ツンデレ幼馴染から偽装彼氏になれと命令されたので仕方なく彼氏のふりをしていたが、実は全部策略で気付いたら完全に逃げ道が無くなっていた話
第8話 何言ってんのよ、私の彼氏になった以上ダサい服を着る事なんて許さないわ
第8話 何言ってんのよ、私の彼氏になった以上ダサい服を着る事なんて許さないわ
真里奈が教室で盛大に俺と付き合い始めた宣言をしてから一夜が開けて土曜日になった。
昨日は一日中激しいストレスに晒され続けていたせいでずっと胃が痛くて本当に大変だったが、今日は学校も休みなため一息付ける。さっきまではそう思っていた。
「才人、おはよう。今日も来てやったわよ」
「……いやいや、今日は学校休みだろ」
「そんな事は言われなくても分かってるわよ」
「じゃあ何で来たんだよ」
「そんなの才人と出かけるために決まってるじゃん」
どうやら俺を振り回す気満々のようだ。
「俺に予定入ってるとか考えなかったのかよ」
「どうせ才人に予定なんか何も無いでしょ、遊びに行く友達も少なそうだし」
「うっ……まあその通りだけど」
遊ぶ友達と言えば航輝くらいしかいないし、基本的にあいつは土日も部活のため一緒に遊ぶ事は滅多に無い。だから土日は家で適当に過ごす事が多かった。
「てか偽装彼氏なんだし、わざわざ休日に一緒に出かける必要ってあるか?」
「ナンパされるかもしれないじゃない、そうなったら楽しい気分が台無しになるでしょ?」
「だから休日も付き合えって事か?」
「ご名答、そういう訳だからよろしく」
せっかく今日は一日家でゆっくりしようと思っていたのにその計画はたった今台無しになってしまったと言える。
てか、真里奈は好きでも無い偽装彼氏と休日を一緒に過ごす事に抵抗は無いのだろうか。そんな事を思いつつ俺はパジャマから服に着替える。
「それでこれから俺は一体何に付き合えばいいんだ?」
「今日はショッピングとか色々行くつもりなのよね」
「うわー、結構長くなりそうな予感しかしないんだけど……」
せっかくの土曜日を潰されるのだから休日料金をふんだんに上乗せして偽装彼氏料を真里奈から取りたいくらいだ。
「この私と一緒に過ごせるんだからもっと嬉しそうにしなさいよ」
「はいはい、嬉しい」
「本当にそう思ってるのかしら?」
真里奈からじとっとした目で見られた俺は慌てて目を逸らした。それから適当に朝食を済ませて家を出発する。これから行く場所は学校近くのショッピングモールらしい。
「で、今日は何を買うつもりなんだ?」
「服とか色々よ、才人にはしっかりと荷物を持って貰うからそのつもりで」
「予想はしてたけどやっぱり俺は荷物持ち要員なんだな」
そんなやり取りをしながら歩いているうちにショッピングモールへと到着した。休日という事もあって館内はかなり混雑している様子だ。
「早速服から見に行くわよ」
「ああ、分かったからそんなに手を引っ張るな」
俺は真里奈に引きずられるようにしてアパレルショップへと入っていく。夏が近いという事で夏服を大々的に売り出しており、店内はかなり賑わっていた。
二人で店内を見て回っていると真里奈が色の違うワンピースをそれぞれ手にとって俺に問いかけてくる。
「ねえ、才人はどっちの色が私に似合うと思う?」
「赤と水色か、その二択なら赤かな。やっぱり真里奈と言ったら昔から赤のイメージがあるし」
「ちょっと試着してくるからそこで待ってなさい」
真里奈はそう言い残すと赤のワンピースだけ持って試着室へと入っていく。そしてすぐに着替え終わって外に出てきた。
「どうかしら」
「……うん、めっちゃ良い。凄くよく似合ってる」
赤のワンピースを見に纏った真里奈はびっくりするくらい似合っていて思わず言葉を失ってしまったほどだ。
「才人がそこまで言うならこれを買う事にするわ。じゃあ次は才人の服を見ましょうか」
「いや、俺は別にいらないぞ」
「何言ってんのよ、私の彼氏になった以上ダサい服を着る事なんて許さないわ」
「えっ、今日の服ってダサいか? 俺的には全然そんな事無いと思ってるんだけど」
「サイズが合ってない上に訳のわからない英字のロゴが入ったTシャツとか明らかにダボダボのズボンとか、どこからどう見てもめちゃくちゃダサいでしょ」
真里奈は呆れたような顔ではっきりとそう口にした。そこまで言わなくてもいいだろ。
「才人の服は私が全部選んであげるからあんたは黙って言う事を聞きなさい」
「でも今日そんなにお金持ってないから買えるか分からないんだけど」
「ああ、それなら私が買ってあげるから心配はいらないわ」
「えっ、でもそれは流石に悪いし……」
「私がいいって言ってるんだからつべこべ言わない」
結局真里奈に押し切られてしまい俺の服を買う事になった。
「とりあえずこれを着てみなさいよ」
「ああ、ちょっと着替えてくる」
真里奈から渡されたTシャツとズボンを受け取った俺は試着室で着替える。
「どうだ?」
「うん、やっぱり無地の白Tシャツと黒スキニーの組み合わせは無難だけど良いわね。さっきよりも見違えるくらい良くなったわ」
「スキニーはなんか体にフィットし過ぎてて、あんまり落ち着かないんだけど」
「そこは我慢しなさい、そのうち慣れるから。次は何を着てもらおうかしら」
しばらくの間俺は着せ替え人形のごとく大量のTシャツとズボンを試着させられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます