第13話 緊急依頼
少し寂しそうに、サヤは言った。
「それって…どういうことだ…?」
サヤも涙を流しながら、話し続ける。
「そのままの意味ですよ…!やっぱり…前の私の方が魅力的でしたか?今の私では至らないんですか…?」
ここでレドは、サヤの言葉の意味と、自分が犯した過ちを理解した。
「違うよ!そんな意味で言ったんじゃ…」
「そう聞こえてしまいます!前の私は…もっとレドに尽くして、いい妻だったのでしょう…?でも今は違う…」
「…すまない…俺は軽率だった。君がどう受け止めるかなんて考えずに…昔のことを話してしまった…」
謝るレドの手を握る。
「私は…剣のことしか知らず、人付き合いも下手で…前の私だったら、マリケス様ともうまくやっていけてたかもしれないのに…」
「駄目だ、あんな奴と一緒にいたら…!君まで変わってしまう…」
「…今のレドはどちらに話しているのですか?前世の私ですか…?それとも、何も持たない哀れな私ですか?」
ポロポロと涙を滴らせるサヤの手を握り返す。
「俺は今の君に話している…知らない俺を助けてくれるぐらい優しくて、とても強くて、美しい君に話しているよ…」
「私はそんな人じゃありません…」
自分を卑下にするサヤに、レドは尋ねる。
「じゃあなんで、俺を助けたんだ?」
「頭の中で…声がしたんです。『あの人を助けて』と。その言葉に導かれるまま、私はレドの元へ向かいました。」
「声がしたのか。きっと、前世の君だね。でもそれは重要じゃない。肝心なのは、どうして君がその声に従ったかだ。」
「だって…誰かが助けを求めていたら、助けるでしょう…?」
ぎゅっ…
サヤを抱きしめた。
「…ほら…君は優しいじゃないか…その声に従わない人が多数だろう。誰の声かもわからない。無視できたはずなのに、しなかった。」
「だって…私は…料理もできませんし…レドに尽くすことも…できないんですよ…?」
「俺は尽くしてほしかった訳じゃない。愛し合いたかっただけだ。それなら、今もできるだろ?」
「……はい…!」
レドを抱き返す。
「じゃあ、言うからな…俺は記憶が戻らないとしても、一生君を愛し続けるよ。俺と…結婚してくれるか…?あ、お付き合いの方か…ごめん…」
「…呪いが解けたら…ですね。それがもどかしいです。そしたら、結婚してください…私からのお願いです。」
「…ありがとう…今までも、これからも、ずっとずっと…愛してるよ…」
その日、二人は一緒に眠った。
二度目となるが、前と違い…心から相手を愛していた。
翌朝…
「レド、おはようございます…」
「はは…サヤ、目が腫れてるぞ。」
「レドも腫れてますよ!お揃いですね。」
「しばらく外には出られないな…何して時間潰すか?」
しばらく考えた後、サヤは口を開いた。
「恋人みたいに過ごしませんか?私、そういうものに疎くて…色々と教えてほしいです!」
「え…色々って…?」
「夜伽のお話を…」
「顔洗ってギルド行くか。もう治ったと思うから…」
なんとか誤魔化そうとする。
「誤魔化しちゃ駄目ですよ…?ちゃ・ん・と…細かく教えてください。」
「頼む…勘弁してくれ…!」
なんやかんや(イチャイチャ)しているうちに、目の腫れは引いていた。
レドが着替えて部屋を出た後、サヤも着替えて宿を後にした。
「今日は何を受けましょうか?」
「そろそろランク上がるんじゃないか?だとしたら依頼の幅も広がるよな。」
二人がギルドへ入ると…
「お、待ってたぜお二人さん。ランクアップおめっとさん!」
アルドは新しいカードをサヤに渡した。
「わ…本当にランクアップ…!あの、もとのカードは?」
「回収するから出してくれ。」
ランクDのカードを渡し、Cのカードを眺める。
「DからCは簡単だが…CからBは鬼門だ。用心して依頼を受けろよ。」
「ありがとう、アルド…さん。早速依頼を受けてみるよ。」
依頼板の前に行くと…
『我らの守護、ドラゴンが暴れているとの通告!ランクC以上の冒険者で、力に自信があるものを求む!』
「これ…大変なことになってますね。レド、受けますか?」
「おっと待ちな。その依頼は俺が試験をして、受かった者大人数で挑むことになっている。受けたかったら奥に来な。」
そう言うと、アルドは奥の部屋へ入っていった。
「どうする?かなり危険な依頼だが…」
「私はレドのスキルを信じてます!それに、私も剣聖である自分に少しだけ自信を持てたので、受けてみたいです!」
二人はこの依頼を受けることにして、奥の部屋へと入っていった…
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