ツンデレ幼馴染から偽装彼氏になれと命令されたので仕方なく彼氏のふりをしていたが、実は全部策略で気付いたら完全に逃げ道が無くなっていた話
第45話 もしかして才人は私からの愛を受け取らないつもりかしら?
第45話 もしかして才人は私からの愛を受け取らないつもりかしら?
家に戻ってきた俺達は買ってきた食材をキッチンカウンターの上に並べ、元々あった食材を冷蔵庫の中から取り出す。
「早速作り始めるわね」
「全部任せるのも悪いし俺も手伝うぞ。何をすれば良い?」
「それなら卵を割って塩こしょうと一緒に混ぜてくれるかしら」
「分かった」
俺は棚からボウルを取り出しその中に割った卵と塩こしょうを入れて混ぜ始める。
「やっぱり手慣れてるわね」
「まあな、一応料理は一通り出来るし。そういう真里奈も結構様になってるぞ」
真里奈がみじん切りにしたピーマンと玉ねぎを鶏肉と一緒に手際良くフライパンで炒めている様子を見て俺はそう口にした。
「前も言ったと思うけど料理が苦手なのはとっくの昔に克服済みだから」
「小学生の時の調理実習は色々ヤバかったもんな」
「もうあの頃の私とは違うのよ、自分でお弁当を作れるようになった事は才人だって既に知ってるでしょ」
「それはそうだけど真里奈が実際に料理してるところを見るまではまだ信じきれない気持ちもあったからさ」
真里奈の料理下手はそれだけ酷かったのだ。調味料を入れ間違えたり野菜の切り方がめちゃくちゃだったりするのはまだ序の口で、フライパンから火柱が上がるようなとんでもないミスをやらかした事もあった。
それを考えたら真里奈は本当に凄まじい進歩をしたと言えるだろう。多分真里奈のお母さんが相当頑張って教えたに違いない。
実は今回俺が料理を手伝った理由は真里奈がミスをしそうになった際に手助けするためだったわけだが、多分この感じならその心配はなさそうだ。
「鶏肉にも十分火が通ったわね、ごはんの準備を頼んでもいいかしら?」
「オッケー」
俺は炊飯器の中にあるごはんをしゃもじでよそう。二人分のオムライスを作るためよそうごはんの量は割と多めだ。
そして俺は真里奈がケチャップをフライパンに加えて軽く炒め終わったタイミングを見計らってごはんを投入する。こうしてチキンライスが完成した。
「後は卵の部分だな」
「綺麗に作るのが地味に難しいのよね」
「確かにそうだよな、俺も作るたびに割と苦戦するし」
「とりあえず作ってみるわ」
真里奈は俺が先程作った卵液の入ったボウルを手に取るとフライパンに半分ほど入れて半熟状になるまで加熱する。
そして皿の上に準備してあったチキンライスの上にフライパンから滑らせるようにしてのせ、スタンバイしていた俺がケチャップをかければ完成だ。
「見なさい、これが私の実力よ」
「確かにめちゃくちゃ上手い感じに出来てるな」
「でしょ、もっと褒めても良いわ」
真里奈は満面の笑みを浮かべている。その後残っていた卵液をフライパンで加熱してチキンライスの上にのせたわけだが、こちらも先程と同じようにかなり綺麗に作る事が出来た。
「せっかくオムライスを作ったんだからケチャップで何か書きたいわね」
「ハートでも描くつもりか?」
「私がそんなありきたりなものを描くわけないでしょ、まあ見てなさいって」
真里奈はケチャップを手に取ると器用に何か文字を書き始める。
「……なあ、真里奈。これってどういう意味だ?」
「何だと思う?」
Liebeと書かれているが見た事ない単語だった。Lieには英語で嘘という意味があるためもしかしたらそれに近いような意味なのかもしれない。
「あっ、言っておくけど英語じゃないわよ」
「ひょっとしてドイツ語?」
「ご名答、ちなみにリーベって読むわ」
「読み方が分かっても意味が全く想像できないんだよな……」
何年間も習ってきた英語ですら知らない単語が圧倒的に多いというのにドイツ語なんてなおさら分かるはずが無かった。
「英語で言うならLOVEよ」
「なるほど愛って意味か」
「あら、流石にLOVEの意味くらいは知ってるのね」
「いやいや、高校二年生にもなって知らないわけないだろ」
真里奈より成績が悪いとは言え英語は割と得意な方だ。いくら何でも俺の事を馬鹿にしすぎではないだろうか。
「じゃあそろそろ食べましょうか」
「そうだな、もうお腹ぺこぺこだ」
「才人には特別に文字を書いた方を食べさせてあげる」
「いや、俺はこっちで大丈夫」
そう言って文字が書かれていない方のオムライスを取ろうしたところ、真里奈は強引に文字が書かれている方の皿を俺に押し付けてくる。
「わざわざ才人のために一生懸命書いてあげたんだからそんなの駄目に決まってるじゃない。もしかして才人は私からの愛を受け取らないつもりかしら?」
「そんな事はないけど」
「なら大人しくこっちを食べなさい」
「分かったよ」
本音を言えば最初に自分でケチャップを俺好みにたっぷりとかけた方を食べたかったが、そこまで言われてしまっては彼氏として食べないわけにはいかない。
それからダイニングテーブルに着いた俺達はオムライスを食べ始める。
「うん、美味しい」
「私が愛情を込めて作ったんだから美味しいのは当然でしょ」
「確かに大好きな彼女の愛情がふんだんに入ったオムライスなんだから美味しくないわけがないよな」
得意げな表情を浮かべていた真里奈に対して俺はそんな事を言ってみた。すると真里奈は顔を真っ赤に染める。多分俺の反応は予想外だったに違いない。
「だから不意打ちしてくるのは辞めなさい」
「ごめんごめん、つい口が滑った」
「今日の才人は一体どうしたのよ?」
「たまたまそう言う気分だったんだよ」
言った後で急に恥ずかしくなってしまった俺は平静を装いながらそう口にした。
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