第18話 えっ、そんなに告白してたのか!?

 スポーツテスト翌日の今日、帰りのホームルームも終わったため帰る準備をしていると航輝が話しかけてくる。


「なあ、才人。この後ボウリングに行かね?」


「いやいや、部活はどうするんだよ。ひょっとしてサボる気か?」


「あれ、才人知らないのか? 今日は職員会議でどこの部活も休みだぞ」


 なるほど、それで俺を誘ってきたらしい。そう言えば松島先生がホームルームの時にそんな事を言っていた気がする。


「それならせっかくだし、行こうかな」


「よっしゃそう来なくっちゃ」


「とりあえず真里奈には一緒に帰れない事を伝えてくるよ」


「オッケー、じゃあその間に俺はトイレ行ってくる」


 航輝が教室から出ていくのを見つつ、俺は机で朝霧さんと駄弁っていた真里奈に声をかける。


「今日は航輝とボウリングに行くから先に帰っててくれ」


「ちょっと、そんな話一言も聞いてないわよ」


「だってさっき決まった事だし」


「私よりもボウリングに行く事を優先するわけ?」


「まあまあ、霧島君も友達と遊びたい事くらいあると思うから許してあげなよ」


 真里奈をどう説得しようか考えていると朝霧さんが援護射撃をしてくれた。


「……もう、しょうがないわね」


「ありがとう、じゃあまたな」


 そう言って真里奈の前から立ち去ろうとすると肩を掴まれる。


「待ちなさい、私も一緒に行くわ」


「……えっ?」


「それなら別にいいでしょう? 才人もボウリングに行けるんだし」


「……真里奈、どれだけ霧島君と一緒に居たいのよ」


 真里奈の言葉を聞いた朝霧さんは若干呆れ顔になっていた。


「もう決定事項だからね、相模にもそう伝えておきなさい」


「分かったよ」


 少しして教室に戻ってきた航輝に俺は事情を説明する。


「真里奈もボウリングについて行きたいって言ってるんだけど」


「やっぱりそうなったか」


「やっぱりって航輝はこうなる事が分かってたのか?」


「八雲さんなら何となくそう言いそうな気がしてたんだよ」


 なるほど、どうやら予想済みだったらしい。


「ただ三人はなんかバランスが悪いし、もう一人呼んでいいか?」


「それは全然大丈夫だけど一体誰を呼ぶんだ?」


「俺の彼女を呼ぼうと思ってさ、それなら男女二人ずつでバランスもいいだろ?」


「確かにそうだな」


「じゃあ早速呼んでくるわ、ちょっと待っててくれ」


 そう言い残すと航輝は教室から出て行った。


「ねえ才人、話はついたの?」


「ああ、航輝の彼女も行く事になりそうだから多分四人になるけど」


「そうなのね」


 ちなみに俺は航輝の彼女に会った事が無いため若干緊張していたりもする。別にコミュ障って訳でもないが少し人見知りなため初対面の相手と会う時はどうしても緊張してしまうのだ。

 そんな事を考えていると航輝が小柄な女子と一緒に教室に戻ってくる。多分あの子が航輝の彼女なのだろう。


「才人、八雲さんお待たせ」


「多分二人とも初めましてだよね。赤城風花あかぎふうかです、よろしくね」


「赤城さん、よろしく。俺は霧島才人」


「私は八雲真里奈よ」


 俺と真里奈は赤城さんに軽く自己紹介をした。それから俺達は学校を出てボウリング場があるフェイズワンという複合型アミューズメント施設を目指し始める。


「真里奈ちゃんって間近で見るとやっぱり凄い美人だよね」


「風花も女の子らしくて可愛いと思うわ」


「ありがとう、めちゃくちゃ髪綺麗だけど真里奈ちゃんはどこのシャンプー使ってるの?」


「私が使ってるのはね……」


 赤城さんはコミュニケーション能力がかなり高いようであっという間に真里奈と仲良くなってしまった。


「風花は凄いだろ、いつもあんな感じですぐに初対面の相手と仲良くなるんだよ」


「確かにな、真里奈は結構警戒心が強いタイプだからあんな風にすぐ仲良くなれる人は中々いないぞ」


 小学生の頃茶髪碧眼な容姿が原因で真里奈はいじめられていた過去があるため他人には中々気を許そうとしない。

 今のようにツンツンした性格になってしまったのもそれが原因だ。だから真里奈の警戒心をいとも簡単に解かせてしまった赤城さんは本当に凄いと思う。


「航輝はあんな良い子をどうやって彼女にしたんだよ? 絶対男子から人気だったと思うけど。あっ、まさか何か弱みでも握ったんじゃないだろうな?」


「人聞きの悪い事言うな。ちゃんと俺から告白したんだよ、しかも十回も」


「えっ、そんなに告白してたのか!?」


「ああ、最初告白して振られたんだけど諦められなくてまた告白して振られてそれを繰り返してようやく付き合えたんだからな」


 なるほど、航輝は俺の知らないところでしっかりと青春をしていたらしい。去年航輝から彼女が出来たと聞いた時はリア充爆発しろと思った俺だが、裏では凄まじい苦労があったようだ。


「才人も八雲さんと付き合うのは大変だったんじゃないか? いくら幼馴染とはいえ疎遠になってたんだから付き合うまで持っていくのは相当大変だったと思うけど」


「そ、そうなんだよ。とにかく大変だったから」


 俺と真里奈は偽装カップルであり本当は付き合ってすらいないわけだが、表向きは俺から告白して付き合っている事になっているためそう誤魔化した。

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