ツンデレ幼馴染から偽装彼氏になれと命令されたので仕方なく彼氏のふりをしていたが、実は全部策略で気付いたら完全に逃げ道が無くなっていた話
第29話 こ、これは転びそうになったのを助けてくれたお礼なんだから
第29話 こ、これは転びそうになったのを助けてくれたお礼なんだから
オープンキャンパスが終わった後、俺達は夜になるまで京都市内を観光していた。京都御所や北野天満宮、二条城など有名な観光地に足を運んだのだ。
俺のプロポーズ発言をきっかけにオープンキャンパス中はぎくしゃくもしていたが、観光をしているうちにいつも通りに戻った。
「北野天満宮でお守り買って絵馬も書いたんだから受験勉強も頑張らないとね」
「ああ、せっかく学問の神様にお願いしたんだから手を抜くとバチが当たりそうだもんな」
俺と真里奈はそんな話をしながら京都駅にある地下街のレストランで夕食をとっている。久々にあちこち歩き回ったためクタクタになってしまったが楽しかったから良しだ。
この後は京都駅の空中経路に立ち寄ってからお土産を購入し、新幹線で東京に帰るという流れになっている。しばらくして夕食を終えた俺達は空中経路へと向かい始める。
「空中経路から見える夜景が綺麗らしいから楽しみね」
「だな、だから帰る前に行こうって話になったし」
「以外と穴場で人も少ないみたいよ」
そんな話をしながら俺達はエスカレーターで上へと登っていき、数分後に空中経路の入り口に到着した。
「へー、めちゃくちゃ綺麗じゃん」
「これは想像してた以上ね。ほら、才人行くわよ」
「分かったからそんなに引っ張るな」
俺はテンションが高めな真里奈に手を引かれて空中経路を進み始める。真里奈が穴場と言っていた通り人通りはかなり少なかった。
ただしカップルの姿は多かったので隠れデートスポットなのかもしれない。人目を気にせずイチャイチャしているカップルが多く少し居心地の悪さを感じてしまう。
「……結構大胆な事をやってるんだな」
「……こっちまで変な気分になってきそうだわ」
「……リア充って見られても平気なのか?」
「……そんなの私に聞かれても知らないわよ」
周りでキスやハグをしているカップル達の姿を見てだんだん気まずくなってきた俺達は小声で会話する事しか出来なかった。
一刻も早くこの場を立ち去りたくなった俺だったがそれは真里奈も同じだったようで歩くスピードがいつもより速い。
だがそれがよくなかったようで真里奈は何かにつまずいてしまう。そのまま床に倒れそうになる真里奈だったが、咄嗟に俺が抱き寄せたため転ぶ事は回避できた。
「ち、ちょっと。いつまで抱きしめてるつもりよ!?」
「……あっ、ごめん」
しばらく無言で顔を見つめ合っていた俺達だったが恥ずかしそうな表情を浮かべた真里奈の声を聞いてようやく我に返る。
頭がぼーっとしていたらしい。慌てて真里奈から離れようとする俺だったが、次の瞬間真里奈はとんでもない行動に出る。
「!?」
なんと真里奈は顔を近づけてくるとそのまま俺の唇を奪ったのだ。
「こ、これは転びそうになったのを助けてくれたお礼なんだから。特に深い意味とかは何もないんだからね」
真里奈は呆然としている俺に対して一方的にそう言い残すと再び早足で歩き始めた。俺と真里奈の間にしばらく沈黙が生まれた事は言うまでもない。
それから俺達は気まずい状態のままお土産を買って帰りの新幹線に乗ろうとしたわけだが、ここで大きな問題が起こってしまう。
「えっ、新幹線動かないの!?」
「そうみたいだな、マジでどうしよ……」
どうやら人身事故が起こったようで新幹線が上りも下りもストップしてしまったのだ。復旧がいつになるかは未定なようで今日中に東京へ帰れない可能性が非常に高い。
「そんなにお金は持ってきてないから泊まるとしても安いホテルくらいしか選べそうにないわね……」
「こんな事になるなんて完全に予想外だったからな」
とりあえず京都駅周辺の安いビジネスホテルを探し始めるが、新幹線がストップして俺達のような帰宅難民で溢れかえっている関係でどこも一瞬で埋まってしまった。
疲れていないならカラオケで朝まで過ごすという手もあったが、俺も真里奈も遊び疲れているためそれは難しそうだ。それに結構汗もかいたためシャワーは浴びたい。
「……あっ、もしかしたらあそこなら多分空いてるかも」
「どこよ?」
俺のつぶやきを聞いた真里奈がそう聞き返してきたが、場所が場所だけに提案する事にはかなり抵抗がある。
「いや、でも流石にあそこは……」
「勿体ぶらずにさっさと教えなさい」
「……ラブホテルだよ」
「ら、ラブホテル!?」
俺の言葉を聞いた真里奈は顔を真っ赤にしてそう叫び声をあげた。こういう反応が返ってきそうだったから言いたくなかったんだよ。
「一旦落ち着け、めちゃくちゃ見られてるから」
「落ち着けるわけないでしょ、何考えてるのよ」
「部屋の中はそんなに普通のホテルと変わらないらしいからありだと思っただけでそんなに深い意味はないから」
「らしいってそんな話誰から聞いたのよ?」
「航輝から聞いたんだよ。まあ、もっと正確に言えば航輝のバスケ部の先輩が話してた事をあいつから又聞きしただけなんだけど」
俺がそう伝えると真里奈は黙り込んで何かを考え始めた。そして何かを決心したような表情で口を開く。
「……分かったわ、ラブホテルに行きましょう」
「えっ、今なんて言った?」
「だからラブホテルに行きましょうって言ったのよ、恥ずかしいから何度も言わさせないでよね」
「本当にそれでいいのか?」
「私達は付き合ってるんだからそのくらい普通よ、さっさと行くわよ」
こうして俺と真里奈はラブホテルへ行く事になった。
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