第40話 マレニア

「サヤ!ジュディス!どこにい…」


レドが向かうと、そこには…


「眼福ですわぁ…美人なお姉さん方、ありがとうございまっす!!」


「いえいえ…いきなり声をあげられたので、少々びっくりはしましたが…」


鼻血を垂らしながら一礼している人間の女性の姿が。

それと…何も着ていないサヤとジュディス…


「おっと?あの男の人って、知り合いかな?」


女性が指をさす方を向くと…


「何で、レドがいるノネ…?」


「きゃ…きゃあぁぁぁぁぁあ!?」


今度はサヤが叫び声をあげた。レドは必死に弁解する。


「いや、ちょっ…誤解だ!!叫び声がしたから来ただけ…」


「切り捨ててくれるわぁぁ!!」


サヤが刀を拾い、レドに斬りかかった。


「サヤ!落ち着け!叫び声がしたら、普通来るだろ!?」


「裸だって知ってたのにぃ!!」


「いや、愛する妻の悲鳴が聞こえたと思って来たんだよ!心配だっただけ…」


トンッ…


レドは峰打ちをモロに受け、意識を失った。

数秒後、正気を取り戻したサヤは、急いでレドに謝る。


「やだ!レド、ごめんなさい!私、正気を失って…」


「姫様、もう聞こえてないネ…起きるまで待つしかないヨ。」


「お姉さん強いね~。一発で意識飛んじゃったよ!」


「旅人さん、ノリノリすぎです!この状況につっこんでください!」


その後、小一時間ほど旅人と話していると…

レドが目を覚ました。


「…サヤ…?俺、何で膝枕…」


起きたら妻に膝枕されているという状況に、かなり困惑している。


「レド、さっきはごめんなさい!痛かったですよね…?恥ずかしすぎて正気を失っていて…」


「…あれ、夢じゃなかったのか…サヤ、ジュディス、本当にすまなかった!嘘だと思うだろうが、覗くつもりはなくて…!」


「わかってますよ!レドはそんなことしません。旅人さんの悲鳴で来てくれたんですよね?そうじゃなかったら、もう一回峰打ちですが…」


笑顔で刀を手に取るサヤ。

レドは血の気が引いた。峰打ちを阻止すべく、急いで理由を伝える。


「悲鳴で来たんだ!何かに襲われているのかと思って…そういえば、さっき足音がしたんだよ。二人がそれに襲われたら危ないし…」


「…足音?近くには何も居なかったよ。あたしが確認した限りだとね。」


「多分、勘違いダヨ。レドは幻聴を聞いたネ。」


起き上がり、首をかしげる。


「そうなのか…?あまり納得いかないんだが…」


「あたしを疑うのか~?商人は嘘吐かないぞ!多分。」


三人は驚く。まさか、旅人さんが商人だとは思ってもいなかったのだ。

すると、商人は大きなリュックサックを降ろし、商品?を取り出し始めた。


「あたしはかの大商人、アルバートさんの一番弟子…マレニアだよ!」


「アルバート…もしかして、王都を拠点にしてる青髪の奴か?」


「やっぱり知ってるね!アルバートさんはすごい…さすが私の師匠だ!」


少し自慢気に、そう言うマレニア。

魔族であるジュディスを見ても驚いていない。

不思議に思ったので、尋ねてみる。


「マレニアさん…は魔族の方を見ても驚かないんですね。」


「私、魔族なのに驚かないの不思議ネ…」


「あたしにとっては魔族だろうと、人間だろうと、大事なお客さんだからね!差別とかはしない主義だよ。」


前には水晶の様なもの、不思議なランタン、お札等、様々なものが置いてあった。マレニアは商品を紹介し始める。


「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!マレニアの奇怪な魔道具店だよ!今ならお安くしとくけど、どうだい?」


「魔道具…魔力を込めると動くという、あの魔道具ですか?」


「そうそう…貴重なものだから'大切に'扱ってくれよ~?手に取ってご照覧あれ!」


魔道具は、簡単に便利な魔法を使える道具。

魔力を込めると使用することができ、その効果は…ランタンに火がついたり、バケツから水が湧きだしたりと様々である。


三人は、それぞれ魔道具を手に取って眺めてみる。


「この水晶は何に使えるんですか?占いとかだったり?」


「お、筋が良いねぇ!それは昔、魔女が未来を透視していたとされる水晶だよ。使ったら呪われちゃうかもね~。」


笑顔でさらっと言い放ったマレニア。そして、サヤはそっと水晶を置く。

次に、レドが質問する。


「このランタンは…火がつくのか?」


「そうそう!魔力込めてみるから、渡して。」


マレニアにランタンを手渡すと… 


ボッ


手渡した瞬間、火がついた。


「ほら、簡単だろう!レドもやってみたらどうだ?」


「あ、レドって魔力が安定してない体質だから、やらない方がいいかも…魔道具壊しちゃう可能性があるので。」


本当は魔力の使い方をよくわかっていないだけだが…


「おっと!それは渡す訳にいかないね…厄介な体質をお持ちのようだ。」


マレニアはそっと、魔道具を元の位置に戻した。


「!! これは水が湧き出るバケツ?珍しいネ…」


興味深そうに、魔道具を眺めるジュディス。

すると、マレニアはなんだか嬉しそうに…


「私の大切な子どもたちだからね!すごいのは当ったり前よ!」


子ども…?まさかと思い、三人は尋ねる。


「これ、マレニアが作ったのか…?」


「うん、そうだよ!」


「!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る