ツンデレ幼馴染から偽装彼氏になれと命令されたので仕方なく彼氏のふりをしていたが、実は全部策略で気付いたら完全に逃げ道が無くなっていた話
第7話 あら、私の彼氏気分を味わえてるんだからそのくらい安いもんでしょ
第7話 あら、私の彼氏気分を味わえてるんだからそのくらい安いもんでしょ
「おい、才人。今日は遅刻ギリギリだったけど一体どうしたんだ?」
「……朝から色々あったんだよ」
一時間目が終了した後、早速俺は航輝から話しかけられていた。普段あそこまでギリギリになる事は無いため気になるのは当然だろう。
「いや、俺としてはその色々の部分がめちゃくちゃ気になるんだけど」
「詳しい事はまた後でじっくり話してやるからとりあえず今はゆっくりさせてくれ」
とにかく疲れていた俺は休みたかった。ちらっと真里奈の方を見ると、俺と同じように友達の
「いつも早い真里奈が遅刻しそうになるって珍しいじゃん」
「今日は朝の準備に色々と手間取ったのよ」
「てかさ、霧島君と一緒のタイミングで教室に入って来てたよね。あっ、もしかして二人で一緒に登校してたとか?」
朝霧さんは真里奈にそんな言葉を投げかけた。ちなみに俺と真里奈が幼馴染である事をこのクラスで知っているのは航輝しかいないため、朝霧さんは多分揶揄うために聞いたに違いない。
頼むから余計な事は話さないでくれよと願う俺だったが、真里奈はニヤッとした笑みを浮かべた後とんでもない爆弾発言をする。
「ええ、一緒に登校したわよ。だって昨日の放課後才人から告白されて付き合い始めたから」
なんと真里奈は教室中に聞こえるような大声で俺と付き合い始めた宣言をしてしまったのだ。その瞬間、教室のあちこちから次々に驚きの声があがる。
「嘘だろ!?」
「えっ、八雲さんに彼氏!?」
「ち、ちょっと真里奈どういう事よ!?」
「才人、お前マジかよ!?」
ちょっとした騒ぎにまで発展してしまい、近くのクラスから人が見に来るほどだった。
そのせいで教室中の視線が俺と真里奈に集中し、はっきり言って居心地は最悪だ。そこからは俺と真里奈に対する質問の嵐となり、それは放課後になるまで続いた。
「休み時間のたびに根掘り葉掘り質問されまくるし、真里奈のせいでマジで疲れたんだけど」
「あら、私の彼氏気分を味わえてるんだからそのくらい安いもんでしょ」
「どう考えても割に合わないんだよな……」
正直真里奈から偽装彼氏料を取りたいレベルだ。俺達の関係が偽装カップルであると皆んなにバラして楽になりたいのが本音だが、絶対に話すなと真里奈から厳命されているためそれは出来ない。
「じゃあ帰りましょうか」
「あっ、まだ日直の仕事が残ってるからもう少しだけ待ってくれ」
「そっか、今日は才人が日直だったわね。分かったわ、私は萌と適当に話して待ってるからさっさと終わらせなさい」
「ああ、後は黒板を消して日誌を書くだけだから」
俺は黒板消しで黒板に書かれた文字を綺麗に消して日付と曜日を書き換えると、席で日誌を書き始める。今日は質問攻めにあったせいで一日の流れや内容なんて全く覚えていないため内容は割と適当だ。
「おーい、真里奈。日誌書けたから職員室に寄って帰るぞ」
「待ちくたびれたわよ。萌、じゃあまた明日」
「うん、また色々と話を聞かせてね」
それから俺は真里奈と腕を組んで職員室へと向かい始める。今日一日で真里奈に彼氏が出来た事は学校中に広まったらしく、俺の姿を見て憎悪の視線を向けてくる男子達が大勢いた。
その中には男子だけでなく女子も混じっていたため真里奈は同性からもモテているようだ。視線だけで人を殺せるなら今日だけで何百回も死んでいるに違いない。
「……そのうち誰かに後ろから刺されそうな気しかしないんだけど」
「だったら刺されても平気なくらい強くなればいいじゃない」
「いやいや、そんな少年漫画の主人公みたいに鍛えたら斬られたり撃たれりしても平気になったりはしないからな」
そんなやり取りをしつつ職員室へと到着した俺達は担任のアラサー教師である
「松島先生、日誌を書いて持ってきました」
「そうか今日の日直は噂の霧島だったのか。職員室でも霧島と八雲が付き合い始めた事は結構話題になってたぞ」
「へー、職員室にも私達の事が知れ渡ってるんですね」
まあ、あれだけ皆んなが騒いだのだから先生達の耳に入っていない方が逆に不自然だ。
「付き合いたての今は一番楽しい時期だと思うが、くれぐれも羽目だけは外さないようにな」
「それは勿論分かってます、昨日真里奈のお母さんにも釘を刺されたので」
「そうそう、才人の言う通りその辺は心配いらないですよ」
松島先生が何を言おうとしているか即座に理解した俺と真里奈はそう答えた。高校生で妊娠なんかしてしまえばその後の人生が大きく狂ってしまうのだから松島先生が心配するのも無理ないだろう。
まあ、俺と真里奈の関係はあくまで偽装カップルなのでそういう行為をする事はまずないに違いないが。
「じゃあ私達は帰りますね」
「ああ、気をつけて帰るんだぞ」
「はい、さようなら」
俺達は職員室を後にして家へと帰り始める。相変わらず通学路でもうちの学校の生徒達から憎悪の視線を向けられていたためとにかく落ち着かなかった。
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