第30話 美少女である私の残り湯に興奮して変な気を起こさない事ね

「……着いたわね」


「……ああ」


 俺と真里奈は京都駅近くのラブホテル前に来ていた。城のような外観であり明らかにラブホテルと分かる見た目をしていたため流石に入るのを躊躇ってしまう。


「と、とりあえず中に入りましょう」


「そ、そうだな」


 しばらく入り口の前で固まっていた俺達だったが周りからの視線が気になり始めたためひとまず建物の中に入る事にした。


「……それでここからどうすればいいの?」


「えっと、確か光ってるパネルを押してそのまま部屋に行けば良かったはずだ」


「そんな仕組みになってるんだ」


 パネルを押して部屋を選んだ俺達はエレベーターに乗って部屋のある階に登っていく。そしてエレベーターから降りた俺達は選択した部屋へと向かうわけだが途中大学生くらいのカップルとすれ違う。


「今日は楽しかったね」


「だな、まさか三回戦もするとは思わなかったぞ」


「もう一軒ハシゴする?」


「無茶言うなよ、流石にもう無理だから」


 生々しい会話の内容的に二人はきっとさっきまで部屋で性行為をしていたに違いない。恐らく隣を歩いていた真里奈も同じような事を考えたようで顔を真っ赤に染めていた。それから部屋に到着した俺達は素早く中に入る。


「……確かに中は普通のホテルとそんなに変わらないわね」


「……そうみたいだな」


 航輝から聞いていた話を信じていなかったわけではないが、実際に中を見るまでは半信半疑だったためちょっと安心した。

 荷物を床におろした俺は何も考えずにテレビのリモコンを押す。すると次の瞬間、部屋中に大音量で女性の喘ぎ声が流れ始める。


「ち、ちょっと何考えてんのよ!?」


「ご、ごめん」


 俺は慌ててテレビの電源を消す。


「……まさか分かっててやったんじゃないでしょうね?」


「いや、神に誓ってマジのガチで知らなかったから」


「本当かしら?」


「この通りだから信じてくれ」


 アダルトビデオが流れ始める事を初めから知っていれば絶対テレビなんてつけなかった。


「……まあ、いいわ。疲れたからお風呂に入って早く寝ましょう」


「そうしよう、風呂の湯を入れてくる」


 俺は浴室でお湯の蛇口をひねってお湯をため始める。しばらく時間が掛かりそうなため一旦部屋に戻ると真里奈がベッドの前で固まっていた。


「そんなところでボーっとして一体どうしたんだ?」


「き、急に話しかけてこないでよ」


 真里奈は驚いたらしく手に持っていた何かを床に落とす。


「おい、それって!?」


「ま、枕元に何か置いてあると思って手に取っただけだから。変な勘違いしないでよね」


 なんと真里奈が手に持っていた物は大人のおもちゃだったのだ。何で枕元にそんな物があるんだよ。いや、よくよく考えたらここはラブホテルだし当然か。


「……あっ、そうだ。母さん達に帰れなくなった事を連絡しとかないと」


「そうね、私もママに電話するわ」


 俺達はそれぞれスマホで連絡し始める。いちいち電話するのが面倒だった俺は母さんと歩美にLIMEでメッセージを送った。

 すると二人からすぐに返信が返ってくる。母さんはからは普通の返信だったが歩美が中々ぶっ飛んでいた。


「……真里奈さんとベッドで熱い夜を過ごしてねって、あいつは一体何を考えてるんだよ」


 歩美はまだ中学三年生のはずなのにちょっとませ過ぎているのではないだろうか。そんな事を思っていると若干興奮気味な真里奈の声が聞こえてくる。


「才人とそんな事するわけないでしょ、とにかく今日は帰れないって事は確かに伝えたから」


 そう言って真里奈は一方的に電話を切った。


「そんなに大声を出してどうしたんだ?」


「どうもこうもないわ、ママが初めては痛いから頑張って耐えてねとか言ってくるから怒っただけよ」


 どうやら真里奈もとんでもない事を言われたらしい。歩美も真里奈のお母さんもどうしてすぐにそういう方向に話を持っていこうとするのだろうか。

 それからしばらくして風呂の湯がたまったため真里奈から先に入った。待ってる間俺はテレビでニュースを見ている。チャンネルを操作すればアダルトビデオ以外も普通に見れる事が分かった。


「お待たせ、お風呂どうぞ」


「ありがとう」


「美少女である私の残り湯に興奮して変な気を起こさない事ね」


「そんな気は絶対起こさないから安心しろ」


「それはそれでなんかムカつくわね」


「いやいや、俺はどう答えるのが正解だったんだ?」


 風呂に入って少し元気を取り戻したらしい真里奈とそんな馬鹿なやり取りをした後俺は浴室に入る。浴槽がかなり広い以外は普通の浴室だった。

 多分二人で一緒に入る事を想定した作りになっているため浴槽が広いのだろう。


「……まさか高校二年生でラブホデビューするとは思ってなかったな」


 下手すれば一生入る事がなかった可能性もあったためとにかく変な気分だ。もし今朝の俺に今夜真里奈と一緒にラブホテルに泊まる事になったと言っても絶対信じないに違いない。


「万が一クラスメイト達に真里奈とラブホに泊まった事がバレたら大変な事になりそうだよな……」


 航輝曰く校内には真里奈のガチ恋勢もいるようなので滅多刺しにされる未来が容易に想像できる。流石に十七歳で死にたくはないので今回の件は絶対に隠し通さなければならない。

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