【第十二】※筆者註

※関心のない方は読み飛ばして【第十三】へ——


●「手を叩いた時、鳴っているのは左手か右手か?」

 山岡荘八の小説『伊達政宗』に出てくる禅問答らしい。筆者がなにでこの問答を知ったかは憶えていない。だいぶ以前のことだったように思う。似たものに江戸中期の禅僧・白隠の「隻手音声せきしゅおんじょう」と云う公案がある。「両手を叩くと音がするが、片手で叩くと?」と云うような禅問答。

 かりに『伊達政宗』の禅問答が史実からのものとしたら白隠のほうが時代は下ることになるが、じっさいは山岡荘八が白隠の公案を手掛かりにしたか? いずれにせよ、禅問答には答えがない、と云うのだから、問題のほうもいくらだって自由に作ってよいはず。

 ここでソモサン! 門田とブーマーがハイタッチした時、音が鳴ったのはブーマーの掌か門田の肩か?


●「抱卵から育雛まで妻に任せきり…」

 ウグイスの習性。オスのウグイスは繁殖のあいだ、抱卵も育雛いくすうもせずに毎日啼きつづけ、そのあいだメスは抱卵から育雛までをワンオペで行う。

 ついでに云えば、ウグイスが梅の木に巣を架けることはまずない。たいていは藪など見つかりにくい場所に球状の巣を架ける。なので鴬宿梅と云っても、そこに巣があったわけではない。それでも本作ではその習性を曲げて、梅原好声を梅木に住まわせることとした。


●明治『アーモンドチョコレート』

 ウグイスの卵に似ている。これがグリコの『アーモンドチョコレート』だと卵には見えない。ホトトギスの卵もただの『チョコボール』だとすこし小さい。だから「大玉」にしたが、それでも『ラムネ』では卵に見えない。

 ところで、卵がじぶんの産んだものでないと気づいたウグイスは、巣を丸ごと放棄してしまう。だからウグイスの卵に似るようホトトギスは卵を進化させてきた。や、ウグイスの卵に似ていない卵が淘汰されてきた、と云うのが正しい。ムシクイ類はじぶんの卵の色をあまり気にしないらしく、彼女たちの巣に托卵するツツドリの卵は、ムシクイ類のそれにあまり似ていないと云う。



◆参考文献

 叶内拓哉・安部直哉・上田秀雄『山渓ハンディ図鑑7 新版 日本の野鳥』山と渓谷社 2016年

 樋口広芳『鳥ってすごい!』ヤマケイ新書 2016年

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