【第七】※筆者註
※「マルキ・ド・サド」に関心のない方は読み飛ばして【第八】へ——
●『西日倭紀外文書』
作中に登場する『西日倭紀外文書』は、『偽書「東日流外三郡誌」事件』(斉藤光政 著、新人物文庫)を参考に、まるっと筆者が創作した。
元ネタの『偽書「東日流外三郡誌」事件』は、戦後最大の偽書事件と云われる「東日流外三郡誌」事件をスクープした新聞記者自身によるルポルタージュ。事件の詳細に関心のある方は、是非この文庫本を購読されることをおすすめする。ちなみにこの偽書は、青森県の農家の天井板が抜け落ちて発見された…と云うことになっている。
●西日倭大衆国/田藻盈国
『西日倭紀外文書』が筆者の創作なら、当然それに付随する「西日倭大衆国」「田藻盈国」などもすべて筆者の創作である。ただ、そこにも元ネタがある。
「西日倭大衆国」の国家体制、そのルーツとなる「田藻盈国」は、サド侯爵の『食人国旅行記』に登場する理想郷「タモエ」の丸パクリである。この本、タイトルは物騒ながら、もとは『アリーヌとヴァルクールあるいは哲学小説』という全四巻からなる長編小説の、第二巻に書かれたエピソードに当たり、そこにはアフリカにあるとする架空の食人国と、南太平洋に浮かぶ架空の理想郷での滞在記であり、本段で参考にしたのはその後者である。
マルキ・ド・サドはその人生の大半を監獄と精神病院で過ごしたフランスの貴族作家だが、世間的には「サディズム」の語源となった人物としての悪名のほうが幅を利かせている。じっさい、当時禁忌であった同性愛や女性に対する強姦、今日でいうSMプレイの強制等、放蕩の限りを尽くしたことは事実であり、彼はそのために収監された。その嗜好は『ソドムの百二十日』や『ジュスチーヌ』『悪徳の栄え』などの作品にも反映されている。
一方で、サドの描く理想郷は、「私有財産の否定」「死刑制度の廃止」「犯罪者の更生教育」を謳っており、そこからは彼の進歩主義的な側面を垣間見ることができる。驚くべきことにこの小説は、フランス革命の一年前に書かれ、サドが死んだのはカール・マルクス誕生の四年前のことである。
●瑪良親王大陵墓
むろん筆者の創作。大仙陵古墳が世界最大級であることは揺るがないので、関係者は御安心を。しかし、「直径1㎞の真円を描く超巨大円墳」が「現在の横浜南西部、おそらくJR戸塚駅と等緯度、境川と柏尾川に挟まれた地域にあった」と推定させたのには筆者なりの意図がある。
◆参考文献
斉藤光政『偽書「
マルキ・ド・サド 著、澁澤龍彦 訳『食人国旅行記』河出文庫 1987年
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