第27話 何度やっても結果は変わらないと思うけどな

 東京サマーヒルズへ行ってから数日後の今日、俺は新幹線で京都に向かっていた。その理由は同士社大学のオープンキャンパスに参加するためだ。

 ちなみに今回のオープンキャンパスには真里奈もついて来ている。今まで知らなかったが同士社大学は真里奈にとっても志望校の一つなようで一緒に行きたいと言い始めたのだ。

 泊まりだったら拒否していたところだが、今回は日帰りなので一緒に行く事にした。今は二人で大富豪をしながら時間をつぶしている。


「才人見て見て、富士山よ」


「本当だ、って事はもうそろそろ静岡か」


 ハイテンションな真里奈の声を聞いた俺はそうつぶやいた。次の停車駅は名古屋駅のため、京都駅まではまだしばらく時間がかかりそうだ。


「京都に行くのって小学六年生の時の修学旅行以来だよな」


「そうね、あの時は確か金閣寺とか平等院鳳凰堂、太秦映画ヴィレッジに行ったわよね」


「太秦映画ヴィレッジのお化け屋敷に入った真里奈が大号泣したのは未だによく覚えてる」


「そんな余計な事は思い出さなくていいわよ」


 まあ、太秦映画ヴィレッジのお化け屋敷は日本で二番目に怖いお化け屋敷と言われているため小学生の真里奈が泣いてしまうのは仕方がないだろう。実際一緒に入った俺も実は半泣きだったし。


「そう言えば真里奈は何学部の模擬授業に参加するんだ?」


「私は外国語学部ドイツ語学科の模擬授業ね」


「真里奈はある程度ならドイツ語喋れるし、模擬授業は簡単過ぎるんじゃ無いか?」


「かもしれないわね」


 母方の祖母がドイツ人の真里奈は日常会話くらいであれば一応話せる。だから基本的な文法などは既に習得済みに違いない。


「ちなみに才人はどうするの?」


「経済学部か法学部のどっちに行くかで迷ってる」


「まあ、まだ時間はあるんだしゆっくり考えればいいんじゃないかしら」


「そうだな、着くまでに考えるよ」


 そんな会話をしつつ俺がテーブルの上にトランプの11を出すと真里奈の顔が引きつる。


「ちょっと、イレブンバックなんて卑怯じゃない」


「いやいや、それがルールなんだから別に卑怯とか無いだろ」


 多分真里奈は2を出して俺にパスさせて勝とうとしていたのだろうがそうはさせない。真里奈にパスをさせた俺は5を三枚一気に出して再びパスさせ、最後に3を出してあがった。


「……また、負けた。なんでそんなに強いのよ?」


「真里奈は色々表情に出し過ぎなんだよ」


 真里奈はポーカーフェイスが下手すぎるため心理戦になったら簡単に勝ててしまう。多分真里奈に人狼ゲームなどをやらせたらあっという間に負けてしまうに違いない。


「悔しいからもう一回」


「何度やっても結果は変わらないと思うけどな」


 結局新幹線が京都駅に着くまで大富豪を続けたが俺が勝ち続けた事は言うまでも無い。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 京都駅で新幹線を降りた俺達は地下鉄に乗り換えて同士社大学のキャンパスを目指し始める。最寄である今出川駅までは京都駅から約十分ほどなのですぐだった。


「へー、赤レンガでお洒落なキャンパスね」


「だろ、京都市内に現存する赤レンガ建築では最古で1884年竣工らしいぞ」


「このキャンパスにも長い歴史があるのね」


 そんな事を話しながら俺達は受付に向かって歩き始める。やはり西日本の中でトップクラスに人気の大学という事でオープンキャンパスに来ている人はかなり多かった。


「なあ、あの子めちゃくちゃ可愛いない?」


「それな、あんな子と一緒に大学生活送りたいよな」


「凄い美人だけどもしかしてモデルとか芸能人だったりするのかな?」


「普通にあり得そう」


 ただキャンパス内を歩いているだけでそんな男女の声があちらこちらから聞こえてきた。やはり真里奈はどこへ行っても大人気らしい。真里奈は視線に慣れているのか平然としているが俺は全く落ち着かなかった。


「それで結局模擬授業は経済学部と法学部のどっちに行く気なの?」


「今回は経済学部にする、法学部はまた別の大学のオープンキャンパスで行く事にするから」


 それから受付を済ませた俺達は大学説明を聞くために多目的ホールへと移動する。


「やっぱり皆んな日本各地から来てるみたいね」


「ああ、周りの人達は色々な方言だらけだもんな」


「東京に住んでる私達は標準語だからちょっと羨ましいわ」


 関西弁は勿論、博多弁や広島弁など色々な方言が聞こえてきていた。高校までとは違い大学は日本全国から人が集まるため大学生になったら色々な地方の人と交流できそうだ。

 それからしばらくして開始時間となり大学説明が始まる。知っている内容も割と多かったが改めて大学職員の口から聞くとより理解が深まった。


「じゃあ私はこっちだから、また模擬授業が終わったら合流しましょう」


「ああ、終わったら一応メッセージ送るから」


「ええ、また後で」


 俺達はそれぞれ分かれて模擬授業の教室に向かい始める。キャンパス内はかなり広いため授業のたびに移動するとなると結構大変そうだ。まだ合格すらしていないくせにそんな事を考えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る