第3話

次の日登校すると様子がおかしい。

クラスの皆がこちらを見てヒソヒソ話をしている。

さげすんだ様な目で見ている者、困惑顔の者、ニヤニヤと面白がって見ている者、色々だ。

直感的に『あ~あいつら何か仕掛けて来たな』と思ったがお守りもあるし様子見をすることとした。

神に祈っておいたが異世界の神だけにご利益は無かった模様。




自分の席に座って時間潰しにスマホを操作してゲームの日課消化していると、紗姫と仲の良いクラスメイトの女子が俺の方に近づいて来た。

彼女の名前思い出せない、流石に20年の異世界大冒険で半分以上のクラスメイトの顔と名前が一致しない。

顔を見ると怒りの形相ぎょうそう、『あ~波乱の予感だ』と直感が働いたが、召喚前よりこの空気が読める感のある感覚は多分勇者10%の付与のお陰だろう。


「え~と・・・田中さん?」

町田まちだだよ!!ふざけてるの?」

「あ~ハイハイ町田まちださんね。次からは間違えないと思うよ」

「まぁいいわ・・・それより、忠野君、浮気したらしいね(# ゚Д゚)

「はぁ~?俺がか?」

「他に誰が居るの?」

「身に覚えが無いんだが」

「裕斜君が見たって言ってるし、紗姫泣いてるし!!」

「見たって証拠になるのか?それに紗姫が泣いてるからって俺が悪いのか?」

「状況からどう考えてもあんたが悪いでしょ(# ゚Д゚)

「OK、OK、分った、分った。で、何時それを見たって?」

「昨日の夜らしいよ・・・」

「そうか、じゃあ問題は無いはずだ。」

「紗姫と付き合ってて浮気したんだから問題無い訳ないじゃない!!」

「紗姫とは昨日の放課後直ぐに別れた。それに、俺は浮気の前に誰ともやましいことはしていない。」

「昨日別れた?嘘・・・でも別れて直ぐに別の誰かと何て最低!!」

「はぁ~?だから、やましいこと、あ~誰かと新しく付き合ったとか無いぞ。そもそも関係ない者が真実も知らないで色々言う方が最低ではないのか?」

「モブの癖に生意気!!」



捨て台詞を吐き紗姫の友人の女生徒町田さんは立ち去った。

ティロリロリーン 女生徒A町田さんを倒した。

報酬は特になかったがプライスレスです。



紗姫の方を見ると確かに泣いているが何も言っていない様だが、裕斜の方を見るとこっちをにらんでいる。

もう俺には関係ないと目線を切りゲームの続きを開始した。


★~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~★

茂武と別れた後、裕斜君へメッセージを送ると直ぐに電話がコールされた。

裕斜君からだった。


「紗姫ちゃん今話せるか?」

「大丈夫・・・」

「とうとうバレちゃったか~」

「多分・・・」

「それでどうする?」

「どうするって?」

「このまだと俺たちが悪者にならない?」

「え?如何いうこと?」

「紗姫ちゃんは恋人の親友に・・・、俺は親友茂武の幼馴染の恋人を・・・、モブ茂武は幼馴染の恋人をNTRれた。ね?悪い誰?」


考えるまでもなく私たちが悪い。

裕斜君との関係は茂武と付き合い始めて直ぐ位から始まった。

最初は茂武への誕生日プレゼント選びを手伝ってもらったことだった。

サプライズで渡したので茂武はとても喜んでくれたのを覚えている。

それを切欠にちょくちょく裕斜君とお出掛けしたりするようになり、肉体的な関係となった。

うまく隠せていて茂武に中々気が付かれないので行動がエスカレートしていって少し前からお互いの家で事に及ぶようになっていた。

油断していたのか緩んでいたのか・・・そういう事が当たり前となっていた。



「大丈夫、俺に任せといてよ!!」



彼はそう言ったが・・・

別れたくないし、謝ってもう一度・・・でも今の状況からそれは難しいのかもしれない。

私は泣くことしかできない。

★~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~★

時は茂武が神と話ているところまで遡る。


私が登校している途中の出来事である、校舎の屋上に人影がある。

一人は男子生徒のようだがもう一人はよく確認できないが遠くからだと光って見える。

光って見えたから気が付いたが、人間って光るものじゃないよね?

眺めていると男子生徒が忽然こつぜんと消えた。

え?何あれ幽霊?宇宙人に攫われた?訳が分からないが急ぎ校舎へと向かい屋上へと行くと、スーツを着た男性、それも凄く美形の男性がそこにいた。

男性は私に声を掛けてきた。


「おはようございます」

「あ・・・おはようございます」

「いい天気ですね」

「そうですね・・・」

「時に異世界とかご興味ありますか?」

「はい、ラノベとか読みますし、異世界転生モノとか召喚モノは大好きですよ」

「ホウホウ、なるほど、なるほど」

「それよりもここで生徒が消えたように見えたのですが・・・」

「あ~五分ほど前に彼は異世界へと旅立ちました」

「はぁ~?」

「あ!申し訳ありません、うっかりしていました。私はこういう者です」


彼は丁寧に両手を添え1枚の名刺を私に差し出してきた。

そこには



【神】かみ



名刺の真ん中には大きく神の文字、その文字の上に小さく英語で「GOD」かみと記載があり、他に幾つか文字みたいなものが書いてあるが全く読めない。



「え~と・・・宗教はお断りしています」

「入信とか進めませんから。あんなものは信じる者が勝手に入ればいいのですよ。信じる者は救われるかもしれません。特に約束もしていないので救う義務もありませんがね(ニコッ)」

「はぁ・・・」

「話がそれてしまいましたね。異世界で勇者茂武と共に魔王を倒してみませんか?成功特典報酬もありますよ(ニコッ)」

「分りました、行きます。特典内容とか色々教えてください。」

「残念ながら時間がありませんので記憶に刷り込みます(ニコニコッ)」


彼が私の額に手を当てると条件等の必要情報が何故か理解できた。

それに、少し前に召喚された勇者の情報と召喚は勇者が召喚された10年後と言う情報も頭にインプットされている。

正直言って少し怖いが彼が本当の神であると理解するには十分な出来事だった。


「では、勇者にも伝えましたので向こうで合流してくださいね。良い旅路と魔王の討伐成功を待ってますね(ニコッ)」


そして私は異世界へと旅立った。

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