第29話 魅了魔法

サヤの手を引き、転送魔法の中に入った二人。


「わぁぁぁぁぁ!?」


「転送魔法…こんな感じなのか…」


二人は異空間を通り、ジュディスの元へたどり着いた。


「姫様、初めての転送魔法どうでしたカ?そして、姫様たちと話をしたいという御方がいらっしゃいマス。」


ジュディスの横には…


「魔王!?」


「………………………」


魔王、ファーミラが居たのだ。

ファーミラはじーっと二人を見つめている。

思わず身構える二人…すると…


「ジュディス…我の番は美人すぎるぞ…また惚れたのだ!」


「魔王様、しっかりするネ…姫様、それと付添ニン!こちらが現魔王ファーミラ様であるゾ!」


「えーと…なぜ私たちとファーミラ…さんを会わせたのですか?」


「魔王様は話し合いがしたいそうネ。二人のことを見込んでのことでアル。」


なぜかドヤッているジュディス。そしてニヤニヤしている魔王。

二人は、今どんな状況かいまいちわかっていない。

魔王は膝をついて、サヤの手を掴む。


「我の魂の番よ…ずっとそなたを待ち望んでいた!魔族の民のためにも、我と夫婦になってくれまいか?」


いきなり求婚され、サヤはかなり…いや、すごく動揺している。


「ファ…ファーミラさん!?いきなり何を…」


「何って、求婚に決まっておるであろう!」


この光景に、レドはかなりご立腹。

サヤから手を引き離し…


「その前に、俺を忘れないでくれよな?魔王ファーミラ…サヤは俺の女性だ。渡す訳にはいかない。」


「我の魂の番なのだ!こちらこそ、渡す訳にはいかないぞ!」


バチバチである。両者、にらみ合いが続いている中…その空気に耐えかねたサヤが口を開いた。


「その…ファーミラさん、私はもうレドの女性なのです。諦めてくださいませんか…?」


「それはできないのだ…魔王にとって、魂の番は絶対的な存在。それに、我はそなたに惚れている。愛しい者を手放す者がいると思うか?」


「おい、それは俺にも言えることだぞ。お前の魂の番だからといって、サヤを諦めることは絶対にない。」


「ええい、貴様は黙っていてくれないか!我はサヤ殿と話をしているのだ!」


この状況には、ジュディスも少し呆れている。

どちらも譲る気がないので、埒があかない。


「そもそも、あんたが魂の番だからってサヤに呪いをかけたから…」


「呪い…?何のことだ?」


「しらばっくれる気か?サヤが記憶を取り戻して、俺に…その…迫った時、見たんだよ。紋章がサヤの額に刻まれていたのを!」


「…まさか宰相が…!?すまない、緊急事態だ!この国の魔法使いが、サヤ殿に魅了の魔法を使った!このままでは、サヤ殿は我に…」


レドがサヤを見ると、なんだか様子がおかしい。

ぽーっとした目でファーミラのことを見つめている。


「サヤ…大丈夫か…?何かおかしいぞ…ファーミラ、どうなっているんだ!」


「ファーミラ様…愛しております…」


うっとりとした瞳で、ファーミラに近づいて行く…


「サヤ!?一体どうなって…」


「我が国の魔法使いがサヤ殿に魅了魔法を使ったのだ!サヤ殿は正気じゃない!ジュディス、睡眠魔法を!」


「仰せのままニ!申し訳ありません姫様、しばしお眠りになってくだサイ!」


ジュディスは睡眠魔法を使い、サヤを眠らせた。

倒れるサヤを支え、レドは尋ねる。


「どういうことなんだ…?なぜサヤはファーミラに…」


「これが魅了魔法だ…我が国でも、たった一人しか使えない代物…まずいことになった。これを解除できるのはかけた本人のみ…」


「そいつはこの国を出ていったノネ…」


かなりまずい事態のようだ。

サヤは魅了魔法をかけられており、肝心の魔法を使った犯人は行方不明…

この魔法を解き、サヤを正気に戻すことはできるのか…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る