【第二】※筆者註

※関心のない方は読み飛ばして【第三】へ——


●「隠士長流」

 江戸前期の古典学者・下河辺長流しもこうべちょうりゅうのこと。「水戸黄門」こと徳川光圀から召し抱えの申し出を受けるが断り、代わりに依頼された万葉集の註釈の仕事も「おこたりがち」「病がち」で進まず、63歳で没した。偶然だが、かれの歌道の師は、本作「巻二」の主題となる『鳥歌合』作者・木下勝俊(木下長嘯子)である。

 ちなみに本文中の「隠禽知時」の元ネタとなる『近世畸人伝』の文章は、学者・契沖や歌人・橘曙覧、鴨長明や西行法師など世を遁れて生きた人びとを追った、富岡多恵子の評伝『隠者はめぐる』からの孫引き。


●漏刻博士関知時/兼門勘太郎

 底本にあるニワトリの名は、「鶏漏刻博士朝臣知時」で、宮仕えであるところから姓は「宮」となっている。本作では隠居して逢坂関付近に暮らす設定としたことから「関」の姓に改めた。

 また、底本に登場するミヤマガラスの名は「山烏太郎」である。父親の「山烏のなにがし」が「精進魚類の合戦」で討死したり、都住まいなどの設定は本作でも踏襲したが、その父の名を童歌「烏かねもん勘三郎」から取ったことから、「勘三郎」の息子なら「勘太郎」か「勘九郎」だろうと云うことで、もとの「山烏太郎」の名も尊重して「兼門勘太郎」とした。カラスなら「勘九郎Crow」の方が相応しいかも知れないが——

 ちなみに勘太郎の父が「朧昆布敦盛」に討たれ、鍋の具となったと云う最期は底本にはない。



◆参考文献

 富岡多恵子『隠者はめぐる』岩波書店 2009年

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