ツンデレ幼馴染から偽装彼氏になれと命令されたので仕方なく彼氏のふりをしていたが、実は全部策略で気付いたら完全に逃げ道が無くなっていた話
第25話 この私って彼女がいるのにナンパなんて許すわけないじゃない
第25話 この私って彼女がいるのにナンパなんて許すわけないじゃない
レストランで食事を終えた俺達はいよいよ今日の大本命である温水プールへ入るために更衣室へと向かう。
「プールの入り口で待ってるぞ」
「ええ、また後でね」
更衣室の前で真里奈と別れた俺は男子更衣室で水着に着替え始める。夏休みという事もあって周りは中高生らしき姿が多い。
「……皆んな身長が高くてマジで羨ましいな」
周りにいた人達が皆んな俺よりも高かったため思わずそうつぶやいてしまった。俺は百七十二センチあるため日本人男性としては平均的な高さであり別にチビというわけでは無かったが、それでも羨ましいものは羨ましい。
「子供の身長って親からの遺伝が結構大きいって聞くけど多分本当の事だろうな」
実際に百八十二センチある航輝は両親ともかなり背が高かったはずだ。それに対してうちの両親は二人とも日本人の平均くらいの高さしかないため、俺が今の身長になっている事は遺伝的に見て妥当なのだろう。
「子供の背を高くしたかったら俺も身長が高い女の子と結婚して子供を作るしかないか」
知り合いで身長高い女子なんて居たっけと思う俺だったが、よくよく考えたらめちゃくちゃ身近に一人いた。
「……そう言えば真里奈は百六十五センチあるんだっけ」
日本人とドイツ人のクォーターである真里奈はヨーロッパ系の遺伝子が入っているため平均よりもかなり高い。でも真里奈とは所詮偽装カップルの関係でしかないしな。
それに昔からずっと好きな人がいると以前言っていたため俺と真里奈が結ばれる可能性はゼロだ。そこまで考えた瞬間、胸にチクリとした痛みが走った気がした。
少しして水着に着替え終わった俺はシャワーを浴びて待ち合わせ場所であるプールの入り口に向かう。
「まだ真里奈は来てないっぽいな」
まあ、女性の方がその辺は時間がかかりそうだから当然か。そう思っていると床で四つん這いになってオロオロしている女性の姿が目に入ってくる。
どうやら何か困り事があるようだ。だが周りは女性に哀れみの視線こそ向けてはいるものの誰も助けようとしていない。このまま見過ごす事が出来ないと思った俺はすぐさま声をかける。
「あの、大丈夫ですか?」
「実は右目のコンタクトレンズを床に落としちゃって……」
「それなら俺も探すの手伝いますよ。二人で探した方が絶対効率も良いですし」
「本当ですか、ありがとうございます」
女性は嬉しそうな顔で微笑んだ。それから俺は女性と一緒にコンタクトレンズを探し始める。シャワーを浴び終わって目を擦った瞬間外れたとの事だったので多分この辺りに落ちているはずだ。
「……あっ、これじゃないですか?」
「これです、助けて頂いて本当にありがとうございました」
「どういたしまして、良かったですね」
これがアニメや漫画ならここでフラグが成立して恋が始まりそうなシチュエーションだが当然そんな事は無く、女性は普通に歩き去って行った。
まあ、そもそもそんな展開は期待していなかったからどうでもいい事だが。そんな事を考えていると背後に気配を感じる。
「さっきの行動には流石に私も感心させられたわ」
「……何だ見てたのか」
聞き覚えのある声を聞いて後ろを振り返るとそこには真里奈がいた。
「ええ、と言ってもお礼を言われてるところくらいしか見てなかったから具体的に何をしてたのかは知らないけどね。でも才人が人助けをしたって事だけは分かったから」
「困ってる人がいたら普通は助けるもんだろ」
「世の中にはその普通すら出来ない人達が大勢いるって事よ……だから私も才人の事が好きになったんだし」
後半はよく聞こえなかったが褒められて悪い気はしない。
「もしかしたらナンパ目的で助けたんじゃないかとも思ったけど特にそんな事もなくて安心したわ」
「別に何か見返りが欲しくて助けたわけじゃないしな。てか、そもそもナンパなんて俺のキャラじゃないし」
「でしょうね。まあ、私の前でもし白昼堂々とナンパなんてしてたら思いっきり引っ叩いて止めてたけど」
「おいおい、引っ叩く気だったのかよ」
「この私って彼女がいるのにナンパなんて許すわけないじゃない」
「それもそうか」
まあ偽装カップルとは言え表面上は真里奈と付き合っている事になっているのだから万が一俺に彼女なんか出来たらまずいに違いない。
「じゃあそろそろプールに行きましょう」
「ああ、いっぱい遊ぼうぜ」
俺と真里奈はプールサイドへと向かい、準備体操をしてからゆっくりと水の中に入る。ちなみに東京サマーヒルズのプールは屋内と屋外に分かれており、夏季期間の現在は屋外も開放されているためかなり広い。
「今気付いたけどここってウォータースライダーが二種類あるのか」
「ええ、大きいスライダーと小さいスライダーがあるみたいね」
「せっかくだから両方とも滑りたいよな」
「そうね、とりあえずウォータースライダーはプールでしばらく遊んでから行きましょう」
俺と真里奈は泳いだり浮かんだり流されたりしながらしばらくプールを楽しんだ。
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