第12話 食堂

「あっ!あの宿ですね!行きましょう。」


「思ってたよりデカイな…本当に安いのか?」


看板

『この宿、街最安値!寝るだけのあなたにおすすめ!』


なるほど…と納得する。

特別な何かだったり、ご飯なども無いがその分安いというわけだ。


「まぁ入ってみましょうか。きっといい宿です!」


二人は宿に入って、受付を済ました。


「ベッドは一つですか?それとも二つ?」




「「二つでお願いします!!」」


「はい、お部屋は二階の7号室です。ゆっくりとおくつろぎくださいませ…」


二人は二階に上がって行く途中であることに気づいた。


「ご飯…食べてないな。どうする?」


「そうですね…少しだけ部屋を開ける。とお願いしてみましょう。」


二人は受付に戻り、鍵を預けて飲食店を探すことにした。

ギルドの周りには飲食店が多くあり、悩むところ…


「あのお店はどうでしょう?温かそうなお店です。」


サヤが指さしたのは、レンガで建てられた昔ながらの…というお店だった。


「いいな、あそこにしよう。きっといいオムライスがあるに違いない。」


「オムライスはどの世界でも共通なんですね!嬉しいです。」


話しながら店に入ると…


「おかえりー!!お好きな所に座って!!」


家族のように出迎えてくれた。


「た…ただいま…でいいのか?」


すると、若いお兄さんがそばに来てくれた。


「いいんだぜブラザー!歓迎するよ!」


「やっぱり温かいお店でしたね!レド、席に着きましょう?」


「そうだな。腹も減ったし、おすすめはなんだ?」


「やっぱオムライスかな…それかハヤシライス!どっちも絶品だぜ!」


二人は少し悩んだ後、シェアして食べることにした。


「ではオムライスとハヤシライスを一つずつお願いします!」


「はい、オムライスとハヤシライス一つずつの注文だよ!」


「了解!!」


料理が来るまで、二人はお兄さんと話すことにした。


「ここの従業員は一つの家族なのか?一体感がすごいが…」


「ご名答!俺たちは家族だよ。厨房にいるのは父さんと母さんなんだ。それで、ウェイターが俺と妹ってわけ。」


「ここの雰囲気、すごく好きです…!私たちも家族のように迎えてくれて…」


笑顔でそう言うと、お兄さんはとても嬉しそうに…


「それがウリなんだ!気に入ってくれて嬉しいよ。お、料理ができたみたいだ。すぐ持ってくるよ!」


「はい、オムライスとハヤシライス一丁上がりぃ!!持ってってくれ!」


「はいよ、父さん。…よいしょ…お二人さんどうぞ!美味いから覚悟してね!」


二人は料理を口に運ぶ…


「!! 美味しい…」


「だろ?父さんたちの腕前はすげぇんだ!」


口に運ぶ手が止まらない。


「すっごく美味しいです!!」


「ああ、同感だ…!サヤ、オムライス食べるか?」


「そうでしたそうでした…はい、交換です!」


かなり食べてしまったため、二皿とものこり僅かだが…シェアはできそうだ。


「はは!お二人さん、仲良いねぇ。結婚はまだなの?」


「ぶっ…まだ付き合ってすらないです!」


「まあ、妻同然というか…妻だが。」


「ちょっ…レド!!」


仲良さそうな二人に、店の全員が笑った。


「アツアツだねえ!応援してるよ!」


「式挙げる時は、うちの料理指名してね!」


二人はお腹いっぱい食べて、店に礼をした。


「本当にありがとうございました。また来ますね~!」


「はいよ~、いってらっしゃい!!」


宿に入り、二人で感想を言い合う。


「いいお店でしたね!また行きましょう。」


「あんなに美味い飯を食ったのは久しぶりだな…いつ頃だったか…」




……………………………

「レド様!お口を開けてください!」


「さすがにご飯は自分で食べれるよ…」


「駄目です!イチャイチャしたいです!」


「意味がわからん…イチャイチャは後で…むぐっ…」


開いた隙を狙って、サヤは口に食べ物を入れた。


「どうです?美味しいですか?」


「……最高に美味いよ…」

………………………………




気づいた時には、レドは頬を濡らしていた。


「どうしたんですか!?と、とりあえず部屋に入りましょう!」


急いで部屋の鍵を開けて、レドを中に押し込む。


「くっ…情けないな…毎度すまない…」


「大丈夫ですよ!…昔のこと、思いだしたんですか?」


「そうだよ…サヤの手料理を食べた時のことを思いだして…美味かったなぁって…」


涙を流すレドに、サヤが思いを打ち明ける。


「今の私じゃ駄目なんですか…?」

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