第14話 試験

カチャッ…


ギルドの奥へ続く扉を開ける。


「お、やる気になったか?新人さん。」


「ぜひ、やらせてください!まぁ、まずは試験ですけどね…」


「試験はどんな内容なんだ?」


そう尋ねると、アルドは椅子から立ち上がり広場に案内してくれた。


「試験は単純、俺を倒せ。それだけだ。」


「おいおい、こっちには剣聖がいるんだぞ?不公平じゃないか?」


「勝ってから言うもんだよ…そういうのはなぁ!!」


そう言うと、突如アルドは殴りかかってきた。


「試験始まりってことか!?サヤ、俺はサポートに回る!頼むぞ!」


「了解!」


「先にネタバラシすると、俺はアーティファクトを使ってる。だからこの勝負は公平だぜ!」


アーティファクトとは、ダンジョン等の危険な場所に隠されている伝説の武器のことだ。

アルドが狙ったのはレド。

とっさに左腕を上げるも間に合わず、スキルが発動する前に殴られてしまった。


「っっ…!?」


「レド!」


「仲間心配してる場合か?剣聖!!」


キィンッ


金属同士がぶつかり合う音が、広場に鳴り響いた。


「それがアーティファクト…!?」


「ああ、そうだよ。ナックルサック…俺に一番似合う武器だろ!?」


アルドが装備していたアーティファクトは、ナックルサック。

それも拳を覆い尽くすほど大きな代物だった。

激しい攻防戦が繰り広げられている…レドはまだ復帰できていない…


「あんな弱っちい奴仲間にするのかぁ?剣聖さんよぉ!!」


「レドを侮辱しないでっっ!!」


刀の鞘でアルドの腹を突いた。


「ぐっ…!だが、刀は横に弱い!!」


刀を横から殴られ、弾きとばされてしまった。


サヤは短剣一つ。アーティファクトに通じるものではない。


「期待外れだったな!!」


サヤに殴りかかった瞬間…


「サヤ、待たせた…!」


レドが前に飛び出し、バリアを貼った。


「それがスキルか?ぶち壊してやるよ!」


パリィンッ


砕けたのは…


アルドのアーティファクトだった。


「なっ…!?」


弾かれた反動ですぐに動けない隙を見計らい、サヤはアッパーを繰り出した。

それは見事クリーンヒットして、アルドは倒れた。


「これで終わりですね?アルドさん。アッパーは加減したので、痛いだけですよ。」


顎の痛みに悶え、立ち上がれないアルド。


そこへ…


「あらあら…アルドさん負けちゃったんですか?今治しますからね~。」


誰かが広場に入って来た。

美しい細身の女性で、いかにも回復系の職業という格好。


「回復職の方ですか?すみません…お手数おかけして…」


「はい?大丈夫ですよ、アルドさんが調子に乗っただけですから。」


「サヤ…すまなかった…開幕で殴られて何も…」


「…レドがいなければ、私たちは負けていましたよ。最後のスキル、完璧でしたね!」


サヤはハイタッチを求める。

レドは少し照れながら、それに応えた。


「ヒール、ありがとな。それより…レド!俺の…大事なアーティファクトぶち壊したな!」


「スキルがあると教えていただろう?それにいきなり殴ってきたのはアルドさんの方じゃないか。」


「調子に乗った俺が悪いか…でもな、あのアーティファクトはバリア貫通の能力が付いている。だが、お前のバリアには弾かれた…おかしいんだよ。何もかもな。」


後々、かなり追及を受ける気配を感じ、レドは気が滅入る。


「でも、アルドさんも加減してくれていたのでしょう?あのアーティファクトなら、地面ぐらい割れそうでしたし。」


「やったら職員の奴らに殺されちまうよ。」


笑いながら、アルドは言った。


「それで…試験はどうだ?」


「二人まとめてなら合格だ。だがレド、お前はまだ未熟だ。鍛えた方がいいぞ。」


「…心に刻んでおく。俺も自覚しているが…」


なんとか試験を合格した。


「あ、アルドさん…壊れたアーティファクトってどうなるんですか…?」


「あれなら直し手がいる。心配すんな!」


回復が終わると、二人は広場から行ける別の部屋に案内された。

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