【第十五】※筆者註
※「獣姦」に嫌悪を感じる方は読み飛ばして【第十六】へ——
●キツネと契って子を生した男/
ともに『日本霊異記』にある。前者は「狐を
後者は、「
●イヌ/ヤギ/ウシ/ロバ/海獣/小さめのサメ
「獣姦」をテーマにした書籍『愛しのペット 獣姦の博物誌』(工作舎)にある、ヒトに犯されて来た動物たち。
この本では、ほかにもヒトに犯された動物を多く紹介している。著者のミダス・デッケルスによれば、ヒトが獣姦の対象にするのは「私たちの遠縁ですらない」動物だという。「サルとはそれらしきじゃれ合いはあっても、決してそこから発展することはない」——ただし、ヒトに飼育された類人猿からのアプローチはあるらしい。
イヌやウシ、ロバなどが女性と交接する様子は、日本やインド、ヨーロッパの絵画や版画に多く遺されている。ヤギの場合はサテュロスに姿を変えて描かれる。これらは事実の写実というより男性側の願望だろう。仮に、図版にあるような行為がじっさいにされていたとしても、そこにはたいていオトコの願望が介在する。
ヘロドトスは、エジプトの「マンデス近郊で大観衆の見守るなか、ヤギが人間の女性と交わる」場面を見たという。古代ローマの競技会では「イヌからヒョウ、サルやキリンに至るまでのありとあらゆる動物の雄が女性と交接するよう仕込まれていた」というし、パリはかつてそういったショーのメッカだった由——
イヌについては主にペッティングの相手として、女性が能動的に選ぶこともあるようだが、ウシやロバなどの有蹄類を対象とするのは主に男性だろう。なかでもヤギについては、現在でも毎週木曜日ごとに東京の半蔵門界隈で話題にされている。サド侯爵がおすすめするのもヤギである。それもオスの肛門が良いという。
また、本段の「海獣」とはジュゴンを想定している。じっさいにそんな報告がされているらしい。海中でしたのか、陸上でしたのか、詳細は不明。
「小さめのサメ」とはサカタザメ。これはフリードリヒ・クラウスが20世紀初頭に発表した論文『日本人の性生活』で紹介されている。習慣にしていたのは「日本海沿岸の漁師たち」で、「捕りたてを殺したものでなければならない」という。要は天然のオナホールである。ただし、この論文は『古事記』などの古い文献にあたってまとめられたもので、論文発表当時の日本の性習慣を紹介したものではない。
●「禽鳥を犯す…」
ニンゲン(男性)に犯される主な「禽鳥」は、ニワトリだそうだ。利用されるのはその総排出腔で、これもまた天然のオナホールである。
ニワトリを使用するニンゲンは、その射精の直前に、犯しているニワトリの頸をザンコクにも切り落とすという。これは、「(総排出腔の)括約筋のけいれんを増倍させ」みずからの快感を高めるためである。
『愛しのペット』によれば、「極東では日常茶飯事にカモやガン」が同じ理由で犠牲にされているという。「極東」が具体的にどの国のどのあたりの地域か、詳細は記述されていない。また、サド侯爵によると、パリの売春宿ではシチメンチョウが使用されるそうだ。
●エミール・クストリッツァの愉快な映画
2007年のセルビア映画『ウェディングベルを鳴らせ!』のこと。エミール・クストリッツァは2度のパルムドールを含め、世界三大映画祭すべてで受賞歴を持つセルビアの映画監督。
●チムーやモチカの人びとの遺した土器
「大半が千年を越す」という古い土器。様ざまな性描写が施され、『愛しのペット』によれば、その内訳は「ペニス24%、陰門4%、正常位の性交11%、男性のマスターベーション5%、男女間のアナル・セックス31%、同性間のアナル・セックス3%、レズビアンの性交1%、クンニリングス14%、獣姦6%」だという。「獣姦では、男女問わずすべての動物が対象となっていた」由——
これらの土器の絵は、「禁止事項を示す訓戒の道具として」使われたという説があるらしい。しかし「ペニス」や「陰門」といった部位が「禁止事項」というのは、すこし意味がわからない。それなら、部位を描くこと自体が憚られるはず。ちなみにこれらの絵は、著者によれば、「大方の性交を異常とは考えずに半ば楽しんでいるふう」だという。
◆参考文献
中田祝夫『日本霊異記(上)全訳注』講談社学術文庫 1978年
中田祝夫『日本霊異記(中)全訳注』講談社学術文庫 1979年
ミダス・デッケルス『愛しのペット 獣姦の博物誌』(伴田良輔 監修、堀千恵子 訳)工作舎 2000年
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