第35話 奇跡の光

「この手でレドに触れれば…!」


サヤは暖かい光に包まれた手で、レドにそっと触れた。

すると手にあった光は消え、刺された心臓部分に移動し…


辺り一面を多い尽くすほど大きくなった。


「!? 眩しい…!」


サヤは思わず目を腕で隠し、ギュッと瞑った。

少し経つと、その光は辺りに散らばり…


「…うっ…」


「レド…!」


レドは起き上がった。かなり困惑している様子。


「サヤ、何が…起きたんだ?俺は死んだはずじゃ…」


ぎゅっ…


レドに飛び付く。

泣いて泣いて…枯れたはずの目から、また涙が溢れてきた。


「レド…レド…!!本当に生きていますよね…?幻じゃ…ないですよね…?」


「あ…ああ、なんだかさっぱりだが…生きてる様だ。」


「良かった…!もう…会えないかと思って…!」


あまりに泣き付かれるので、レドも困り顔。

しかし、世界一…幸せそうであった。


レドもサヤを抱きしめる。


「ごめん…ただいま…」


「お帰りなさい…そして…もう二度と、向こう側に行かないでくださいね!」


「わかった…もう、君を残して一人では逝かないよ…約束だ。」


二人は固く抱きしめ合い、レドはある決心をした。


「サヤ…俺と結婚してくれ…」


「…さっきキスしたばかりですよ?それに、私には記憶が…」


「君は君だ。何も変わらない…ずっと愛しい、俺の妻だ。」


「…はい…!」


二人は、再びキスをした。

今回は別れのキスではなく、お互いを心から離さないと決めたキスだった。


「レド…私、私に会いました。」


「…前世の君か?聞かせてくれ…」


二人が話している時、魔王城は…


「魔王様を助けるんだ!!回復魔法を使える者を集めろ!」


ファーミラの命を救うため、たくさんの魔族が集まっていた。


「魔王サマ…ご無事でいるノネ…!」


皆が祈っていると…


「ここは…救護室か…」


ファーミラは目を覚ました。

全員が歓喜する。


「よくご無事で帰られマシタ…魔王サマ…!」


ジュディスは涙を流し、魔王の側にいた。


「うむ…我は死んではならぬからな!それで…サヤ殿とレドは…?」


「二人は外に行かれマシタ…レドはあの男に心臓を刺されテ…」


魔王は立ち上がろうとする。しかし…


「あいたたた…体が動かんぞ…!?」


「そりゃあそうですヨ!生死の境をさ迷ったのデスカラ…当たり前ナノ!」


「ハハハ!目覚めて早々、ジュディスに叱られてしまった!失敬失敬。」


最高位の炎魔法が直撃したため、魔王はかなり重傷だ。

簡単に動くことはできない状態だが、命を取り留めたことは幸運だろう。


魔法使いの裏切りにあい、二人とも生死をさ迷ったものの、何とか生き延びることができた。

そして、男はなぜ魔王を裏切ったのだろうか…

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