第15話 手練れ

二人が案内された先は…


「ようこそ、お二人さん。こいつらはギルドが認めた冒険者たちだ。全員の名前は覚えなくていい。お前らと組むのは二人だからな。」


「いや、覚えさせてくださいよ!俺たち先輩なんだからさぁ。」


「おいバル、あんまそういうこと言うもんじゃないで。新人さんには優しくせんとあかん。逃げられるかいな。」


賑わっているところだが、二人は全員がかなりの手練れだと察知する。


「えっと…ランクCになりたてですが、よろしくお願いいたします!」


「俺からも、よろしく頼む。」


サヤの発言に皆がざわつく。


「Cになりたて…それでアルドのおっさん伸したのか!?」


「あんたら凄いなぁ!片方は見覚えあるで…確か…」


「自分で言うのもあれですが…剣聖です。訳あってパーティ追い出されちゃいまして…」


「どうして剣聖を追い出す流れになる?剣聖って言やぁ、国に一人いるかいねえかの代物じゃねぇかよ。」


二人は黙る。まさか王太子が逆ギレして追放してきたなんて言える訳がない。

すると、アルドが口を開いた。


「俺から話してもいいか?」


「え、私たちじゃなくていいんですか?」


「お前ら遠慮するだろ。あの王太子に。」


「……………」


部屋にいる皆は、アルドの話に聞き入っている。


「こいつらは、勇者に虐げられていた。特に、剣聖の方がな。ある日、隣街のギルドでこいつが実力を示したらしいんだが…イカサマってことで片付けられた。あってるか?」


「はい…具体的に言うと、命令にそむくと叩かれたり…あと、私のことを無能扱い。ギルドで実力を示した時も、認めなかった。それどころかギルドの連中に殴られたことを私たちのせいにして、追放…ですね。」


「本当に、ヤバい奴だったな…あれが王太子じゃ国が危ういぞ?」


その場にいる皆が頷く。


「もともと気にくわなかったんだよ…あのくそ王太子が!」


「バル、落ち着くんや。でも、今は追放されたからフリーってことやろ?」


「そうですね。なので、二人でパーティを組んで新しく始めようかと…」


「そこで、この任務に来たっていうわけだ。お前ら、説明はこれで大丈夫か?」


「イエッサー!」


皆が二人の事情を理解した。

すると…誰かが急いで部屋に入ってきた。


「大変です!ドラゴンの被害で怪我人が…」


「くそ…もう出たっていうのか…!状況はどうだ?ドラゴンはどこにいる?」


「それが…街に向かって来ていると…」


その場の全員が驚愕した。

本来、ラグナロクにいるドラゴンは人を襲わず、街を守る守護者のような立ち位置であるはずなのだ。

それが人を襲うどころか、街を狙うなんてことはあり得ない。


「依頼内容の確認をしましょう。私たちはどうすればいいんですか?」


「…あのドラゴンは人の言葉を話せる。意思疎通の能力だか知らないがな。できれば和解したい。だが、それは危険…可能性も低い。最悪の場合、討伐になるかもしれん…」


「あのドラゴンは街を守ってきたんだぞ!?それを殺すって…」


皆、頭を悩ませる。

ドラゴン討伐はこの街を危険にさらす可能性が大きい。

討伐できたとして、その後の安全は誰が確保する?


皆が頭を悩ませている時、レドが口を開いた。


「俺なら話せるかもしれない…」


「!?」


「確実じゃないがな…俺は神と話したことがある。嘘だと思うかもしれないが、本当なんだ。」


しばらく黙りこんだ後、アルドが決心した。


「……この状況で嘘を吐くとは思えん。俺は信じるぞ。」


「俺もだ。まず、嘘を吐くメリットがない。それに…お前のスキルなら、ドラゴンにも近づける。それが決定打だな。」


「異議のある者は?」


シーン…


「決まりだな。レドのスキルを使ってドラゴンに近づく。他の者は街の住人の避難と、万が一に備えて戦闘待機だ!」


「了解!!」


案は決まった。この作戦はうまくいくのだろうか…

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