第21話 エッチ、バカ、変態、もう信じらんない
航輝達と四人で遊びに行ったあの日からあっという間に十日ほどが経過し、気付けば期末テスト前最後の土曜日になっていた。俺は家で真里奈から理系科目を中心に勉強を教えてもらっている。
「ほら、さっさと手を動かして問題を解きなさい」
「今精一杯やってるだろ」
「もしこれで正答率が七割以下だったら絶対に許さないわよ」
「そんなの言われなくても分かってるって」
こんな感じで朝から勉強を教えてもらっているわけだが、真里奈はとにかくスパルタなため正直死にそうだ。しかも今日は俺の家に泊まっていくため逃げ場はどこにもない。
ちなみに泊まると言い出した時は全力で反対したのだが歩美と母さんが真里奈の味方についてしまったため阻止できなかった。いや、歩美はともかく母さんは反対しろよ。
「ほら、全部解き終わったぞ」
「採点するわ、ちょっと待ってて」
「ああ、頼んだ」
真里奈は俺が解いた問題を赤ペンで採点し始める。正答率が七割以下だった事を考えると後が怖いため本当にドキドキだ。裁判の判決を待つ被告は多分こんな気持ちになっているに違いない。
「採点終わったわよ、今回の問題の正答率はちょうど七割ってところかしら」
「……良かった」
真里奈の言葉を聞いた俺は思わず安堵の声を漏らした。これで地獄を見る事はなんとか回避出来そうだ。
「何言ってるの、全然良くないわよ。私があれだけ優しく教えてあげたってのに三割も不正解ってのは一体どういうわけ?」
「あれが優しく……?」
間違うたびに容赦無く罵声を浴びせられていた気がしたのは俺の気のせいだろうか。
「何か言った?」
「い、いや何でもない。てか、最初は三割くらいしか正解してなかったんだから俺もだいぶ成長したと思うんだけど」
「最初があまりにも酷すぎたのよ、今でようやく人並みってところかしら」
「えっ、そうなのか?」
「そうよ、じゃあ間違えた問題の解説をするからさっさと教科書を開きなさい」
真里奈に促されて物理基礎の教科書を開いた俺は間違えた問題の解説を受ける。
「重量がW=mgで物体の質量に比例する特徴がある事までは良いわね?」
「ああ、そこは流石に大丈夫」
「本当かしら? こんな簡単な問題を間違えてるくらいだから正直疑わしいわね」
相変わらず罵声を浴びせてくる真里奈だったが教え方自体は丁寧なため非常に分かりやすかった。しばらく問題の解説を受けていると歩美が部屋にやってくる。
「お兄ちゃん、真里奈さん、お風呂入ったよ」
「ちょうどタイミングも良さそうだし、一旦休憩にしてお風呂にしましょうか」
「ああ、そうだな。順番はどうしよう、真里奈から入るか?」
「大丈夫よ、お手洗い借りるわね」
どうやら今は大丈夫らしい。じゃあ俺から入る事にしよう。俺は脱衣所に向かって服を脱ぐと浴室に入って体を洗ってから湯船に浸かる。
「朝からほぼずっと勉強してたから流石に疲れたな」
こんなに長時間勉強したのは本当に久しぶりだ。真里奈から苦手な理系科目を教えて貰う事ができたので今回のテスト結果は割と期待できるかもしれない。
そんな事を思っていると突然脱衣所から物音が聞こえてくる。もしかしたら歩美か母さんが脱衣所に何か取りに来たのかもしれない。そんな事を思っていると浴室の扉が開かれる。
「……えっ!?」
「ち、ちょっと何で才人がいるのよ!?」
なんと浴室に入ってきたのは真里奈だった。真里奈は生まれたままの姿であり胸や女性器など全てが丸見えの状態だ。俺は慌てて顔を逸らしつつ口を開く。
「何でって、さっき順番はどうするか聞いたら大丈夫って言っただろ。だから先に俺から入ったんだよ」
「馬鹿ね、あの大丈夫は否定の意味じゃなくて肯定の方の意味よ。国語は得意だって言ってた癖にそんな簡単な事も分からなかったわけ?」
「……あっ、あれってそういう意味だったのか」
「と、とにかく私は後で入るから」
そう言って真里奈は浴室から出ようとするが運が悪い事に濡れていた床のタイルで足を滑らせてしまう。
「きゃあぁぁぁぁ!」
「危ない!?」
俺は咄嗟に湯船から飛び出して真里奈を抱き止めようとする。だが不運は重なるもので真里奈を抱き止めた瞬間、俺も足を滑らせてしまう。俺達は二人揃ってそのまま床に倒れ込む。
倒れる瞬間思わず目を閉じてしまった俺だが、瞼を開くと目の前にはピンク色と肌色の双丘が広がっていた。どうやら真里奈の胸と俺の顔がちょうど重なってしまったらしい。
真里奈は怒りと恥ずかしさが両方がこもったような表情を浮かべて口を開く。
「エッチ、バカ、変態、もう信じらんない」
「と、とにかく今の体勢はマジでまずいから今すぐ退いてくれ」
全裸の俺の上に同じく何も身に付けていない真里奈が覆い被さっている今の体勢は誰がどう見ても一線を超えているようにしか見えない。
万が一こんな姿を歩美や母さんなんかに見られたら大事件だ。真里奈もそれに気が付いたようで顔を真っ赤にしたまま無言で退けて浴室から出て行った。
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