【第四】※筆者註

※関心のない方は読み飛ばして【第五】へ——


●マダムヤン/パトラッしゅ

 筆者が悪ノリして勝手につけた「楊貴妃」と「クレオパトラ」の異称。ハウス食品のインスタントラーメン『楊夫人マダムヤン』やアニメ『フランダースの犬』に出てくる主人公の飼い犬とは無関係。

 ちなみに楊貴妃は、はじめ唐の皇子の妃だったが、皇子の父の玄宗皇帝が強引にじぶんの妃にして寵愛する。その後、楊一族の者を取り立てるなどしたことで国が乱れ、「安史の乱」で殺される。一説には玄宗に命じられて縊死したとも… ライチが好物で陰毛が長かったという。

 クレオパトラは、云わずと知れた古代エジプトの女王だが、古代ローマのカエサルやアントニウスを誘惑することでエジプトを守ろうとしたとされる。最期は「アクティウムの海戦」に敗れたのち、自殺したアントニウスの後を追ってみずからも命を絶つ。好きな食べ物はモロヘイヤ、陰毛が長かったかは不明——


肥後守ひごのかみ/讃岐守さぬきのかみ/六歌仙の遍照へんじょう

 三人とも、勅撰集入選歌で小野小町が恋に関した歌で名を上げた男性たち。

 「肥後守」とは小野おのの貞樹さだき従五位上じゅごいじょう肥後守となった人物。「讃岐守」は安倍あべの清行きよゆき。讃岐守従四位上じゅよんいじょう。「小町に懸想けそう(※求愛)の歌を贈り、即座に冷やかに断られた…」(『校註 小野小町集』)。「六歌仙の遍照」は俗名・良岑宗貞よしみねのむねさだ蔵人頭くろうどのとうだったが、仁明天皇崩御に際し、帝の恩に報じようと出家し「遍照」となる。

 小町が名を上げているのは、ほかに在原業平と本段で名が上がる文屋康秀もんやのやすひでのふたりである。生涯、官職には恵まれず、老いてから三河の国庁のじょうとなった人物。康秀が小町を誘い「わびぬれば…」の歌を詠んだのは、三河に赴任する際のエピソードである。そしてこの歌が小町に関して知り得る最後のことだという。あとの物語は後世の人びとの想像に過ぎない。ただ『後撰和歌集』の雑の歌に、「小町の孫」という作者名が見える由——



◆参考文献

 窪田空穂 編著『校註 小野小町集(補訂版)』やまとうたeブックス 2018年

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る