああ、おそらくはな。この勇者と思わしき人物…エルフ語で書かれた言葉通りなら、こいつが重要なのだ。この人物のお陰で、村は助かった。と…」


二人は頭を抱える。

勇者と言ったらマリケスしかいない。が…ここのエルフたちは、マリケスの素性を知らない。

ここはレドかサヤを勇者に見立てて進めるしか…


「勇者マリケスはクズです。強さも、人間性もあてになりません。勇者…は私たちのどちらかになる。ということになります。」


「元よりニンゲンの勇者などあてにしていなかったが、そんな男なのか…とりあえず、勇者は仮決めということにしよう。どちらがやるのか?」


「サヤだな。俺よりもずっと強い。剣聖と呼ばれるほどなら、勇者とも遜色ないだろう。」


ちょっと待ってくれと、サヤも反論する。


「レドのスキルはすごいのです!何からも守るバリアを貼ることができるんですよ!レドこそ、勇者になるべきです。」


「いや…サヤだって勇者…」


「レドです!」


二人が決められない様なので、隊長が決めることになった。


「勇者が二人でも、おかしくはないのではないか?強い者が二人いるならば、そう示せば良い。」


「いいのか?伝承には一人と書いてあるのだろう?」


「伝承は、あくまでも語り継がれてきたものにすぎん。違えれば終わるという訳ではない。勇者は二人で決まりだ!次に作戦だな。どうする?」


ここまで一言も喋らなかったジュディスが口を開いた。


「魔獣のことなら、私が一番詳しいネ。今回はどの魔獣が現れたンダ?」


「巨大なイノシシのような…獣の魔獣だ。一度現れ、世界樹を傷つけた後に消えたぞ。」


「フム…おそらけは獣の王、フレイザードだネ。奴は魔獣の中でも、真ん中位の強さダヨ。」


どのくらいの真ん中なのかを教えてほしいところだが、相手を少しでも知れたのはありがたい。

ジュディスの知識を頼りに、四人は作戦を立てた。


無事、魔獣を撃退して世界樹を守ることはできるのか…

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