第18話 ダークエルフ

「本当にこの先に世界樹があるのか…?何も見えないぞ。」


「ふふ…世界樹は自然を愛するエルフたちによって、魔法で隠されているのですよ。なので外からは見えないのです。」


なるほど…さすがは'世界樹'と言ったところだ。

セキュリティも万全といった感じである。


「そうなのか…前に、薬草は世界樹のお陰で生えると言っていたが…それ以外に世界樹の役目はあるのか?」


「それは…」


ガサガサッ


草むらから何かが飛び出した。

それと同時に煙幕をはられてしまった。


「なん!?あ…うぐっ…」


「レド!どこにいるんですか!?敵襲で…」


「動かないでくださイネ。姫サマ。」


何者かの声が聞こえた。

しかし煙幕のせいで何も見えない…


「サヤ!早く逃げろ!こいつは魔…ぐっ!?」


「お前も話すんじゃナイヨ…命が大事ナラネ。」


レドの命が危ないようだ。それを理解したサヤは…


「誰であろうと、私の伴侶に手を出すことは許しません…!!」


「伴リョ…?あなたは魔王様の番でありマス。結婚は認められマセン。」


「何の話…煙幕で何もみえ…!?」


サヤが見たものは…首をナイフで押さえつけられたレドと、ダークエルフの姿だった。

サヤは刀に手を伸ばす。


「姫サマ、言うことを聞いてくだサイ…!さもなくばこの男の命はナイ。」


「あなたの目的は何なんですか!?レドから手を離してください!」


「私の目的は姫様の回収デス。大人しく従ってくだサイ。」


姫様?回収?サヤは混乱している…

落ち着いて整理するよう体に言い聞かせる。


(まず、このダークエルフの正体はおそらく魔王の手先。そして私を姫様?と呼んでいる。目的は私の誘拐。もう…ますますわからない!)


「姫様、大人しく付いてきてくれるならこの男は逃がしマスヨ。」


(くそっ…何か方法は無いか?このままじゃただの足枷…そうだ、スキルをもっと限定的な場所に絞って使えないか?首の周りとか…)


一か八かに賭け、レドは念じる。

首の周りにスキルを纏わせるイメージをして、左手をかざした。


「ナニヲ…!?」


キィンッ…


ダークエルフはレドにナイフを刺そうとしたが…

ナイフはバリアによって弾かれ、地面に落ちた。


そしてそれを瞬時に察したサヤが、よろけたダークエルフを叩き、気絶させた。


「レド、大丈夫ですか!?」


「大丈夫だ…少し体が痛いが、問題無い。それより、このダークエルフをどうするかだ。」


「魔王の手先ですので、逃がすことはできません。しかし、どうするにしても彼女の意識が戻ってから尋ねましょう。念のため魔法封じの縄で縛っておいて。」


30分ほど経ち、ダークエルフは目を覚ました。


「何だコレハ…!?グッ…魔法ガ…」


「ふぅ…油断も隙もないですね。魔法封じの縄があってよかった。で、あなたの目的はなんですか?」


「…………姫様でも答えまセン。」


埒があかないと思われたその時…


「ん?これなんだ…?メモっぽいが。なになに…『魔王様の魂の番、姫様を捕らえよ。そして連れてこい。』……メモったのか?敵に知られるかもしれない情報を…?」


二人はちょっと引いている。

こんなあからさまな文を残しておくのか…と。


「……………すみませんデシタ…」


ダークエルフは土下座。

二人は察した。こいつは完全にポンコツだと。


「あー…メモは置いといて、名前は?」


「答えると思うカ?…ジュディスだヨ。」


「えっと、ジュディスさん。このまま魔王のところへ戻っても、多分殺されますよ?どうしますか?」


二人はジュディスにチャンスを与えた。

あまりにも気の毒なので。


「私は魔王様の忠実なる僕ネ。殺すがイイ…」


「…俺たちはむやみやたらに殺生をしたくない。ところで、魔王の番である姫を守る者が必要だと思わないか?」


「そうダネ。」


おっと…ジュディス食いついたぞ。

その道はまずい。やめておいた方が…


「俺たちは'いずれ'魔王に会いに行く。それまで姫を守ってくれないか?」


「無論ネ!ヤルヨ!」


救いようのないポンコツだった…

カモにされていることに気づいていないのだろうか?

二人も演技を疑ったが、どうやらマジらしい。


「わかった、ジュディス。魔王に会いに行くまでの守護者に命ずる。」


「イエッサー!」


「ぷっ…ジュディスさんって、面白いですね…!」


肝心のジュディスは何のことだがわかっていないようだが、二人は吹き出すのを堪えるのに必死である。


「では、私たちは世界樹に向かいます。ジュディスさんも行きますか?」


「世界樹の周りには美味いものがアルネ。イクヨ!」


騒がしいメンバーが追加されたが…再び、世界樹に向かった。

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