【第二十二】※筆者註

●【第二十二】について——

 本段は、底本『鳥歌合』本編の前の序段にあたる文章を私訳し、分解、筆者の創作した翁とウグイスの交流の物語に合わせて再構成した。もちろん実在する人物・団体などとは一切関係しない。

 底本では、難波津に住む翁が都から訪ねてきた知人に、難波津での季節の移ろいや暮らしについて語るのみで、物語らしきものはない。ウグイスは回想のなかで突如現れ、カエルへの対抗心を語ったうえで、庵の庭先にある梅木で歌合をすることを約して去る。そののち、翁と知人が梅の枝先にエサを刺して待っているところへ、「二十三十」の羽音が聞こえてきて本編の歌合へと導入される。旅の僧は登場しない。

 筆者は当然ながら、底本作者・木下勝俊が生きた頃の難波津を知らない。このことから難波津の風景描写については、ほぼ底本に準じた。もし貧しく感じる表現があれば、それは筆者の拙訳に原因があるか、例外的に筆者が書いたニセモノの情景であろう。ただ、春の梅木が青枝を天空に向けて伸ばすさまを、謡曲『蝉丸』に登場する狂女・逆髪の「いのぼる」緑の髪に喩えたのは、筆者が生家の庭に見た梅木への実感である。


●都の湿地の宅地造成

 かつて淀川沿いの山崎や淀は、淀川水運の港湾都市として栄えた。原動機のない時代のことだから、淀川を遡上する際は船に綱を掛けて、岸から人に曳かせる。『今昔物語集』にはその船を利用し、京都に上る人びとを酒食で誘い、難波の葦を載せた船を曳かせ、その葦で宅地を造成して財を成した男の話が書かれているという。その土地が源さだむの邸宅になったとか——



◆参考文献

 脇田修、脇田晴子『物語 京都の歴史 花の都の二千年』中公新書 2008年

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黒白戦記(『鴉鷺物語』より) 否きよし @okamoon

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