【第一】※筆者註

※関心のない方は読み飛ばして【第二】へ——


●登場禽物(人物)について

 本作中の登場禽物きんぶつの名称は原則として底本(【前口上】※筆者註、参照)による。ただし、底本に登場しながら名のない者などは筆者の命名による。本段では「雪透姫」がそれに当たる。底本では「正素の息女」「かの姫」としか記されていない。また、生田の森のカラスは底本では「森烏右衛門」とあるが、林真玄の義父とするなど、新たに設定を付加したことなどもあり、改めて「摂津守八尺只墨」と名づけ直した。むろん名の由来は八咫やたがらすの末裔とするところから、「八咫」を解字して墨をつけた。

 また、一部の登場禽物は完全に筆者の創作である。本段で紹介した主要禽物のなかでは「冬若丸」がそれに当たる。名づけは雪透姫との相性も良いかと、くろを色に持つ「冬」を「牛若丸」の頭とげ替えた。

 登場禽物の設定もおなじく底本によるが、そもそもそれらはトリを擬人化したキャラクターなので本来の生態とはそぐわない箇所が多々ある。剣や弓矢をあやつる、馬に乗ると云ったことはもちろんだが、シラサギの息子たちの年齢が19歳や18歳(※数え年であろう)とされているのも、寿命20歳前後とされるサギ本来の生態からは外れている。ただ、これらについては設定を糺さぬほうが物語として自然なため、そのままとすることとした。

 また、本作での年齢は読者がイメージしやすいよう満年齢とする。


●再々従妹/大々叔父

 もちろん、いずれもおふざけ造語である。じっさいこんなコトバがあるか、筆者は知らない。また、系譜上、互いがどのような位置関係にあるかは考えていない。付け加えると、「大々叔父」の読みは「おおおおおじ」とするのが正しいが、本文では「おおおおおおじ」と「お」をひとつ多くルビを振った。気づいたあなたには、細かなところまで読み込んでいただいたことに感謝乾杯!


●中鴨の森

 底本の註釈には、「上賀茂と下鴨の中間の地。流木の森(半木神社)があった。」とある。この地には現在、京都府立植物園があり、「半木なからぎの森」と呼ばれ、「半木神社」も現存している。「半木」は「流木(ながれぎ)」の転訛だとされているが、上賀茂と下鴨の中間と云う位置を考えれば、「半木」の地名が先にあり、それが「流木」の伝承を生み、ふたたび「半木」の地名に糺されたのだと筆者は推測する。

 ただし、底本と出版元がおなじ広辞苑の「鴉鷺合戦物語」の項には、カラスと対立するサギについて、「ただすの森のさぎ」とある。これは、広辞苑が資料とした版が底本とは異なる版で、そこに「糺の森の鷺」とあった可能性が考えられる。しかし、底本では鷺軍布陣の描写に「信濃守が陳、(原文ママ)たゞすもり。」とあり、助勢に来たアオサギが陣を張る地として名が挙がっている。これから考えるに、広辞苑の記述はどうも怪しい。むろん本作は底本の設定を取る。


●ウィリアム・テル/ウィリアム・バロウズ

 ウィリアム・テルはスイス建国にまつわる伝説的英雄。実在したかは不明。弓の名手(正確にはクロスボウ)で、悪代官に命じられ、吾が子の頭に乗せられたリンゴを射落とした逸話で知られる。

 ウィリアム・バロウズは『裸のランチ』や『ジャンキー』で知られるアメリカの作家。夫婦で酔っ払い、ピストルで「ウィリアム・テルごっこ」をしてメキシコに逃亡するハメになった。南無——


●大鳥/新白象/ホワイトファルコン

 「大鳥」「新白象」は、底本に「朝家の宝物」として紹介されている琵琶の名器。「ホワイト・ファルコン」はアメリカGrestch社製のフルアコ・タイプのエレキギターで、「世界で最も美しいギター」と称されている。

 ちなみに、Gretschを弾かせたら日本一のギタリストは、ヒートウェイヴのギター・ボーカル山口洋だと、ザ・グルーヴァーズの藤井一彦がTVで話していた。

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