第23話 今すぐ全世界のリア充が一斉に爆発しねぇかな

「へー、まだまだ改善の余地はあると思うけど才人にしては頑張ったじゃない」


「だろ、今回の期末テストは過去最高の順位だったからな」


「頑張って教えた甲斐があったわね」


 先程松島先生から返却された期末テストの成績表を真里奈に見せたわけだが珍しく褒められた。めちゃくちゃスパルタだったとは言えあれだけ熱心に勉強を教えて貰ったのだ。成績が良くならないはずが無かった。


「全部真里奈のおかげだよ、ありがとう」


「どういたしまして」


 俺が素直に感謝の言葉を伝えると真里奈は少し顔を赤らめつつも嬉しそうに微笑んだ。真里奈はツンツンしていて攻撃的なところはあるが何だかんだで優しい。

 まあ、もうちょっとだけ俺に対する優しさの割合を増やしてほしいとは思うが。そんな事を思っていると航輝が話しかけてくる。


「おーい、才人と八雲さん」


「どうしたんだ?」


「この後近くのファミレスで風花と期末テストの打ち上げをしようと思ってるんだけど二人も来ないか?」


「良いわね、私と才人も行くわ」


「よっしゃ、そう来なくっちゃ」


 その後赤城さんと合流して俺達はファミレスへと向かい始める。


「真里奈ちゃんは今回のテスト結果はどうだったの?」


「順位が一桁だったから良かった方ね」


「えっ、凄いじゃん。私は二十位くらいだから負けちゃったな」


「二十位でも十分凄いわよ」


 女性陣は成績優秀らしく本当に羨ましい限りだ。


「航輝は期末テストどうだったんだよ?」


「風花のおかげで今回は赤点ギリギリの教科が一つも無かったぞ」


「良かったじゃん、じゃあ今回は親から怒られる心配は無さそうだな」


「ああ、風花様々だ」


 航輝も成績が改善したようで嬉しそうな表情を浮かべていた。まあ、成績が悪化していたら打ち上げなんてするわけないか。そんな事を思っているうちにファミレスへと到着した。


「皆んなテストお疲れ様」


「才人も相模も成績良くなったって事だし、良かったわね」


「八雲さん、ありがとう」


「真里奈も順位一桁おめでとう」


 俺達はドリンクバーのジュースで乾杯し、メニューを見始める。そしてテーブルに運ばれてきた料理を雑談しながら食べ始めるわけだが、何かに気付いたらしい真里奈は嫌そうな顔で口を開く。


「げっ、このグラタンきのこ入ってるじゃない……」


「そう言えば真里奈って昔からきのこが大嫌いだったっけ」


「メニューの写真には写ってなかったから正直油断したわ」


 真里奈には嫌いな食べ物が多くあり、きのこはその中の一つだ。真里奈は何かを懇願するような視線を俺に向けてきている。


「……しょうがないな、きのこは全部俺が食べてやるよ」


「ありがとう、助かるわ」


 俺はグラタンの皿からきのこだけを取り除く。するとそんな様子を見ていた赤城さんと航輝がニコニコした表情で話しかけてくる。


「やっぱり真里奈ちゃんと霧島君は仲が良いね」


「だな、ちょっと前まで二人が疎遠だったとはとても思えないよ」


「ちょっとそこ、うるさいわよ」


 恥ずかしくなったらしい真里奈は二人に対してそう声をあげた。そんな事をしばらく話しているうちに話題は夏休みへとシフトする。


「もうすぐ夏休みだけど才人達はどう過ごすんだ?」


「来年は大学受験で忙しくなるだろうから今年のうちに遊んでおかないととは思ってるんだけど、まだ具体的な事は何も考えてないのよね」


「そうなんだ、私と航輝君はしばらく部活だけどお盆くらいから休みになるし旅行に行こうと思ってるんだよね」


「旅行か、楽しそうだな。どこ行くとかってのはもう決まってるのか?」


「ああ、一泊二日で大阪のユニバースランドに行く予定なんだよ」


「えっ、泊まり!?」


 泊まりと聞いた瞬間俺は思わずそう声をあげてしまった。


「おいおい、何そんなに驚いてるんだ?」


「いや、よく親が許してくれたなって」


 高校生の男女が泊まりで旅行なんて反対されそうな予感しかしないのだが。


「そこは大丈夫、私も航輝君も同性の友達と行くって親には伝えてるから」


「果たしてそれは大丈夫と言えるのかしら」


 そんな話題で盛り上がっているうちに結構長い時間が経ったため俺達は解散した。


「……あの二人もしかしたら夏休みの旅行中に大人の階段を登るかもしれないわね」


「確か付き合って一年近いし、そろそろって考えててもおかしくは無いか」


 二人が本当に行為に及ぶのかは分からないが、二人で旅行に行くくらいなのだから可能性としては十分にあり得る。


「全く幸せそうで羨ましいな。今すぐ全世界のリア充が一斉に爆発しねぇかな」


「何言ってるの、才人も周りから見れば立派なリア充でしょう」


「あくまで俺達は偽装カップルなんだから違うだろ」


 実際はリア充では無いのにリア充として見られるって一番損してる気がする。


「ねえ、才人は本物の彼女が欲しいとは思わないの?」


「欲しいかって聞かれたら欲しいけど俺の彼女になってくれる女の子がいるとは思えないしな」


「……ここに居るわよ、馬鹿」


「今何か言ったか?」


「何でも無いわ、それより才人は私のなんだからちゃんと今日も家まで送って行きなさいよね」


「分かってるよ、偽装が付くとは言え一応彼氏だからな」


 それから俺はいつものように真里奈を家まで送り届けるのだった。


———————————————————


これにて第1部は終了となります、ここまでお読みいただきありがとうございました!


第2部で二人の関係が一気に進展するのでお楽しみに!!


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